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十二番隊隊長兼技術開発局局長涅マユリ
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【泉質調査】
本日は3月29日、温かく良い天気。
涅と名無しは温泉宿へとやって来た。
宿の庭では黄色の福寿草や白や赤の梅の花が咲き、ふわりと芳しい香りを漂わせている。背の高い木の上では、姿こそ見せないが鶯が鳴き春の訪れを告げていた。
技術開発局で研究ばかりしていると季節を感じることがないままいつの間にやら春を迎え、気付かぬうちに夏になっていることがある。涅は多くは語らないものの静かにひとつ
「ホウ……」
と感嘆のため息をついた。
名無しは涅の柔らかな表情に思わず笑みを浮かべた。
「ご予約の涅様ですね。お待ちしておりました。長旅お疲れ様でした。」
感じの良い宿の主人が2人を出迎え、館内を案内した。
「右が男性、左が女性用の浴室となっております。
…………こちらが本日のお部屋でございます。部屋の外にも浴槽がございますので、よろしければお入りください。」
2人が宿泊する部屋には小さな露天風呂がついており、湯が木枠から湯船へ滔々と流れ落ちていた。
「ありがとうございます。わ、すごい、隊長!源泉掛け流しですよ。」
「……それでは涅様、ごゆっくりおくつろぎくださいませ。失礼いたします。」
スッと和室の戸が閉められ、部屋には涅と名無しだけが残された。いつも2人で過ごしているが、場所が変わるとこうも新鮮な気持ちになるのか、名無しは気恥ずかしさを感じ涅の横顔を見つめた。
「……いつまでそこに立っているんだネ。私は先ず大浴場に行き成分を調べてくるヨ。」
部屋に着くや否やどこからともなく水質検査キットを取り出し大浴場へ行こうとする涅を名無しははっとして全力で止めた。
「ちょ、隊長!それはやめて下さい!他のお客さんに変な目で見られますから
!」
「ん、問題ないヨ。」
「いや問題ありますから!お願いです、やめて下さい!」
「……」
名無しがあまりにも必死なため、涅はしぶしぶ検査キットを諦め、純粋に温泉を堪能しに大浴場へと向かった。名無しは部屋から出ていく涅の後ろ姿に向かって
「部屋の鍵を閉めてわたしも追いかけますので、お風呂から上がったら待っていて下さいね!」
と言った。
「…分かったヨ。」
涅が返事をしたのを聞き、名無しは笑みを堪えきれないと言った様子で風呂上がりの浴衣を用意しながら幸せを噛み締めていた。
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「あれ……貸し切り?」
女性用の大浴場ではチェックイン早々で時間帯も早かったためか名無しのほかに客はいなかった。
名無しは浴槽の淵に軽く膝をつき、足から順に掛け湯をした。少し赤みのあるとろりとした湯が名無しの肌を滑り落ち、パシャンと音を立てる。
爪先をそっと浴槽へ入れると、熱すぎずちょうど良い温かさだった。
「……〜〜っはあ……きもちいい……」
浴槽の中に座り肩まで湯に浸かると、ふっと緊張が解けていくのが分かるほど心地の良い湯だ。名無しは手で湯をすくい何度も肩へ滑らせた。
「……ふぅっ……たいちょ…温泉喜んでくれるといいんだけど…」
「……」
そのころ涅は男湯でじっと霊圧を潜めていた。こちらも今のことろ貸し切りだ。男湯と女湯は衝立を隔てて隣同士になっており、涅は油断しきっている名無しの霊圧を感じ呆れかえっていた。
(……少々気が抜けすぎだネ……)
名無しが肩に湯をかけているであろうチャプチャプという水音が壁越しに男湯まで響いている。その後次第にその音が聞こえる頻度が少なくなった。
10分経ち、20分経てども上がる気配のない名無しがのぼせているのではないかと心配になった涅は
「名無し!そろそろ上がるヨ!」
と突然隣の女湯に向かって声をかけた。名無しはびくりと飛び上がり、湯に大きな波を立てた。
「隊長?隣にいらしたんですか!」
「先に行くヨ。」
「えっ待ってください!」
バシャリと涅が湯から上がる音がし、慌てて名無しも湯から出て脱衣場へ向かった。
宿屋が用意した浴衣へ袖を通し、涅と名無しはほぼ同時に脱衣所の暖簾をくぐって顔を見合わせた。
名無しは涅の姿を見て息を飲んだ。
「っ……」
「……なんだネ。言いたいことがあるなら言い給え。」
「……その、お似合いです……」
涅が下瞼に力を入れじとっとした目で名無しを見下ろした。
宿屋の浴衣は男性、女性用共に違いはなく白地に紺色で吉原つなぎの模様に染め上げられているものだった。
「死覇装とさほど変わらないと思うがネ。」
涅はゆるりと浴衣を着付けていた。湯上りの汗が涅の首元を伝い、白く美しい胸へと滴る。
名無しは涅を凝視している自分に気がつき、はっとして下を向いた。
「…っ失礼しました……」
「……夕食まで時間がある。とりあえず部屋に戻って湯の成分を調べようじゃアないか。」
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2人は部屋へ戻り、しばし寛ぐことにした。夕食までは時間がたっぷりある。
涅は部屋の外へ備えつけられている露天風呂の成分を存分に調べている。
「ン〜〜……中々良いネ。」
弱アルカリ性、phは8.0……
なにやらぶつぶつ言っているが、楽しそうな様子に名無しは微笑む。
泉質調査をしていた涅が突如くるりと名無しいる部屋の方を向き、彼女を呼んだ。
「名無し!此方へ来給え!」
「はい。どうなさいましたか?」
「これを見給え!成分が肌に良いのは言うまでもないが、内臓にも効くヨ!」
「もうお調べになったのですね。」
名無しがにこにこと微笑みながら涅の話に耳を傾けた。涅の胸はドキリと高鳴る。
「…っなんだ、笑うんじゃないヨ。」
「ふふっすみません。」
名無しから思わず目を逸らし、涅は採取した少量の湯が入った試験管を揺らした。
試験管の中で湯が揺らめき、同時に名無しの瞳も揺れた。しばらく涅を見遣り、彼の隣まで寄ると
「涅隊長、それ、」
ちょっとお貸しください
と言いながら、白く骨張った手から試験管をそっと取り、試験管立てへ戻し、流れるように口付けた。
「……お湯のことばかりで。」
「……っ名無し、お前っ……ん」
突然のことに涅の手がぴくりと動く。名無しは涅の手を握りながら襟元を掴み、ぴたりと吸い付くような口付けをした。
温泉のおかげか涅の唇はあたたかく、しっとりとしており、名無しはその質感に夢中になっていた。
「……っふ、…ちゅっ………!?あ、」
「…ん、この……!名無し、大概に、ん」
突然涅は名無しの肩を掴み、強引に身体と唇を引き剥がした。その後下を向いたまま黙ってしまった。
「あ、あの、隊長……?」
やりすぎて怒らせてしまっただろうかと焦りを感じ始めた名無しが声をかけるが、返事がない。
肩を掴む白く骨張った手に触れ、涅へもう一度声をかけようとすると、
「名無し……君が仕向けたことだ、どうなっても知らんヨ。」
黄金色の瞳をギラつかせた涅が名無しを見つめた。
「……っ……」
その瞬間血液が沸騰したかのような熱さが名無しの身体を巡った。肩を掴んでいた涅の手が名無しのまだ少し湿り気を帯びた髪の毛から頬を伝う。涅は白い指先を少し、名無しの柔らかな頬へ食い込ませ親指で唇をなぞった。熱っぽい涅の声が名無しの鼓膜を少しずつ刺激する。
「ン?……少し、震えているネ。怖いかネ?先ほどの積極性は何処へ行ったのやら…」
名無しは内心焦り始めていた。ちょっとばかりからかってみたかっただけなのだ。この後夕食のため、宿屋の主人が2人のいる部屋へ声をかけにやってくるはずだ。
しかし、目の前の涅は熱を含んだ瞳を名無しへと向けている。名無しは流されぬまいと心を奮い立たせ、やっとの思いで言葉を発した。
「あの、隊長、申し訳ございません、その……これから夕餉が」
「アァ、そのようだネ。……しかしだヨ、君がこうも私に熱く口付けてくれたというのに、それを無碍にすることが私にできると思うのかネ?」
言いながら涅は名無しの髪の毛や頬、耳、耳の後ろ、首へと指を滑らせている。
「……湯の効能を褒めたことに嫉妬してしまうとは、名無し、アァ、実に可愛らしいことだヨ。君のことを私は褒めたことがなかっただろうか?」
「……????ん?いえ、その、わたしは湯の成分を褒めていらしたことへ嫉妬したのでは無く、隊長が温泉ばかりに目を向けていらっしゃって……」
「……ホウ!では私の行為そのものに嫉妬をしたということだネ!やはり無碍にはできないヨ!」
突然涅が名無しの身体を担ぎ、部屋の中へと戻って行き、座椅子へそっと下ろした。
「あの、隊長!ですから、これから夕餉が……っん!」
「名無し、湯の次は君の事を存分に調べようじゃアないか。湯ばかり弄っていたことで嫉妬するとは、実に可愛らしいことだヨ。しかし、そんなに嫉妬深くてはこれから先が思いやられるネェ…。」
涅は口付けながら浴衣の合わせ目から胸の真ん中をなぞった。唇は頬を伝い、首筋を噛み、鎖骨を舐める。無機質な涅の肌が触れた部分が熱を持った。
「お待ちくださいっ……」
まるでパブロフの犬のように、涅の手の動きを見るだけで名無しは息が荒くなり、瞳は濡れ、官能へ引きずり込まれそうになる。名無しは己を再び律し、
「お宿のご主人がいらっしゃいます……涅隊長以外に身体を見せたくはないのです……っ」
と言った。
はた、と口付けを止め、じっと名無しの瞳を見てから涅は
「フム……一理あるネ……」
と言いぱちりと瞬きをした。
「私にもそのような趣味はない。」
「では……!」
行為をやめてくれるだろうと名無しは思った。
しかし、一向に離れない涅を見て、名無しの身体からはだらだらと冷や汗が噴き出てくる。
案の定再び涅が名無しへ口付けを始めた。
「……ン〜…っちゅっ……名無し、可愛らしいネ……。」
ちゅっちゅと音を立てながら涅は名無しへ口付けを繰り返す。頬に口付けたあと、耳朶へたどり着いた涅の唇から温かい息が漏れ、それが名無しの脳をドロドロに溶かしていった。
「名無し、このまま続けるヨ。何、心配はいらないヨ。見えなければいいのだヨ。」
「んっあ……なにを…んっ…!」
何をお考えですか、と聞きたかったのだが、全て涅の唇に吸い取られてしまった。
「……この状態の君を放置することなどできはしないヨ。このように濡れた瞳では、身体はとうに情欲へ飲み込まれているだろう?我慢するのは辛い事だヨ。君は欲に耐えるのが好みなのかネ?そのような趣味があるのなら話は別だが。」
「っ!…んっぅ……ぁっ」
「……もう抗えないはずだヨ。」
涅は浴衣の襟元を掴む名無しの手からだんだんと力が抜けていくのを見て、ひとまわり小さい手を自らの指で絡めとった。名無しの指はぴくりと震え、力が入らないまま涅の指をゆるりと握り返した。
「……君はこのように指に触れると、」
涅はしっとりとあたたかい名無しの手の甲の骨格上を白い指でなぞり
「連動するように背中が震え……」
反対の手でびくりと跳ねた名無しの腰を浴衣の上からいやらしくさすり
「此方は……おや、此れは予想外だネ。愛撫だけでこのようになってしまうとは……」
「ぁっん……ぅ……あっ!」
絡めていた手を離し、名無しの手を自らの首の後ろへと誘導すると、彼女の唇を自らのそれで塞いだ。そしていつの間にやら骨張った指を名無しの乱れてしまった浴衣から侵入させ、太腿の間へ滑らせた。既にとろりと濡れてしまった下着の上で白い指を上下に動かしゆるく刺激を与える。
「あっあっん……んっ」
「名無し……っこのまま抱いてしまいたいヨ……」
その時、
コンコンコン!と部屋をノックする音が聞こえ、そのあとすぐに宿屋の主人の
「涅様、お夕食の準備ができましたので、弥生の間までお越しくださいませ。」
という声が響いた。戸は幸い閉めたままだった。
かたかたと震える名無しの頬をなでながら、涅は
「……アァ、弥生の間、だネ?承知したヨ。」
と部屋の入り口に向かって返事をした。
足音が去っていくのを聞きながら
「……名無し、全く君の言う通り、やはり来たネ。続きはまた後だヨ。心置きなく溶かしてあげようじゃアないか。」
と言い、名無しの目蓋にひとつ口付けを落とした。
涅は放心状態の名無しをふわりと抱きしめ、片方の手で後頭部を撫でながら頭に唇を寄せる。名無しは目元を少し濡らしていた。
「……」
この時点で宵の口にも入っていない。
Fin.