名前変更のない場合、主人公名は長良(ながれ)になります。
理解
長良
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「長良さん、起きてます…?」
ノックすると、ぱたぱた…と足音
長良がそろりと扉から顔を覗かせた。
『!八戒さん』
「こんばんは。夜食を召し上がらないかと思って」
『えぇ…!』
お盆の桃とお茶を見て、唇を噛み締める長良。
(あ、好みなやつなんだ。)
長良に食欲があることに八戒も安堵した。
「入っても?」
八戒が確認すると、片手で“どうぞ。”と合図する。
居室に入ると机に広げられた書き物、その隅に、スヤスヤとジープが丸まっていた。
『ジープくんは車になるんですねえ。沢山走って凄いなあ…』
「今日は長良さんも同じくらい頑張りましたから、疲れたでしょう。
何を書かれていたんですか?」
『ああ…お手紙を』
おばあさまにお手紙を書くようにと言われていて。
「、」
『ああ見えてちょっと過保護っていうか…
…寂しがり屋なんです。たぶん。』
仕方ないな、という顔で笑う。
「…どんなことを書くんですか?」
『とにかく元気でいるかを教えて欲しいと。
こまめに連絡が欲しいと仰っていました。』
“何でも”というのは、
つまり
“どんなことでも”。
細かに把握しておきたいのだ。数を欲しがるのも、多くの情報を手に入れたいのだろう。
『今日は書けそうなことが沢山あったので忘れないうちに、』
「長良さん」
『?』
ーーーー…僕らも、
「…僕らも、定期的な報告義務を担っているんですが…
バラバラにお手紙差し上げるのも何ですし、よろしければ一緒にまとめて送りませんか。
ーーーホラ切手代とか。捗りますし。」
『…いーんですか。』
「勿論。送る前にお渡しいただければ。」
にこりと微笑みつつ。
気の乗らない出まかせだ。
だが止めないわけにいかない。
手紙は内容を確認することになる。
破棄しなければならない状況になれば、
三蔵は恐らく、長良に真実を伝える。
彼女が唯一案じている存在、最高僧が
全ての元凶であるかもしれないという疑惑を。
…
『八戒さん?』
「え、」
『…にがい顔してます。』
そう言って、
ちょっと照れの入った可愛らしい顔真似をして。
数秒ではたと戻り、
似てないな、と自分で笑った。
…なんだか少し、
「緊張、溶けました?」
『!』
…き、…
『気を抜くと、ちょっと…』
そう言いながら、
今度はまた
『どうしよう』の顔に戻ったり。
…本来はこんな風に、ころころと表情が変わる人なんだなあ…
八戒の顔も綻んでしまう。
「…長良さんが打ち解けてくれた方が、僕らも嬉しいですよ。」
『!』
「…ふふ、ほんとです。」
『…良いんでしょうか。』
「勿論。…夜食、召し上がれます?」
『!い、いただきます…!』
嬉しそうに受け取り、長良はベッドの傍に腰掛けた。…椅子を空けてくれたようだった。
八戒はそちらに腰掛ける。
「…あれからずっと眠っていたんですか?」
桃を頬張った長良の口が一瞬少し止まって、
ウンウン…と頷きつつ、再び味わう。
『雨音で目が覚めました。
…雨の日は夢見が、ちょっと。』
「、」
…彼女がわざわざベッド側に腰掛け、“引き留めた”時から察するものがあった。
過去を鑑みても
“雨の日”には、
「何か……思い出して、しまいますか……?」
ーーーー…“聞いてもいいですか?”の
含まれた質問。
『…』
少し目を泳がせた後、一息吐いて
できるだけ淡々と長良は続けた。
『……身体が熱くなるんです。』
「…」
…とにかく身体を冷やしたくて、水に入りたい、と…思うんです。でも
ずっと“誰か”に阻止されてる。
『…ヒトの体温って自分が熱いとき触れるとすごく不快でしょ?
逃れたいのに…誰かがその手がずっと
わたしを囲ってるっていうか。
…そういう、キモチワルい夢です。』
…参ったような笑顔と、裏腹に
力を込めて自分の肩をさすった。