名前変更のない場合、主人公名は長良(ながれ)になります。
雨
長良
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巨大な湖の水面に
容赦なく、豪雨が叩きつける。
その勢いは濃い霧を作り出し、
湖とその周辺、全てを真っ白に覆い尽くした。
ーーーーー湖の辺(ほとり)に、
全身泥と雨に塗れたヒトらしき姿があった。
雨風に晒されるがまま背中を丸めて、何かを守っているようにも見える。
その白い髪は乱れ、
擦り切れた法衣にはところどころ紅く模様が滲み出していた。
ーーーー…霧が僅かに薄らぐと
木々たちがその僧侶を中心に、全て薙ぎ倒されているのが見えてくる。
更に土砂と共に埋もれる家屋や納屋、家畜の残骸、
……ヒト、らしきモノも。
ゴロ…と、
その身に巻かれた数珠の重みに耐えながら
彼女は息荒く、
膝に置かれた“何か”を握りしめた。
「ハァ…ハァ……ああ…!!
ついに…
遂に…!」
ーーーー…緑縁寺最高僧 紅燐(コウリン)。
血走った目を見開き、わなわなと震える手で“ソレ”を手繰り寄せる。
その“髪”、“頬”、“肩”、“腕”…
どうやら“人”らしいソレを、
確かめるように、手荒く。
『…っぅ、…!』
力を込めて握られたソレは小さく呻いた。
おお…と声を漏らし、
紅燐がうっとりとした手つきで埋もれる髪を掻き分ける
そこには、
まだあどけなさの残る、苦痛に顔を歪めた少女の顔があった。
まるで今呼吸を覚えているように懸命に肩と肺を動かしているが
それは間もなく
気を失う。
ーーーー…その一瞬流れる雫のように
つやりと、頬に鱗の模様を輝かせて。
「あァ…!!」
紅燐は、その僅かな光を覗き込んだ姿勢のまま
やがて少女が静かに呼吸を続けている音が聴こえてくると、
脱力し、雨空を見上げた。
「…お救いします…
私が…今度は……!!!」
アナタを
見失わない…!
ーーーー…その頬を細く伝ったのは、雨粒だったのか、
或いは。…
ドォン…!!!と、どこかで雷が響く。
返答のようなその雷鳴に
紅燐の口角は、ゆっくりと歪に上がった。