名前変更のない場合、主人公名は長良(ながれ)になります。
地に落ちる
長良
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…まあ、ねー…。
「サルったってそこそこお年頃ですしィ…?
女子参戦とくりゃあ感極まるもんよ、嬉しくて!」
「っだぁからぁ!そんなんじゃねーってェ!!!」
「こらこら悟浄、そう煽るコトでも無いでしょう…」
万一、
悟空の体調に支障があるというなら、
消耗させる事は逆効果だ。
八戒は優しく尋ねてみる。
「具合、悪いですか悟空…?
車酔いだったら少し休憩して」
「た、体調悪いとかじゃない!!
じゃなくて!!なんか、
っみぞおちの辺り、掴まれてる、っつか…」
そう ぎゅっと服を掴みながら。
「…この道、進み始めてからなんか
ずっとなんだ。このへんぞわぞわして、
止まんなくて、
…落ち着かない…ってゆーか…」
自分でも意味わかんねえ…
でも“そう”だし…
悟空の声がみるみるしぼんでいく。
すると突然
「…?」
長いこと薮(やぶ)に覆われていた景色に
光が差した。
「ーーーーー……!!」
険しい砂利道は、
深緑の美しい、森の中へ通じていたらしい。
狭い車道に速度を落とすと、聞こえてくるのは川のせせらぎや鳥の声
雨上がりなのか、そもそも土地の気候なのか
露を纏った木々が、通り過ぎる度優しく煌めいてみせた。
「…んだココぉ…」
「神々しい雰囲気になりましたねぇ…」
やがて脇道には、
穏やかな表情の残る小さな地蔵が、
一行を出迎えるように掠め始めた。
どうやら目的地が近いらしい。
「…ところで悟空の“泣きそう”の件ですけど。」
「?」
…実を言うと、僕もここまでの道中
なんだか胸騒ぎを感じていまして…
「八戒も…?」
「えぇ。みぞおちの辺り、と言われてそういえばって。
まあ、
こんなに美しい新緑も久しいですし、土地に当てられたような気もしなくもないですがね。」
八戒がそう言って苦笑したことで、
ほんのちょっと、悟空のもやもやも
拭われたような気がして。
「そ、っか…コレ、俺だけじゃなかったんだ。」
「…ふん…
それにしちゃやけに気が〝濃い〟がな…」
「エ、なに
実は三蔵サマもさっきから
エモい気分だったってこと??」
「黙れ鈍感クソ河童。」
「否定はしないのね。」
ーーーー
やがて
目の前に巨大な門が現れた。
苔がびっしりと覆ったそれには、かろうじて【緑縁寺】と記されていることが確認できる。
「…キレーだ…」
つぶやいた悟空の瞳にもキラキラと木漏れ日が踊った。
エンジンを止めると、本殿から誰か出てくるのが見えた。
ゆっくりお辞儀をするその人物は、腰も曲がり歳も大層経ている。どうやら女性のようだった。
「ま、さかあれが、」
「ここの最高僧だろう。誰と間違えてやがる」
「悟空?降りれますか?気分は…」
「うん。八戒のハナシ聞いてから、さっきより元気かも。いける!」
ニッ!と笑顔を見せ、ジープからひょいと降りる悟空。
全員降りたところで、八戒はいつもの通りジープを肩に乗せ、最後尾を歩き出した。
ーーーーーー…キュイ!
「ジープ?」
突然、
何かを見つけて肩を離れるジープ。
思わず目を細め、八戒がその先を仰ぐと、
「…紙ヒコーキ…?」