ライオンとユニコーン(跡部vs.幸村)
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*最終話*
俺と希々さんは、退院と共に二人で穏やかな時間を重ねていった。彼女の生い立ちや、今はお母様と良好な関係にあること、片倉さんとの思い出。まぁ、最後の項目に関しては俺が一人で嫉妬してしまうのだけれど。
「……希々さんのファーストキスは片倉さんなんだよね。俺のファーストキスは希々さんだけど」
「私のファーストキスは5年前よ? その頃精市くんは、……ふふ、まだ10歳じゃない」
彼女はいつだって余裕があって、俺の不満を包んでくれる。
「片倉さんと交わしたキスは何回なんだい?」
「回数なんて覚えてないよ。でも…………精市くんは未成年だから、私から触れていいのかわからないの」
「なら、俺から触れるよ」
希々さんの部屋で、その唇に酔いしれる。かつて俺に土下座までしたご両親は、俺と希々さんの付き合いを認めてくれた。もちろん俺は、持病があることも18歳になったら彼女と結婚する意思があることも伝えてある。
娘が片倉さんの後を追うことを本気で心配していた二人は、俺に頭を下げた。
『希々を、よろしくお願いします』
『もし君がいずれ希々以外と恋愛することがあっても、罪悪感を抱かないで欲しい』
彼女の父親の言葉に、俺は笑って答えた。
『――希々さんは俺の初恋なので、忘れることはできません』
「精市く、」
頬を染める希々さんの唇をやんわりと食み、舌を差し入れる。
「んっ……、ん、ぁ…………っ」
控えめな喘ぎ声に、俺の欲は刺激される。
「……片倉さんとは、こういうキス、いっぱいしたのかな?」
「し、てない、よ…………っ」
「俺とはいっぱいして欲しいな」
「!」
10も年上なのに、希々さんはこういうことになると本当に初心で可愛らしい。
「私…………景吾くんにも、すごく心配をかけたと思うの。わかってるけど……会うのが、怖くて」
「どうして?」
「あ、…………その…………」
希々さんが目を逸らすものだから、俺は少し強引に小さな唇を奪う。
「……告白でも、されたのかな?」
「、…………た、ぶん…………」
吐息が混ざる距離で交わす会話は、どこか背徳感があって俺を大胆にする。
「……そうか。きっと希々さんは跡部のことも、年齢を引き合いに出して断ったんだね。なのに、跡部と同い年の俺と付き合っているなんて、言いづらいよね」
責めるつもりなんてないのに、瞳を不安げに揺らす希々さんを見ているといじめたくなってしまうのは何故なんだろう。
「せ、いいち、くん、」
「跡部の方が先に名前で呼ばれてたんだよ? 俺の希々、なのに」
「!」
片倉さんのふりをしていた時のように呼び捨てで呼ぶと、希々さんは一瞬で真っ赤になった。
「……ごめんね。少し意地悪だった」
そっと希々さんを抱きしめて、温もりを確かめる。
「……一般的には女性の方が長生きするらしいけど、俺は希々さんより10も年下だから、貴女より長生きするよ。……できれば、同時に笑って逝けたら文句のない人生だ」
「…………精市くん」
「もう二度と、貴女より先に愛する人を死なせない。約束するよ。だから…………」
綺麗な瞳に映る自分を見ながら、俺は微笑んだ。
「一緒に、生きよう」
希々さんは、目を丸くした。
その大きな瞳から涙をぽろぽろ零した。
そして、笑った。
「…………はい」
その涙は、宝石みたいに綺麗だった。
Fin.
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