変態に恋された 相手:涅マユリ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
5.大人しいとなんだか寂しいです(……気のせいでした!)
私が涅隊長と付き合っている。
その話は1日で瀞霊廷内に広まった。
正確には友達以上恋人未満だったんだけど…やちるちゃんのせいで皆の中では恋人同士ということになってしまった。
ある人には驚かれ、ある人には憐れまれ、ある人には何故かプレゼントを貰った。
中身は…わぁお、大人なものですな。
差出人はイニシャルでK.Uって…待て、瀞霊廷どころか現世にまで話が広まってやがる!
このプレゼントを見るたびに、扇子をぱたぱたさせた下駄帽子な人が笑っているのを思い出しそうで嫌だったのでタンスの奥にしまう事がその場で決定した。
さて、あれから数日経ったんだけど…。
「おかしいな…」
「どうしたの?レイちゃん」
相も変わらず可愛らしいやちるちゃんは、これまた相も変わらず執務室で悩む私のテーブルの向こうから顔を出してそう聞いてきた。
「いえね、あれから会ってないんですよ、涅隊長と」
そう、例の話が瀞霊廷に広まってからというもの、私は涅隊長と会ってないのだ。
いつもなら嫌と言うほど会っていた、と言うか後をつけられていたのに。
不思議だ…何かあったんじゃないか、と悩んでいると、やちるちゃんはきょとんとした顔で、それこそ不思議そうに
「それならレイちゃんから会いに行けばいいんじゃないの?」
と聞いてきた。
今まで何で思いつかなかったんだろうか。
「それも…そうですね!うん、隊長!すみません、急ですが午後休もらいます!じゃ!」
思い立ったが吉日。
「は?」と呆れた声をかろうじて出していた更木隊長を尻目に、私はすぐに十一番隊隊舎を後にした。
なんか後ろから色々叫ばれてたけど、耳を塞いで聞こえないフリをして技局へ向かった。
よく考えたら、自分から涅隊長に会いに行くなんて仕事以外では初めてかもしれない。
会ったら一体何から話せばいいのか。
お久しぶりです?お元気にしてましたか?最近会わないので来ちゃいました?
そんなことを考えていると、道すがらネムちゃんを見つけた。
どうやら彼女も技局に行くようだったので、ナイスタイミングと思って声を掛けた。
そして一緒に歩いている途中、ふと涅隊長のことが気になり、それとなく様子を聞いてみた。
「あーネムちゃんや、そう言えば涅隊長は元気?」
「はい、マユリ様でしたら新しい研究を始められ、ここ数日は研究室に籠られております」
なるほど…そのせいで会いに来なかったのか?
あんだけ涅隊長らしからぬ告白して来たって言うのに、その好きな人を告白の翌日から放置プレイと…。
なんかしっくり来ないながらも、一応理由はあったのかと無理やり自分に納得させた。
技局に着くと、すぐにネムちゃんが涅隊長のいる研究室に案内してくれた。
途中局員の人達に「あれが噂の…」ってヒソヒソされたけど、もう慣れたわ(嘲笑)
「それでは私はこれで失礼します」
「え、あ、うん」
研究室前に着くと、ネムちゃんはそれだけ言い残し廊下の奥へと消えて行った。
置いてきぼりをくらった私は、流されるかのように返事を返してしまったが…。
え、私1人で行くのか?
一瞬ネムちゃんの去った方向を2度見してしまったが、とりあえず部屋に涅隊長がいることは確かだろうからノックをして確かめる。
「涅隊長いらっしゃいますか。十一番隊のレイです」
…返事はない。
それなら勝手に入ったって仕方ないよね、と自己解決をして私は部屋の扉を開けた。
文句言われたら返事がないからって言い返してやる、って位の意気込みで入ると、中は薄暗くてよく分からない機材とかが色々置いてあった。
涅隊長は私が入ってきたのをチラッとだけ確認すると、すぐに目を逸らしてカチャカチャと何か研究の続きをした。
「…何をしに来たのかネ」
「別に…何をというわけじゃないです。最近会っていないので…少し心配になって?」
貴方が好きだと言った相手が来たのに、何ですかその態度!
やっぱり私にはこの人がよくわからないな…。
少しムッとしながらも私が言葉を返すと、涅隊長はまたチラッとこちらを見た。
「嫌なのでは…なかったのかネ?」
「へ?」
嫌って何が?
研究室に来る事?
涅隊長に会いに来る事?
言ってる意味が上手く飲み込めずぽかんとして黙っていると、涅隊長は眉間に皺を寄せていた。
「先日、話していたではないカ。十番隊の連中と…」
十番隊の連中、先日、話、嫌…。
それで「もしや…」と考えを巡らせた。
「もしかして…乱菊さんと話してたアプローチがどうとか食べられるのがどうとか…っていう話ですか?」
あの日の会話を思い出すと、「嫌」で連想されたのはそこしかない。
すると涅隊長は小さく「その通りだヨ」と肯定してきた。
ああ、分かった。
この人もしかしてだけど、自分たちの話をされたのに私が嫌って言ってたのが心に残って、否定されたと思ってショック受けてたんだ。
ただふてくされて、会いに来なかっただけなんだ。
まるで大きな子どもじゃないか…。
私はため息を1つ吐くと、ツカツカと涅隊長の元へと歩み寄った。
それに気づいてこちらを向いた涅隊長は少し驚いていたが、私は悪びれもせずに隊長の死覇装の袖を掴んで逃げないようにした。
「あのですね涅隊長、嫌だったら会いに来ません。嫌だったら告白された日に友達からでとかオッケーしません。嫌だったら心配なんてしませんから」
この意味、わかります?といつかの仕返しのように意味を問いただした。
涅隊長はと言えば、すぐに意味が分かったようで私を軽く自身の元へ抱き寄せて「あァ」と返事をしてきた。
「涅隊長が大人しいと…なんか寂しいんですよ」
そう小さく呟くと、涅隊長は今度は少し嬉しそうに返事をしてきた。
なんだかんだ、私は自分が思っている以上に涅隊長の事が好きなのかもしれない。
そう自覚して少し照れていると、涅隊長が「フム」と何かを考えていた。
どうしたのかと思って、抱き着く形となったまま涅隊長の顔を見ると彼は身を屈めて私の唇にキスをしてきた。
「!?」
いきなりの事で困惑していると、涅隊長は少しニヤリと笑って「そういう事ならば、やはり今夜にでもワタシの部屋へ招待しようではないカ。ン?」と私の腰へ手を回してきた。
急激に顔が熱くなるのを感じて、すぐに私は涅隊長から離れて部屋の扉へ向かった。
「変態!キス魔!心配して損した!バーカ!!/////」
廊下に出た私は、おそらく技局内に響いたのではないか、と言う位の声量で隊長相手に罵声を発していた。
恥ずかしさと照れくささと、もうなんか色々分からない感情のせいで顔だけでなく身体が熱かった。
立ち去る前に部屋の中で見えた涅隊長は、新しいオモチャでも見つけた子ども見たいに嬉しそうにニヤニヤとして笑っていた。
ここ最近は大人しいし、今日もそうかと思ったけど、そんなことなかった!
気のせいだった!
それでも、少し嬉しくなったなんて、ぜーったい言ってやるもんか!
_____
あとがき
初めから変態なマユリと、実はちょっと鈍感で強気なヒロイン。
次話は『恋人がドS』よりもちょっと後の話になります。
それでもよろしければ、最後までお付き合いくださると嬉しいです。