ウィー・ウィリー・ウィンキー(跡部)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*最終話*
俺は出来立てホヤホヤのバカップルを半眼で見やった。
「希々、こっち来い」
「ん。けーごの膝の上、落ち着く」
「俺も落ち着くぜ? 後ろから希々の香りを堪能できる」
「うぃんうぃんだね」
希々ちゃんは定位置のソファから立ち上がって、会長席の跡部の膝に座る。本人達が幸せそうなので何も言わないが、絵面としては幼子を後ろから抱っこする父親である。
俺はため息と共に切り出した。
「……で、俺は何で呼ばれたん?」
「釘をさしておきたくてな。希々は正式に俺のものになった。手ぇ出すなよ」
跡部の台詞にため息は深くなる。
「出さんがな……。なんやねんこの親バカは」
「ゆーし、けーごはお父さんじゃないよ」
希々ちゃんの言葉にはいはいと頷いていると、不意に跡部がぴくりと眉を動かした。
「……おい、希々」
「なに?」
「お前が名前で呼んでいいのは俺様だけだろ? 忍足のことは忍足って呼べ」
心の底からどうでもええ!!
と叫び出したいのを堪えて俺は事の成り行きを見守った。
「おしたり……長い……。……おっしーでもいい?」
「くくっ、いいぜ。良かったな、“おっしー”」
「よろしく、おっしー」
俺はツッコミを諦め、「……おん。おおきに」とだけ答えた。
それにしても、希々ちゃんの印象はだいぶ変わった。以前の彼女は、子供じみてはいてもやはり天才故か、どこか達観していた。それが今はどうだ。まさしくペットの猫よろしく跡部にじゃれ付き、嬉しそうにほわほわと笑っている。
「……希々ちゃん、初めての恋愛はどうや?」
希々ちゃんはくるりと体勢を変えて跡部に抱きつき、見たことのない満面の笑みを浮かべた。
「恋愛、悪くない。いろんなこと気にならなくなって、けーごといるとどきどきわくわくする!」
それを聞いた跡部が見たこともないほどでれでれとした笑みを浮かべ、希々ちゃんの頬を引き寄せて唇を重ねた。
「キス、気持ちいーね。けーごのキス、すき!」
「おいおい、あんまり可愛いこと言うんじゃねぇよ。休み時間中キスしたくなるだろうが」
俺はこの様子をいつまで静観していればいいのだろう。もうジローでも樺地でもいいから誰か来てくれないか。そう思った時だった。
「……希々、一つ聞きたい」
ふと跡部の声が真剣味を帯びた。
「なに?」
「…………忍足にも、キス、したいか?」
意味のわからない問いかけに俺は首を傾げた。
「はあ? 何言うてんねん。希々ちゃんは跡部が好きなんやろ?」
しかし希々ちゃんはその意図を理解したらしく、どこか切ない瞳で微笑んだ。
「けーご」
「……あぁ」
「恋愛、研究してるけど一つわかったよ。私、恋愛もキスも、相手はけーごがいい。おっしーのことも好きだけど、けーごへのすきとは違う」
「……っ!」
跡部が嬉しそうに希々ちゃんを抱きすくめた。
「……もう、離さねぇからな」
「……うん。けーごも、私以外の子とキスしちゃだめだよ?」
「あぁ。誓う」
希々ちゃんは心から嬉しそうに笑って、俺に言った。
「おっしー、証人ね」
俺は苦笑して頷いた。
「おん。任せとき」
天才と王様の恋愛は、どうやら王様の一途さに軍配があがったらしい。
自覚はないだろうが、跡部は以前から希々ちゃんと進展があるたびに、部活で多少容赦というものをしてくれていた。できるならこの機嫌の良さを維持し続けてほしい。
そう思いつつ、俺は二人の嬉しそうな笑顔に、自分も満たされた気分になっていたのだった。
「けーご、今度テニス見に行っていい? テニスしてるけーご見たい」
「……希々は俺様の女だって学校中に宣言していいならな。じゃねぇと他の奴にお前を見せたくねぇ」
「わかった。これからは、恋愛とけーごを研究することにしたの。とても興味無い」
「そりゃあよかった。どっちも一度に研究できて一石二鳥だな」
「うん!」
Fin.
10/10ページ