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十二番隊隊長兼技術開発局局長涅マユリ
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【共同作業】
先の大戦が終わって比較的平和な頃。
精霊廷十二番隊敷地内の騒がしい技術開発局にて、マッドサイエンティスト涅マユリの実験助手をしているのは名無しだ。
眠八號はというと、成長途中である。
ネムの大脳から造られたまだ幼い眠八號は、大きな試験管の中は卒業しマユリの後を追いかけるようになったものの、助手として働くには相当の時間がかかる様子。
名無しは眠八號プロジェクト発足時にマユリの助手に任命された。人造死神とはいえ、赤子の眠八號は人の手を借りなければ育つことはできない。名無しは精霊廷の復旧復興で忙しいマユリに代わり、眠八號を育てていた。
人1人を育てるのだから、もちろん手がかかる。いくら実験の産物とはいえ、子どもを育てるのであるから業務時間はもちろん昼夜も関係がない。
眠八號の身体は、マユリの遺伝子情報が元に造られているため、父はマユリということに変わりはないようだ。名無しは、始めは技術開発局に泊まり込んで世話をしようとした。しかし、朝早く、夜中まで一日中休みなく続く子育てを、何年も泊まり込みで行うというわけにも行かない。一度、自分の部屋へと眠八號を連れて行こうとしたのだが、人造死神とはいえ幼い子が父親と離れ離れになるのを名無しは不憫に思った。
名無しはマユリのプライベート実験室兼住居の一角を借りられないか希望を出した。すると、二つ返事で快諾された。
ある日の昼食時、名無しは眠八號の食事を用意したが拒否されてしまった。子育ては初めてのため、食事量や機嫌の波の上がり下がりなど、ちょっとしたことが不安になってしまう。技局内で子育ての経験のある者も、眠八號のこととなると責任が取れないためそう簡単に助言ができない。万が一何かあれば自らが恐ろしい実験の餌食に。
故に名無しが頼れるのは、眠八號計画の長であり父親であるマユリしかいなかった。
「涅局長、今お時間よろしいですか。」
「ああ」
「眠八號ですが、あまり食が進まないようでして……」
「あと半日様子を見て、ダメなら栄養剤をのませ給え。大方腹が減っていないだけだ」
「はい……。承知いたしました。」
マユリの予想通り、技術開発局が小休止をする15時頃には、局員に混じり栄養満点の補助食を平らげている眠八號がいた。
しかし、問題が起こるのは昼だけに限らない。
夜間泣き出した幼子は抱き上げていくら揺すっても泣き続け寝付くことができないでいた。いくら涅廷の一角に間借りしている身とはいえ、局長の私室へ足を踏み入れるのには抵抗があった名無しは、どうか泣き止んでほしい、と半ば神に願いを乞うように子守唄を歌いながらひたすら腕に抱いた眠八號をあやしていた。
マユリはというとすでに湯を浴び、日課のモニターチェックを行なっていた。
異常がないことを確認し寝ようとしたが、同じ屋敷内にいる眠八號と名無しの霊圧のわずかな揺らぎを感じとる。
「まったく」
手のかかることだ。
心の中でひとこと呟き、自室を後にした。
「名無し入るヨ」
マユリはそう言って名無しに貸している部屋の中へ入ると、幼い眠八號を抱いてあやしている名無しと目があった。
「あ、局長、申し訳ございませ……っあっ」
名無しが謝る時間も無いほどの速さでマユリはすっと眠八號を抱き、何やら額に軟膏のようなものを塗った。すると、眠八號は魔法にかけられたように眠りについた。
ほっと安堵のため息をついた名無しであるが、すぐに上司の手を煩わせてしまったことと長時間眠八號を泣かせてしまったことへの不甲斐なさで表情が曇る。
「あの、涅局長、夜分に申し訳ありませんでした。おやすみの頃ではなかったですか……?」
「いや、いいんだ。同じ大脳を持ち成長しているとはいえ、眠八號は七號とは違う。手のかかるやつだヨ。」
そう言いながら眠八號を小さな布団へ寝かす。その眼差しは、父親の眼差しそのものであった。就寝前で化粧をしていないこともあり、マユリの表情は普段とはまったく違っていた。眠八號への眼差しは穏やかで柔らかい。
「私は今寝ようとしていたところだったが、名無し、もし私が気がつかなかったら夜通し子守をするつもりだったのかネ」
振り返ってマユリは立ったままの名無しを金色の瞳で見つめる。
「名無し、眠八號計画は1人では為し得ないものだヨ。加えてそれは私がつくったもの。私に指示を仰ぐのが先決ではないかネ」
「申し訳ありません…」
局長の手を余計に煩わせてしまったことに名無しは項垂れた。
「まあ、君が眠八號のために尽くすという私の予想は大筋は外れてはいなかったが、まさかこのようになるまで身を粉にして世話を焼くとは……」
マユリはそう言って立ち上がり、名無しの顔をじっと見つめ、名無しの柔らかい頬に手を添え目の下を親指でなぞった。慢性的な睡眠不足により深い隈ができていたからである。
「少し休み給え。君は十分すぎるほどに力を尽くしているヨ。その証拠に、見給え」
マユリが目で促した視線の先では、話し声で目が覚めた眠八號が布団から抜け出し目を擦りながら名無しの方へたどたどしく歩いてくるのが見えた。
「随分懐いているようだ。」
名無しは小さな足で歩いてきた眠八號を抱き上げた。思わず笑みが溢れる。そして
「優しいお父様で幸せだね」
と呟いた。
「局長、わたし、局長が局長で本当に恵まれています。」
突然名無しは目を輝かせ、何か決意を改めた様子だ。
(?なんだネ。急に。)
「わたし、眠八號のママとしてもっと頑張ります!」
「…………
あ、あぁ、何かあったらすぐに呼び給え。それから先程の薬は効きが長いからすぐに寝付くヨ。」
ばっと襖を開け、廊下に出たマユリは先程の「ママ」という部分に引っかかり、何やら考えながら自室へ戻っていった。
(父はわたしなんだがネ……)
微かに胸の高鳴りを感じながら眠りにつくマユリであった。
Fin.