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十二番隊隊長兼技術開発局局長涅マユリ
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【誕生日】
マユリ様・・・・・・
間に合いそうにありません。本っ当に申し訳ありません。
誕生日にお祝いができないなんて今までそんなことは一度も無かった。
名無しは全力の瞬歩で流魂街から技術開発局へ向かっている途中である。
名無しは、午後休みを取り、涅の好物であるサンマ料理のフルコースを作って自宅でゆっくりお祝いする予定だった。
しかし、この有様だ。全く間に合わない。現在時刻20時。名無しが夕飯時にいなければ、マユリは夕食を適当に済ませてしまうはずだ。彼が食事を食べるのか注入するのか浴びるのかは誰にも分からないことではあるが。
名無しは勝手に滲む涙を腕で払い、ひたすら走る。
ぐっと涙を堪えようとすると、彼女の喉の奥はつんと痛んだ。
技術開発局
「フム・・・・・・これではまだ時間がかかるだろうネ。」
モニターを見ながらマユリがつぶやいた。
流魂街に虚が出現。討伐任務に就いた七番隊が少々苦戦を強いられている。
最前線で戦うわけではないが名無しは虚の調査班として任務に就いていた。彼女のことが心配でたまらないため、マユリはこうして適宜(ずっと)モニター確認をしているのだ。
誕生日であろうと日々の監視業務が無くなるわけではない。
マユリは七番隊が苦戦する様子を思い浮かべ、フン、と鼻で笑った。
今日の朝、やけに早く出て行った名無しの背中に、マユリは自分がなんと言って送り出したか思い出せずにいた。想定より討伐任務が長引くと、些細なことが変に気になってしまうようだ。
「・・・・・・やっと終わったようだネ。さっさとデータを送って寄越せば良いものを・・・・・・ウスノロどもめ。」
「局長ー。データ来ましたー。」
阿近が椅子に座ったままのけぞってマユリを呼んだ。
「解析を終わらせ給え。」
マユリの誕生日ではあるが、技術開発局はもちろんいつもの調子だ。阿近には、技局の皆の様子を見たマユリが少し正気を取り戻したように見えた。
「あ、局長、今日早く帰らなくていいんですか?」
「なぜその必要があるのだネ。」
「名無し、午後休み取るって言ってたので・・・・・・てっきり局長と用事があるのかと。・・・・・・あー、このレベルの虚だと途中で帰れなかったんすね。」
送られてきたデータを見ながら阿近が言った。今日は隊長の誕生日だと言ってサンマサプライズの相談をされていた阿近が名無しを思い哀れんだ。
「・・・・・・?・・・・・・名無しは今、瞬歩でこちらへ向かっているネ。」
名無しが今日早く上がることなど、本人から一言も聞いていなかったマユリは、阿近の発言に疑問符を浮かべる。相変わらずモニターでは名無しの霊圧を示す点が等速でこちらへ向かっている。
「そうですね。もう来ますね。」
阿近はサプライズの詳細について本人に漏らすわけにはいかないため、モニターをよく見るふりをし素知らぬ顔で返事をした。
バン!!!
技術開発局研究室の扉が開かれ、同時に名無しがマユリに飛びついた。
あまりの衝撃に、隊長格であるマユリも体が傾く。
技局の面々は真っ青である。
静かすぎて、耳がキインという音を拾った気がした。
その不気味な静寂を小さな声が破った。
「マユリ様・・・・・・」
すりすりとマユリの首に抱きついていた名無しが
「誕生日、おめでとうございます。」
と言った。それを聞いた周りの局員が小声で口々に
「お・・・・・・おめでとうございます!局長!」
と怖々つぶやき、拍手が起こる。
「・・・・・・名無し、」
「わたし、隊長に謝らなければならないことがあります。」
「ホウ、それは聞くのが楽しみだネ。」
「・・・・・・誕生日プレゼント、間に合いませんでした・・・・・・」
ぐすんと鼻声になりながら名無しが続ける。
「申し訳ありません・・・・・・」
「・・・・・・」
マユリは辺りをじろりと見回し、
「見世物じゃない。さっさと散り給え。」
と、小さくもよく抜ける声で言った。
この二人が恋愛関係にあるのは皆が既に知っていることだ。しかし、このように仲睦まじい様子を同僚が直接的に見せつけられることは今までなかったため、彼らは鳩に豆鉄砲状態である。
マユリの霊圧の上昇を肌でピリピリと感じた阿近は、足早にその場を立ち去り、それを見た周りの局員もはじかれたように動き出した。
「・・・・・・名無し」
「・・・・・・」
顔を上げられない名無しに、ため息をついたマユリは、彼女の身体をふわりと抱き上げ、技局内の私室へ向かった。マユリの華奢な腕からは想像がつかないほど余裕のある動きだった。
「・・・・・・マユリ様、本当はお家で誕生日スペシャル晩ご飯を作って待っているはずだったんです。」
「・・・・・・ホウ」
名無しはマユリにぎゅっと抱きついた。
マユリは突拍子のない名無しの発言をかみ砕こうとしたが、堪え切れないようだ。彼に対し、ご飯を作ることがプレゼントになると考えついた者は未だかつていない。
「ク・・・・・・ククッ・・・・・・」
笑った。
マユリが。
この場に技局の者がいたら確実に命乞いをしているだろう。
「名無し、アァ、君は本当に面白いネ。」
「・・・・・・すみません。」
「ククッ・・・・・・顔を上げ給え。」
名無しの頬を、少し温かくなったマユリの手が撫でる。
「私の誕生日なのだから、笑い給え。ホラ。」
言いながら、マユリは名無しの両頬を引っ張った。
「・・・・・・いはいえふ・・・・・・」
「名無し、君がモニターに映り続けていることが最高の祝儀だヨ。」
分からない、といった風の名無しは首をかしげ、マユリを涙目で見つめた。
マユリは名無しをじっと見下ろし、彼女をそっと抱き寄せた。
Fin.
Happy birthday,Mayuri!