ロンドン橋落ちた(不二vs.幸村)
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*一話:失恋*
私には好きな人がいる。
私は中学の時その人にフラれている。
なのに諦めることができないのは、その人が優しすぎるからだ。
その人が鈍すぎるからだ。
その人が――幼なじみだからだ。
「おう、希々! 起こしてくれてサンキューな。寝過ごすとこだった」
「一限は英語だもん。単位落としたらキツいでしょ?」
「俺、英語駄目なんだよなぁ……。今度また教えてくれねーか?」
いつも明るい彼が、少し申し訳なさそうに短い茶髪をかきながら私を見る。
私に否と言えるはずもない。
「……いいよ。裕太、いつなら空いてる?」
「試合以外ならいつでも空けるぜ!」
裕太は口を尖らせる。
「ほんと、誰に聞いても兄貴に教わればっか言われるけど、兄貴忙しいんだよ」
「知ってるよ。周ちゃん、文化祭役員もやってるんでしょ?」
「そ。もうすぐ文化祭だから家に帰るのも遅いし、休みに勉強教えてくれっつーのも気が引けるしさ」
裕太は周ちゃんのことが、なんだかんだ言って好きだ。だから、負担になりたくないと考えている。
私はそんな裕太の優しさを利用して、裕太の近くに居座っている。
***
中学の頃、裕太は今より猜疑心が強くて、私の告白に怒鳴った。
『お前まで、俺を兄貴とのパイプ役に利用する気か!? 冗談じゃねぇ!! 希々なんか死んでもご免だ!』
私の気持ちは、届かなかった。この時ばかりは、周ちゃんがモテるのを本気で恨んだ。
周ちゃんは何も悪くない。でも、私の心がひび割れたのは周ちゃんのせいだ。
叶うどころか届きもしなかった、初恋。
裕太はあの告白にそれ以来触れなかった。というか、あの一件を私との喧嘩だととらえている節がある。
『あの時は怒鳴ってごめんな』
そんな風に言われて、蒸し返すことなどできなかった。
おかげで私は、所謂幼なじみの恋愛沙汰でありがちな“気まずくなって距離を置く”ことすらできず、好きな人の隣で生殺し状態を味わう羽目になっている。
それでも、裕太の近くにいられるならよかった。裕太の笑う顔、無防備な寝顔、それらを見られるなら辛くなんてなかった。
裕太の不得意な英語を頑張って勉強したり、裕太の所属するテニスサークルに入ったりした。
忘れられるわけ、ない。
小さな頃からずっと好きだった人のこと。
***
また拒絶されるのが怖くて、告白しなかった小心者の私がいけなかったのだろう。
太陽みたいに笑うこの人が魅力的なのは嫌という程よく知っていたのに。
「あ、そういや俺、彼女出来たんだ! 今度紹介するな!」
私には好きな人がいる。
私は中学の時その人にフラれている。
なのに諦めることができないのは、その人が優しすぎるからだ。
その人が鈍すぎるからだ。
その人が――幼なじみだからだ。
私はこの日、もう一度失恋した。