6ペンスの唄(跡部vs.忍足)
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*二十五話:れんあい*
私はぼんやりと、自分の今までの恋愛について考えていた。
小学生の頃、気になる人、はいた。
クラスの中でも明るくてスポーツができる男の子。女の子たちが『××ってカッコいいよね!』と言っていた男の子。
そういう男の子は私も気になっていて、好き、と言えなくもない感情を抱いていた。
席替えで近くになれたら嬉しいとか、話せたら嬉しいとか、ちょっとでも可愛く見られたいとか、そんな感覚だったのを覚えている。
ただ、そういう相手はクラス替えごとに変わった。ミーハー心に近くて、気になる人が数人いたこともあった。
大人になった今なら、あの感情が“恋愛感情”だと言い切れないとわかる。あの気持ちは“憧れ”であり、“幼い恋心”みたいなものだったのではないかと思う。
中学高校時代は女子校育ちで、恋愛に関わることはなかった。部活と勉強に打ち込んでいた。女子校だと友達も恋愛とは疎遠だから、そもそもそういう話題にならない。彼氏がいる子の方が珍しいくらいだった。
大学で共学になって初めて、私は恋愛というものに触れたように思う。周りの友達と恋バナをした。同年代の男の子と会話をした。
何故か私が景吾と付き合っているというデマが流れたりもした。侑士くんと出会って景吾に告白された。
そして今この状況に至るわけだけれど。
「……ねぇ景吾」
私は目の前の景吾を見つめた。
「ん?」
今日も今日とて私の部屋で、何が楽しいのかわからないけれど私を抱きしめている。
そんな景吾は最近様子がおかしい。
「あの、……明日は部活あるの?」
「いや、明日は休みだ」
「生徒会の仕事は?」
「そっちはある。そろそろ引き継ぎやら何やらで、生徒会の方が忙しいな」
こういう日常的な質問には今まで通り答えてくれる。
でも。
「……あの、ね。景ちゃんに聞きたいんだけど……」
「どうした?」
「景吾は、…………本当に私が好きなの……?」
「、――――」
こういった質問をすると、景吾は不思議な顔になる。
「景、」
「――希々」
身体を引き寄せられて、唇を塞がれる。
「……っん……っ」
触れるだけの口づけは、決して深くはならない。それでも絶対に逃がしてくれない。話したい、と身体をよじっても景吾は私の意思を黙殺する。拘束に近い力で抱きすくめられて、重なる唇に言葉を封じられてしまう。
私が会話を諦めるまでその体勢のままだから、呼吸が苦しくて景吾の背を叩く頃には唇の感覚がない。
景吾が私の気持ちを聞いてくれないなんて初めてで、私も強く言えない。
景吾はこの話をしたくないんだと思う。でも話さなければ私たちの関係は先に進まない。
でも、だけど。
「け……ちゃ…………」
「……黙って俺とのキスに集中しろ」
「ふ、…………」
唇があったかい。触れたまま動きを止めるキスだから、痛くはない。
それでも私の中で“何かが違う”という思いが息づきはじめていた。