リジー・ボーデン(跡部vs.幸村)
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*二十五話:いい場所*
あれから精市くんは、吹っ切れたように猛アタックをはじめた。毎日の連絡はもちろん、以前よりずっと積極的にデートに誘われる。もはや別人なのではないかと疑うくらい、キスも言葉も情熱的に贈られる。それだけで既に私の頭は容量オーバーである。
しかも問題はそれだけではない。
精市くんとのデートの予定なんて誰にも言ったことはないのに、何故かバレて景吾くんに邪魔されるのである。
後日知られる場合はまだしも、精市くんに申し訳ないのはデートがドタキャンになってしまう日がある、ということだった。
デート当日、精市くんに会う前に景吾くんに気付かれてしまったらもう終わりだ。官能的なキスで腰砕けにされてしまえば、私は文字通り物理的に動けなくなってしまう。
確かに私は景吾くんのことも好きになってしまったけれど、本音で話せるようになった精市くんともっと時間を共有したかった。もっと彼のことを知りたかった。景吾くんとは毎日同じ部屋で顔を合わせているのだから、もう少し精市くんとの時間が欲しい。
精市くんにそれを相談したら、美しすぎる笑顔で言われた。
じゃあ跡部にバレないように、俺がいい場所を探しておくよ、と。
……私には学習能力がないのだろうか。
精市くんの提案は、いつだって私に想像すら抵抗すらできない状況を招くのだと――告白された時から知っていたはずなのに。
***
「希々さん、ようこそ」
「え…………」
今は夏だ。夏と言えば避暑地だ。それは理解できる。
でも、まさか精市くんに呼び出された場所が彼のアルバイト先だとは夢にも思わなかった。
「精市くん……この旅館でバイトしてるの?」
「あぁ。夏の間だけね」
「テニスの試合……毎回出てるのに、アルバイトまで…………?」
精市くんは笑って私の手を引く。
「お金がないと希々さんをエスコートできないし、独り占めする場所も欲しかった。親戚がいい条件で雇ってくれてね」
いつもの公園デートで、私はじゅうぶん嬉しいのに。私は精市くんの少ない休みを奪ってしまっている。そう思うと、胸が詰まった。
「、私が、精市くんのテニスを邪魔しちゃってるんじゃ……」
「テニスに必要な練習時間は確保してるよ。家族旅行をアルバイトにあてただけだ」
「だけどそれだと、精市くんが休む時間がなくなっちゃうよ……!」
真剣に精市くんの体調を心配している私に、低い声が返された。
「……希々さん、俺をあんまり子供扱いしないでくれないかな」
一瞬で精市くんは私を強く引き寄せ、どこかの部屋に入った。
「っ!?」
背中を壁に押し付けられて、思わず鞄を取り落としてしまう。けれどそれを気にする余裕はなかった。
精市くんの目に宿る熱に、言葉を失う。
「精市く、」
「もう、俺は我慢しないよ」
「……っ!」
ここがどこなのか把握する暇すらなく、唇が重ねられた。角度を変えて何度も吐息が交差する。
「せ、ぃ、いちく、……っん……っ」
気付けば両手首も壁に押し付けられていて、私は何もできなくなっていた。今までの精市くんでは考えられないくらい、強引なキス。
職場でこんなことをして大丈夫なのかとか、誰かに見られたらどうするのかとか、頭の端に疑問が浮かぶたび、見透かされるように唇を吸われて目を見開く。
「んんん……っ!」
「大丈夫だよ……今日は休館日で、ここは従業員専用の給湯室だ。誰も来ない」
「わ、わかっ……、んぁ……っ!」
わかった、と答えることさえ許されない。性急に舌を絡め取られて、目をぎゅっと閉じた。
精市くんは私が何を考えているのか全てわかっているみたいだった。いつの間にか両手は解放されていたけれど、力が入らない。こんなキスを景吾くん以外にされるのは初めてで、頭がくらくらする。
悪戯に舌を甘噛みされ、咥内を余すところなく蹂躙される。上顎や歯列を執拗に刺激され、だんだんと熱が燻り始めた。
心の準備ができていない私は首を左右に振ろうとしたものの、その動きが精市くんのスイッチを入れる結果になってしまったらしい。
「……っぁ……ん…………っ! ふ、ぁ…………、っ、…………っ」
後頭部と腰に回された手が、私を逃がさない。
舌を吸われて咥内の水分が枯渇する。精市くんから与えられる唾液で何とか呼吸を保つ。くちゅ、という水音が恥ずかしいのに、柔らかい刺激が頭の芯を溶かしていく。
「も…………っ、ら、め…………っ」
かくっ、と膝から力が抜けた。壁伝いに私が座り込んでも、精市くんは口づけを止めようとはしなかった。
「ふ、ぅ…………っ、ぁ…………」
思考がぐずぐずに蕩けて、生理的な涙が頬を伝う。正常な判断ができなくなっている気がして、少し怖い。
「せ、ぃ、いち、……く、ん…………っ」
「は……、……希々さん…………っ」
ちゅ、とリップノイズを立て、ようやく離れた精市くんの表情はあまりに色っぽくて、年下だということを忘れてしまった。
精市くんは上がった息を整え、ぎらついた眼差しで告げる。
「今日は俺だけの希々さんだから……ね」