ロンドン橋落ちた(不二vs.幸村)
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*二話:画策*
僕は弟を大事に思ってる。裕太のいいところなんて手足の指じゃ足りないくらいだって、わかってる。
だけど、好きな子を譲ってあげるほど男を捨てた覚えはない。
中学の頃、希々が珍しく泣きながら僕の所へ来たことがあった。僕のせいで裕太にフラれた、僕のことなんか大嫌いだ、と。
泣いて僕の胸を叩く彼女を見て僕が覚えたのは、――罪悪感ではなく達成感だった。
これで希々は裕太を諦める。傍で優しく傷を癒してあげれば、僕を見てくれるはずだ。
そんな淡い期待は、粉々に砕かれた。
裕太の鈍さと希々の一途さは、僕の誤算だった。
まぁ、それくらいで諦めるほど軽い想いじゃないし、待つのは得意だ。
中高は裕太がテニスに夢中で女の子に興味がある風でもなかったから、なかなかきっかけは作れなかった。でも、大学に入って環境は大きく変わった。
『兄貴とはぜってー同じサークルに入らねぇ! 校内ランキング戦で勝ってやる!』
裕太のおかげで僕は、自分のサークル内で準備ができた。
裕太は自分がモテる自覚がない。僕のサークル内にも裕太を好きだという子は何人かいた。
だから、その子と裕太の仲を取り持ってあげたんだ。
僕は唇を持ち上げる。
きっとそろそろ、連絡が来る。
愛しいあの子から。
――プルルル、プルルル、
「もしもし。どうしたの? 希々」
スマホの向こうからは、あの日みたいな泣き声。
『周ちゃ…………っ、私、私…………っ、……っ本当に、失恋、しちゃっ…………う、ぅう…………っ!』
今日は一限から授業のはずだ。なのにこの時間に連絡してきたということは、彼女は大学内にいる。
「……落ち着いて、希々。今、どこにいるの?」
『食堂、の、裏…………っ』
「すぐ行くから、待ってて」
僕は王子と呼ばれても魔王と呼ばれても嬉しくない。完璧だと言われても誰から告白されても、満たされたことなんてない。太陽みたいな弟に、一度も勝てないのだから。