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十二番隊隊長兼技術開発局局長涅マユリ
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【朝】
ひんやりする布団が心地よい。
定時より少し早く目が覚めたマユリは、隣で眠る名無しの安らかな寝顔を眺め、彼女の髪の毛を白い指で撫でる。
「名無し……」
マユリはそっと彼女の額に口付けた。ちゅっと少し濡れた音が小さく響く。
習慣とは恐ろしいものだ。
隣に女が寝ていて温もりを感じることなど、眠ることさえ必ずしも必要ではないマユリのかつての生活ではありえないことだった。
硬質で冷えた数多の研究道具。大袈裟なモニター。まるで生きているようだが空っぽの義骸。彼女だけがそれらとは相反したもので、マユリの日常の中で異質で、あまりに平々凡々たる存在。それが隣に平然と眠っているのだ。
そして、その隣に体を横たえ自らも共に休む、この異常が日常になってしまった。マユリは胸の内で小さく笑った。
「君は…平和すぎなんだヨ……」
あまりに凡庸。あたたかく、やわらかい。
人工的で無い自然な曲線を描く名無しの頬を、マユリは人差し指の爪で撫であげた。
かすかに、頬に何かが触れた気配を感じた名無しは徐々に覚醒していく。
しかし朝の重たい目蓋は、起きなければという脳からの指令とは反してなかなか離れようとはしてくれないようだ。
「ん……」
名無しは朝方の少し冷たい空気と障子を通る朝の白い光を感じ、温もりを求めて手を伸ばした。そして、手に触れたものに頬をすり寄せる。
あたたかく、気持ちがいい。抱き枕を抱くように、名無しは片方の足を何かの下へ滑り込ませ、もう片方はその上方へ乗せた。
「な……ッ」
隣で眠るマユリの声が聞こえたような気がしたがまだ起きる時間では無いだろうともう一度名無しは眠りについた。
5分ほど時間が経っただろうか。
マユリは、自身の足の間へするりと差し込まれた滑らかなふくらはぎの輪郭を感じながら、胸の中で眠る名無しの頭に向かって声をかける。
「……名無し、起き給え。これでは起き上がれないヨ。」
すぅすぅと規則正しい寝息が寝室に心地良く響く。
マユリが名無しの身体を押し除け、起き上がることは容易いはずだった。
加えて、二度寝など怠惰極まりない、実に時間の無駄だ、そう胸の内で思いながらも、マユリはなぜだか動くことができないでいた。
朝の貴重な5分間に、じっと名無しを見つめていたのである。
「…………!」
マユリは意思と反して動こうとしない己自身に、異様なほどに整った歯をぎりりと鳴らした。
やっとのことでマユリは声を出し、名無しを起こそうと声をかける。
「名無し、おい、聞こえているかネ?」
もぞもぞと胸の中で名無しが動き出し、
寝起きで半開きの瞳がマユリを捉えた。
「ん、マユリさん…お早うございます。……ん。」
「んっ!」
「ふふ」
「な、お前、私がどんな思いで…!」
「ん?」
「〜〜〜ッ!!」
名無しが力の入らない指をマユリの首の後ろへ滑り込ませ、彼の渇いた唇に自らの唇を合わせた。未だしっかりと開かれない瞳のまま、ふにゃりと気の抜けた笑みを浮かべる名無しは、先ほどまでひとり葛藤していたマユリをも脱力させてしまったようだ。
「朝ごはん、何がよろしいですか?」
すりすりとマユリの胸へ顔を埋めながら、本日の朝食について伺う名無しを、マユリはぎゅっと抱きしめた。
ひとつ、熱い息を漏らしながら。
Fin.
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