【松】短編小説
口内炎ネタ/キス有/若干流血注意
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カラ松は困惑していた。ふたつ下の弟…六つ子の兄弟の彼らにその表現が正しいのかは分からないが、カラ松からすれば二番目の弟になる一松が朝起きたら寝ているカラ松の腹に跨りマウントを取っていたのだ。
一松はカラ松に対して当たりは厳しいが、理由もなくマウントを取り実の兄の身動きを封じる弟ではない。カラ松はそう信じているため、恐らく多分また自分が一松の繊細な心を傷付けてしまったのだろうと考えた。
しかし、全く持って身に覚えがない。昨日のカラ松は高校時代の演劇部の友人の手伝いのため一日外出してした。出掛けた時には一松はまだ起きておらず、帰ったころには一松は既に就寝していた。つまり、昨日一日一松と顔を合わせていないのだ。
では昨日よりも前だろうか。正直なところそうだとすればニートな身の上なカラ松は変り映えの無い毎日を過ごしているため、余程印象的な出来事でない限りはすぐに記憶の彼方へと抹消されてしまう。曖昧な記憶を探ってもこれだと確信出来る心当たりは無かった。
フゥン、成程?俺の存在自体が一松を傷付けてしまうということか。何故俺は存在しているだけで人を傷付けてしまうんだ…。
「おい、クソ顔止めろ」
怖い顔をした一松に睨まれてカラ松は「はい…」と自分的にはイケてるキメ顔を止めた。決して弟に恐怖したから止めたわけではない。俺のギルティフェイスを見ることで一松が傷ついてしまうからな。カラ松は心の中で言い訳をする。
「……他のブラザーたちは?」
「出掛けた」
ニートである兄弟がみんな出掛けたのならば最早昼に近い時間なのだろう。しまった、寝過ぎたなとカラ松は思った。
「あの…一松、俺の朝ご飯は…」
「ヒヒッ…安心しろよおそ松兄さんと十四松が食べてたよ」
「やっぱり…」
俺の朝ご飯…カラ松は涙目で呟いた。朝飯を食べることが出来なかったことを意識をしたせいか、急激に腹が空腹を訴えて音を鳴らす。カラ松は空腹による切なさと腹の虫の音を一松に聞かれてしまった恥ずかしさとで顔を紅潮させた。眉は何時もの凛々しい角度を忘れたように情けなく下がっている。
カラ松の表情を見て一松はドチャシコ…とカラ松には理解出来ない言葉を漏らした。きっと一松が好きなネコに関わる単語だろう。ネコ語とか。ネコ語ならばカラ松には一切理解出来ないから有り得るのではないだろうか。何故この場で使用したのかは一切不明だが。
「ところで一松。起きたいからどいてくれないか?」
いい加減空腹感がヤバイ。マミーが作った朝食がないなら適当に作ろう。何か材料が残っていれば良いが…。そう考えたカラ松は一松に声を掛けるが、一松は更に体重を掛けてカラ松の起床を邪魔しようとする。
「ホワーイ!?何故邪魔をするんだ一松!」
「……」
「せめて何か言ってくれ!」
一松は意味も無く兄の邪魔をする弟ではない。そのハズだ。多分、きっと…。カラ松は断言出来ない自身を情けなく思いつつも、心の中で俺は信じてるぜと一松にメッセージを送っておいた。以前それを口にした時は胸倉を掴まれて凄まれたので声に出すことは控えておく。
それにしても何故一松はカラ松の上から退こうとしないのか。マウントを取られている以上難しいが、同じ体格なのだから思いっ切り暴れれば一松を退かすことは出来るかもしれない。
しかし、それをしてしまうと一松が怪我をしてしまうかも。それは良くない。優しいナイスガイな自分が弟に怪我をさせるなんてそんなことは合ってはならない。
(優しさを持つことも大変だな…。だが、この試練何とか越えてみせる…!)
決意を新たに一松と向き合うも、一松に凄まれると途端にカラ松は固まってしまう。理由も分からない。身に覚えがない。聞いても答えてくれない。お願いも聞いてくれない。ここまで来るともうお手上げだ。
理不尽な仕打ちに怒るという選択肢は何となくタイミングを逃してしまっているような気がして今更だと思う。
解決の方法も分からないし、何だか飽きてきたからもう一度寝ようかなとカラ松が考え出したその時だった。
ぐぅぅぅ。
大きな腹の虫がふたりの沈黙を破る。
発生源はカラ松の腹では無かった。カラ松の気持ちが萎えているのを真似るかのように、今カラ松の腹の虫は大人しい。カラ松でないなら今腹を鳴らしたのは、目の前に居る一松以外に居なかった。
「一松も腹減ってるのか?なら俺の華麗なランチをご馳走するぜブラザー?だから退いてくれ一松」
「…いらない」
「遠慮するなよブラザー?一人分も二人分もそう変わらない。だから退いてくれ一松」
「クソ松に遠慮してるわけじないから」
腹が減っているのに頑なに拒む一松。もしかして体調が悪いのだろうかとカラ松は思い至った。それならばカラ松の起床を邪魔していないで横になるべきだろう。布団は敷かれているのだから。
ハハーン、分かったぜ。体調が悪い時に一人で寝るのは心細いからこの兄に子守唄を歌って欲しいんだなブラザー!
「いや、違うし。別に体調も普通」
「じゃあ一体どうしたんだ?何か悩み事か?」
カラ松が中二病から弟を気遣う兄の口調へと変化すると、一松は「そうかもね」と素直に返事をした。
起きたばかりで空腹の兄にマウントを取る程の悩みとは一体何だろうか。カラ松には検討も付かない。しかし、カラ松にとって一松は大事な弟である。弟の憂いは取り払ってやりたい。そして早く退いて欲しい。
カラ松は一松が嫌がってもおまえの力になるぜと善意のゴリ押しをして一松の口を開かせることに成功した。
「………口内炎、出来た」
「口内炎」
「舌に出来たから食べると痛い。後、味も何か変に感じるから食べたくない」
なるほど?舌だと食べ物を口に入れる時にどうしても口内炎を刺激するな。だからあまり食べられなくてさっき腹が鳴ってしまったんだな?その点に関してはカラ松は納得することが出来た。
では、一松が退いてくれない理由はどうしてだろう。一松の口内炎はカラ松には何の関係もないのに。カラ松がその疑問を口にすると一松はニヤリと笑った。
「俺の空腹の道連れにしようと思って」
「何でェー!」
「俺が腹減ってるのにクソ松が満腹なのはムカつく」
「理不尽!!」
闇を背負い出した一松からはまた腹の音が漏れてきた。どれだけ腹が減っているのだろうか。
「なぁ、一松。俺を道連れにするよりも口内炎を治す方法を考えた方が良いぞ」
カラ松の言葉に一松は億劫そうな顔で例えば?と聞いてくる。例えば?まさか方法を聞かれるとは思っていなかったカラ松は焦りながら回答を提示する。
「えーと、蜂蜜はどうだ?」
「舐めちゃうからすぐなくなる」
「えーと、えーと…薬局の市販薬は?最近は貼るタイプのもあるらしいぜ~」
「科学的な味だから無理。あと金もない」
「え、えーと…口内炎はビタミンが良いっ聞いたことあるから…レモンを食べるとか…?」
「それすっげー沁みるじゃねーか殺すぞクソ松」
威圧してくる一松にカラ松は萎縮してしまいひぇぇ…と非常に情けない声が出た。目にもうっすらと涙が浮かぶ。カラ松の顔を見て一松は更に笑みを深めた。凶悪な笑顔にカラ松は更に身を縮こませる。
「他は?」
「他…?」
「口内炎を治す方法。他の案はないわけ?」
一松に急かされてカラ松は焦った。正直口内炎を治す方法とは言われてもカラ松はあまり口内炎が出来たことが無いため、あまり縁の無い口内炎を治す方法に詳しいはずが無かった。
回答に詰まるカラ松の焦りに満ちた顔を見て一松は何故か満足気に笑う。口内炎に苦しんで機嫌が悪いはずなのに、非常に楽しそうだ。
「はーいざんねーん。答えられないカラ松は罰ゲーム決定ー」
「えっ?何時からそんなルールに…?」
「良いから罰ゲームだァ!!」
目をグワッと見開いて大声を出すカラ松は反射的に目を瞑って身を竦ませた。何時もなら次の瞬間には頬に衝撃が走り、その後は赤く腫れ上がるまでがテンプレートなのだが、今日はそうでは無かった。
ふに、と唇に少しカサついた柔らかいものが触れた。何だろうかとカラ松がそっと目を開けようとしたところで、湿ったものがカラ松の唇の合わせ目をこじ開けるように動き出したのだ。
途端にぞわりとした感覚が背中を走り、全身に鳥肌が立つ。確認することが恐ろしいが、唇に掛かる一松の吐息にカラ松は唇を濡らしていくそれが見なくても察してしまった。
(これキスされてないか!?)
六つ子はふざけてキスくらいする時もある。最近だと一松がおそ松に風邪を移すためにディープキスをしたことは記憶に新しい。
しかし、一松からカラ松への接触は今まで一度も無かったのだ。そもそもカラ松がふざけてキスされそうになると邪魔をするのが一松なので、実はカラ松自身は兄弟とキスしたことは数えるくらいしかない。
今までそんな態度だった一松が昼食の邪魔をするためだけにキスをしてくるだろうか。カラ松は一松に話し掛けようとして口を開いてしまった。名前を紡ぐ前にベロベロとカラ松の唇を舐めていた舌が中へと滑り込んでカラ松の呼吸を奪う。驚いて目を開けると、カラ松を凝視する一松の熱視線と目が合った。
「んんん~!!」
一松の舌はカラ松の歯を一本ずつ確認するよう歯茎や頬との間まで犯しつくし、ようやくカラ松の舌へと伸ばす頃にはカラ松の口内はふたりの唾液が混ざりあって溢れていた。
合わさった口の隙間からカラ松の吐息とともに伝う唾液がカラ松の頬や首、髪の毛を濡らして枕やパジャマへと吸い込まれていく。
一松は執拗なまでに炎症して腫れた箇所をカラ松の舌へと押し付けた。その度に一松の肩が跳ねてカラ松はふわふわする思考の中へで弟の奇行を心配するが、腹に擦り付けられる一松のイチモツが硬度を増していくことに恐怖した。一松が自分とキスして、しかも口内炎を刺激されていることに興奮してる!?
「ん~!んんぅーーっ!」
「む、ぅ」
「んっ!?むぐ、ぅ、んん!?」
カラ松は身の危険を感じて暴れ出す。大体同じ体格ではあるが、カラ松は自分の理想を追求して体を鍛えている。何も運動をしていない一松て比べれば多少筋肉が付いていた。そんなカラ松が全力で暴れれば一松も抑え込むためことに骨が折れる。そう考えたのだろう、一松はギザギザした鋭い歯で増していくカラ松の舌を甘く噛んだ。
噛まれる力は甘くても、ギザギザした歯がカラ松の柔らかい舌に食い込み、皮膚の表面を僅かに破る。途端に口に広がる鉄の味にカラ松くぐもった声を上げた。それを受けてかは分からないが、一松は血を舐めとるようにカラ松の舌に吸い付いてから唇を離した。繋がっていた舌同士が水気を帯びた糸を引いてカラ松の頬に落ちた。
カラ松は乱れる息を整えようと呼吸を繰り返すが、体中にすくぶる熱のせいで時折肩や腰が勝手に跳ねてままならない。股間の中心に熱が集中して痛んでいることからカラ松は自分が発情していることを悟った。
目が覚めたばかりの生理現象だと思いたかったが、舐められ過ぎて腫れた唇や歯を立てられた上にキツく吸われた舌がヒリヒリと痛む度に腰に快感が走り、更に股間を熱くさせることに繋がっているようだ。それは確実に一松とのキスの所為でこのようになってしまったことを現していた。カラ松もまた弟に口内を蹂躙されて興奮していたのだ。
「ヒヒッ…痛ぇ…」
兄の舌を使って口内炎を刺激するという高度過ぎる自慰を披露した一松はというと、恍惚とした顔で痛みに悶えていた。カラ松には理解出来なかった。さっきレモンは沁みるからと拒否していたのに、ディープキスはオッケーな一松の真理が。
涎まみれとなったカラ松の顔を自分の服の裾で乱暴に拭いながら一松は口を開く。
「傷のとこ口内炎になるかもね。…そしたらお揃いだねオニーチャン?」
普段の弟と比較すると楽しそうに紡がれた言葉に、カラ松は内心嫌なお揃いだなと思うのだった。
【終】
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カラ松は困惑していた。ふたつ下の弟…六つ子の兄弟の彼らにその表現が正しいのかは分からないが、カラ松からすれば二番目の弟になる一松が朝起きたら寝ているカラ松の腹に跨りマウントを取っていたのだ。
一松はカラ松に対して当たりは厳しいが、理由もなくマウントを取り実の兄の身動きを封じる弟ではない。カラ松はそう信じているため、恐らく多分また自分が一松の繊細な心を傷付けてしまったのだろうと考えた。
しかし、全く持って身に覚えがない。昨日のカラ松は高校時代の演劇部の友人の手伝いのため一日外出してした。出掛けた時には一松はまだ起きておらず、帰ったころには一松は既に就寝していた。つまり、昨日一日一松と顔を合わせていないのだ。
では昨日よりも前だろうか。正直なところそうだとすればニートな身の上なカラ松は変り映えの無い毎日を過ごしているため、余程印象的な出来事でない限りはすぐに記憶の彼方へと抹消されてしまう。曖昧な記憶を探ってもこれだと確信出来る心当たりは無かった。
フゥン、成程?俺の存在自体が一松を傷付けてしまうということか。何故俺は存在しているだけで人を傷付けてしまうんだ…。
「おい、クソ顔止めろ」
怖い顔をした一松に睨まれてカラ松は「はい…」と自分的にはイケてるキメ顔を止めた。決して弟に恐怖したから止めたわけではない。俺のギルティフェイスを見ることで一松が傷ついてしまうからな。カラ松は心の中で言い訳をする。
「……他のブラザーたちは?」
「出掛けた」
ニートである兄弟がみんな出掛けたのならば最早昼に近い時間なのだろう。しまった、寝過ぎたなとカラ松は思った。
「あの…一松、俺の朝ご飯は…」
「ヒヒッ…安心しろよおそ松兄さんと十四松が食べてたよ」
「やっぱり…」
俺の朝ご飯…カラ松は涙目で呟いた。朝飯を食べることが出来なかったことを意識をしたせいか、急激に腹が空腹を訴えて音を鳴らす。カラ松は空腹による切なさと腹の虫の音を一松に聞かれてしまった恥ずかしさとで顔を紅潮させた。眉は何時もの凛々しい角度を忘れたように情けなく下がっている。
カラ松の表情を見て一松はドチャシコ…とカラ松には理解出来ない言葉を漏らした。きっと一松が好きなネコに関わる単語だろう。ネコ語とか。ネコ語ならばカラ松には一切理解出来ないから有り得るのではないだろうか。何故この場で使用したのかは一切不明だが。
「ところで一松。起きたいからどいてくれないか?」
いい加減空腹感がヤバイ。マミーが作った朝食がないなら適当に作ろう。何か材料が残っていれば良いが…。そう考えたカラ松は一松に声を掛けるが、一松は更に体重を掛けてカラ松の起床を邪魔しようとする。
「ホワーイ!?何故邪魔をするんだ一松!」
「……」
「せめて何か言ってくれ!」
一松は意味も無く兄の邪魔をする弟ではない。そのハズだ。多分、きっと…。カラ松は断言出来ない自身を情けなく思いつつも、心の中で俺は信じてるぜと一松にメッセージを送っておいた。以前それを口にした時は胸倉を掴まれて凄まれたので声に出すことは控えておく。
それにしても何故一松はカラ松の上から退こうとしないのか。マウントを取られている以上難しいが、同じ体格なのだから思いっ切り暴れれば一松を退かすことは出来るかもしれない。
しかし、それをしてしまうと一松が怪我をしてしまうかも。それは良くない。優しいナイスガイな自分が弟に怪我をさせるなんてそんなことは合ってはならない。
(優しさを持つことも大変だな…。だが、この試練何とか越えてみせる…!)
決意を新たに一松と向き合うも、一松に凄まれると途端にカラ松は固まってしまう。理由も分からない。身に覚えがない。聞いても答えてくれない。お願いも聞いてくれない。ここまで来るともうお手上げだ。
理不尽な仕打ちに怒るという選択肢は何となくタイミングを逃してしまっているような気がして今更だと思う。
解決の方法も分からないし、何だか飽きてきたからもう一度寝ようかなとカラ松が考え出したその時だった。
ぐぅぅぅ。
大きな腹の虫がふたりの沈黙を破る。
発生源はカラ松の腹では無かった。カラ松の気持ちが萎えているのを真似るかのように、今カラ松の腹の虫は大人しい。カラ松でないなら今腹を鳴らしたのは、目の前に居る一松以外に居なかった。
「一松も腹減ってるのか?なら俺の華麗なランチをご馳走するぜブラザー?だから退いてくれ一松」
「…いらない」
「遠慮するなよブラザー?一人分も二人分もそう変わらない。だから退いてくれ一松」
「クソ松に遠慮してるわけじないから」
腹が減っているのに頑なに拒む一松。もしかして体調が悪いのだろうかとカラ松は思い至った。それならばカラ松の起床を邪魔していないで横になるべきだろう。布団は敷かれているのだから。
ハハーン、分かったぜ。体調が悪い時に一人で寝るのは心細いからこの兄に子守唄を歌って欲しいんだなブラザー!
「いや、違うし。別に体調も普通」
「じゃあ一体どうしたんだ?何か悩み事か?」
カラ松が中二病から弟を気遣う兄の口調へと変化すると、一松は「そうかもね」と素直に返事をした。
起きたばかりで空腹の兄にマウントを取る程の悩みとは一体何だろうか。カラ松には検討も付かない。しかし、カラ松にとって一松は大事な弟である。弟の憂いは取り払ってやりたい。そして早く退いて欲しい。
カラ松は一松が嫌がってもおまえの力になるぜと善意のゴリ押しをして一松の口を開かせることに成功した。
「………口内炎、出来た」
「口内炎」
「舌に出来たから食べると痛い。後、味も何か変に感じるから食べたくない」
なるほど?舌だと食べ物を口に入れる時にどうしても口内炎を刺激するな。だからあまり食べられなくてさっき腹が鳴ってしまったんだな?その点に関してはカラ松は納得することが出来た。
では、一松が退いてくれない理由はどうしてだろう。一松の口内炎はカラ松には何の関係もないのに。カラ松がその疑問を口にすると一松はニヤリと笑った。
「俺の空腹の道連れにしようと思って」
「何でェー!」
「俺が腹減ってるのにクソ松が満腹なのはムカつく」
「理不尽!!」
闇を背負い出した一松からはまた腹の音が漏れてきた。どれだけ腹が減っているのだろうか。
「なぁ、一松。俺を道連れにするよりも口内炎を治す方法を考えた方が良いぞ」
カラ松の言葉に一松は億劫そうな顔で例えば?と聞いてくる。例えば?まさか方法を聞かれるとは思っていなかったカラ松は焦りながら回答を提示する。
「えーと、蜂蜜はどうだ?」
「舐めちゃうからすぐなくなる」
「えーと、えーと…薬局の市販薬は?最近は貼るタイプのもあるらしいぜ~」
「科学的な味だから無理。あと金もない」
「え、えーと…口内炎はビタミンが良いっ聞いたことあるから…レモンを食べるとか…?」
「それすっげー沁みるじゃねーか殺すぞクソ松」
威圧してくる一松にカラ松は萎縮してしまいひぇぇ…と非常に情けない声が出た。目にもうっすらと涙が浮かぶ。カラ松の顔を見て一松は更に笑みを深めた。凶悪な笑顔にカラ松は更に身を縮こませる。
「他は?」
「他…?」
「口内炎を治す方法。他の案はないわけ?」
一松に急かされてカラ松は焦った。正直口内炎を治す方法とは言われてもカラ松はあまり口内炎が出来たことが無いため、あまり縁の無い口内炎を治す方法に詳しいはずが無かった。
回答に詰まるカラ松の焦りに満ちた顔を見て一松は何故か満足気に笑う。口内炎に苦しんで機嫌が悪いはずなのに、非常に楽しそうだ。
「はーいざんねーん。答えられないカラ松は罰ゲーム決定ー」
「えっ?何時からそんなルールに…?」
「良いから罰ゲームだァ!!」
目をグワッと見開いて大声を出すカラ松は反射的に目を瞑って身を竦ませた。何時もなら次の瞬間には頬に衝撃が走り、その後は赤く腫れ上がるまでがテンプレートなのだが、今日はそうでは無かった。
ふに、と唇に少しカサついた柔らかいものが触れた。何だろうかとカラ松がそっと目を開けようとしたところで、湿ったものがカラ松の唇の合わせ目をこじ開けるように動き出したのだ。
途端にぞわりとした感覚が背中を走り、全身に鳥肌が立つ。確認することが恐ろしいが、唇に掛かる一松の吐息にカラ松は唇を濡らしていくそれが見なくても察してしまった。
(これキスされてないか!?)
六つ子はふざけてキスくらいする時もある。最近だと一松がおそ松に風邪を移すためにディープキスをしたことは記憶に新しい。
しかし、一松からカラ松への接触は今まで一度も無かったのだ。そもそもカラ松がふざけてキスされそうになると邪魔をするのが一松なので、実はカラ松自身は兄弟とキスしたことは数えるくらいしかない。
今までそんな態度だった一松が昼食の邪魔をするためだけにキスをしてくるだろうか。カラ松は一松に話し掛けようとして口を開いてしまった。名前を紡ぐ前にベロベロとカラ松の唇を舐めていた舌が中へと滑り込んでカラ松の呼吸を奪う。驚いて目を開けると、カラ松を凝視する一松の熱視線と目が合った。
「んんん~!!」
一松の舌はカラ松の歯を一本ずつ確認するよう歯茎や頬との間まで犯しつくし、ようやくカラ松の舌へと伸ばす頃にはカラ松の口内はふたりの唾液が混ざりあって溢れていた。
合わさった口の隙間からカラ松の吐息とともに伝う唾液がカラ松の頬や首、髪の毛を濡らして枕やパジャマへと吸い込まれていく。
一松は執拗なまでに炎症して腫れた箇所をカラ松の舌へと押し付けた。その度に一松の肩が跳ねてカラ松はふわふわする思考の中へで弟の奇行を心配するが、腹に擦り付けられる一松のイチモツが硬度を増していくことに恐怖した。一松が自分とキスして、しかも口内炎を刺激されていることに興奮してる!?
「ん~!んんぅーーっ!」
「む、ぅ」
「んっ!?むぐ、ぅ、んん!?」
カラ松は身の危険を感じて暴れ出す。大体同じ体格ではあるが、カラ松は自分の理想を追求して体を鍛えている。何も運動をしていない一松て比べれば多少筋肉が付いていた。そんなカラ松が全力で暴れれば一松も抑え込むためことに骨が折れる。そう考えたのだろう、一松はギザギザした鋭い歯で増していくカラ松の舌を甘く噛んだ。
噛まれる力は甘くても、ギザギザした歯がカラ松の柔らかい舌に食い込み、皮膚の表面を僅かに破る。途端に口に広がる鉄の味にカラ松くぐもった声を上げた。それを受けてかは分からないが、一松は血を舐めとるようにカラ松の舌に吸い付いてから唇を離した。繋がっていた舌同士が水気を帯びた糸を引いてカラ松の頬に落ちた。
カラ松は乱れる息を整えようと呼吸を繰り返すが、体中にすくぶる熱のせいで時折肩や腰が勝手に跳ねてままならない。股間の中心に熱が集中して痛んでいることからカラ松は自分が発情していることを悟った。
目が覚めたばかりの生理現象だと思いたかったが、舐められ過ぎて腫れた唇や歯を立てられた上にキツく吸われた舌がヒリヒリと痛む度に腰に快感が走り、更に股間を熱くさせることに繋がっているようだ。それは確実に一松とのキスの所為でこのようになってしまったことを現していた。カラ松もまた弟に口内を蹂躙されて興奮していたのだ。
「ヒヒッ…痛ぇ…」
兄の舌を使って口内炎を刺激するという高度過ぎる自慰を披露した一松はというと、恍惚とした顔で痛みに悶えていた。カラ松には理解出来なかった。さっきレモンは沁みるからと拒否していたのに、ディープキスはオッケーな一松の真理が。
涎まみれとなったカラ松の顔を自分の服の裾で乱暴に拭いながら一松は口を開く。
「傷のとこ口内炎になるかもね。…そしたらお揃いだねオニーチャン?」
普段の弟と比較すると楽しそうに紡がれた言葉に、カラ松は内心嫌なお揃いだなと思うのだった。
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