リジー・ボーデン(跡部vs.幸村)
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*二十七話:死ぬほどキスしたい*
俺は午後10時を過ぎて帰ってきた希々をベッドに押し倒している。現在進行形だ。
困ったように眉を寄せる希々は頬を染め、俺を見上げてくる。
「…………今日は随分と遅い帰りじゃねぇの」
「…………ごめん……」
好きだと言われて以降、門限をなくした。少なくともそれが、俺と幸村の対等な立場だと思ったからだ。
しかしこんな時間になるのなら、門限18時のままにしておけばよかった。
「…………精市くんが、なかなか帰してくれなくて…………これでも頑張って早く帰ってきた、んだけど……」
「夏の夜は馬鹿男共が集まるから早く帰れと忠告したはずだが。……俺の意見は無視か。そんなにあいつと居たいのかよ」
「違っ、断りきれなくて……!」
もっと早く帰ろうとしていたのは事実かもしれない。だが、幸村に会いに行くことを選んだのは希々自身だ。
一度男に会いに行けばそう簡単に帰してもらえないと、知らずにいるのは希々だ。
俺は舌打ちを堪えて希々に口づけた。
「ん……っ」
「――俺なら帰したりしねぇ。あんたが気絶するまで抱き潰す」
「……っ!!」
怯える瞳を見て、まだ抱かれてはいないとわかった。今はその事実に溜飲を下げるしかない。
「…………あんたは俺に、いつまで我慢させるつもりなんだ?」
「……っ」
希々が悲しげに目を歪ませた。
知っている。彼女は自分の想いを探している状態で、俺に対しても幸村に対しても罪悪感を抱いていると。
それでも幸村に会いに行ったのは、別れてでも希々を想い続けるというあいつの選択に器の広さを見出したからなのか。
「……」
わかっている。
そもそも春の段階で、希々の心が俺に傾く可能性は限りなく低かった。それが叶っただけでも喜ぶべきだ。押して押して押しまくった自覚はあるが、それに流された希々を責める資格など俺にはない。
「……今日は本当に、もっと早く帰るつもりだったのか?」
希々は薄い水の膜を張った目で頷いた。
「……ほんと……に、景吾、くんに、しんぱい、かけない時間……に帰る、つもり……だったよ……」
「……」
「…………ごめん、なさい……」
希々の眦から一筋の光がこぼれた。
「ひとり、を、まだ…………っえらべなく、て……っ、ごめんなさい……っ」
「――――」
……俺は自分勝手だな。
二人の間で揺れてもいいから、俺を好きになってほしいと思っていたのに。いざそうなったら、俺だけを好きになってほしいという欲望が膨らんでしまう。
「……俺こそ、悪かった。……ごめんな、希々……」
そっと希々の額に額を合わせて、目を閉じる。
「……ごめん、希々……」
「ごめ……、景吾、くん……っ」
謝罪を繰り返す唇を塞ぎ、そのまま動きを止めた。罪悪感を取り除く手段がわからなくて、キスに集中させることしか思いつかなかった。
「もう……謝るな。無事に帰って来ただけで良かった」
「ふ、……っ」
「……俺ももう少し、余裕を持たねぇとな」
冷えた指先を両手とも重ね、体温を分ける。希々は薄ら目を開き、俺を見る。
「……俺のこと…………嫌いになったか……?」
「……うぅん……、……好き、だよ……」
「…………早く俺だけを好きになれ」
希々が微かに笑んだ。
「……景吾くん、相変わらず俺様だね」
「……俺様は跡部景吾だからな」
希々の涙が止まり、和らいだ空気に安堵した。
しかし改めて近い距離を自覚した途端、胸がざわつき始めてしまった。
「……っ」
夏は露出が多いのだ。
薄いカーディガンがベッドに広がり、細い肩や鎖骨を露わにしている。白い素肌が目と鼻の先にあって、今夜のキス時間がまだの状態で、このままおやすみなさいと終われるほど俺は我慢強くない。
「希々……」
「?」
弱い首筋に触れるか触れないかのキスを繰り返す。
「っぁ……っ、」
希々の声が上擦った。
繋いだ手を解き、右手で希々の頬に触れる。彼女の顔の真横についた左手が、ベッドを軋ませた。
「希々…………キス、していいか……?」
「……っ、う、ん…………」
目が合えば、もう言葉は必要ない。
「ふ……っ」
角度や強さを変え、唇を重ねた。希々の好きな、時間をかけた長いキス。
やんわりと歯を立て下唇を食んで、反射的に開いた咥内へと舌を差し入れた。
「ぁ……っ」
慣れ親しんだ口づけは、希々の身体から力を奪っていく。希々もキスに応えようとしてくるから、二人の間の空気が熱を帯びた。
伸ばされた舌に舌を絡め、唾液を貪り、柔らかな咥内を蹂躙し尽くす。擦り合わせる快感を追い、混ざり合ったお互いの唾液を嚥下し合う。
「……っ、…………ん……っ」
舌の根元を擦り付け、甘噛みし、吸い上げる。深い口づけを20分ほど続けた頃だろうか。
希々は呼吸が苦しくなったのか俺の胸を叩いた。いつもならやめるところだが、今日は希々を解放せず、俺はキスを続けた。
「んぅ…………っ!」
やがて力が入らなくなった希々の手が、ぱたりとベッドに投げ出された。
「……死ぬほどキスしたい」
「……っ、は、…………っ」
胸を上下させて必死に酸素を求める希々の唇を、何度も遮る。辿る。貪る。
俺の吐息が希々の呼気になり、俺は希々の吐息ごと飲み込む。
苦痛と快感に歪む希々の表情が劣情を駆り立てた。
「はぁ……っ、は、ぁ…………」
「夜は……俺の時間だよな」
長い髪をよけて耳朶を食む。ちゅ、と音を立てながら耳に、首に、鎖骨に口づける。
「ふ、ゃ……っあ…………っ!」
希々は上がった息を整えようと喘ぐ。
その声にまた煽られるから、甘い悦楽は終わらない。
「ん……っぅ、ふ、ぁ……っ」
ギリギリの理性で身体を起こすと、蕩けた希々の顔に腰が疼いた。
首筋に、鎖骨に、唇を寄せて強く吸う。付いた痕に充足感が生まれた。
既に希々の頭はまともに働いていないらしかった。キスマークを付けるたびに「ぁ……っ」なんて声を上げている。快楽のあまり涙を滲ませ、ぴくりと小さく震える様はあまりに無防備だ。
「……希々……」
「……っぁ、……ん、」
「…………あんたが欲しいよ、馬鹿希々」
「……っ、」
許容量を超えそうな希々に苦笑して、優しく唇を重ねた。
今度は震える肩をゆっくり撫で、繊細な手つきで髪を梳いてやる。
「……」
やがて気絶するように希々が寝落ちた頃には、とうに日付は変わっていた。
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