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【とうらぶ】短編小説


主さんから七夕のことを聞いた僕は皆に笹に吊るすための短冊を配り、願い事を書いてもらうように説明する役目を命じられた。頼んだよ乱、と頭を撫でて来る主さんの手が心地よくて、僕は二つ返事で了承した。
短刀や脇差と大太刀のみんなはすぐに願い事を書いてくれた。打刀や太刀の中にはすぐに書いてくれる人はすぐに書いてくれない人もいたけど、他の刀に促されて渋々書いていた。集める係りの特権と言わんばかりにみんなの願い事を覗き見るのは何だか面白い。
まだ書いてもらっていない人・・・と確認すると三日月さんといち兄だった。

「三日月?たぶんへやにいますよ。ほしがっていたほんをあるじさまにかってもらえたそうですから」

三日月さんの兄の今剣さんに尋ねたらそう返って来た。お礼を言って三日月さんの部屋へと急ぐ。もしかしたらいち兄もいるかもしれない。

「三日月さんちょっといい?」

障子越しに話し掛けると三日月さんは朗らかな声で了承の言葉をくれる。遠慮なく入ると確かに三日月さんは本を読んでいたが、そこにいち兄はそこには居なかった。改めて夫婦の契りを結んだふたりはよく一緒に居るというのに珍しいことだ。

「どうしたのだ?乱よ」

三日月さんの声に僕は本来の目的を思い出して短冊を差し出した。三日月さんはそれを受け取って不思議そうな顔をして眺める。僕は三日月さんに七夕の説明をした。

「三日月さんもこれに願い事を書いてよ」
「願い事か。あい分かった。…さて、何て書こうか」

素直に了承してくれた三日月さんは筆を手に取って思案顔をする。悩んでいる三日月さんに僕は気になったことを聞いた。

「ねえ、もし織姫様と彦星様みたいに三日月さんがいち兄と会うことが許されるのが1年に1度だけならどうする?」
「んん?」

三日月さんは短冊に文字を書きながら僕の質問に答えた。

「そうだなぁ…。寂しいだろうが、一期と別れてからここで再開するまでの時間を考えたら1年などあっと言う間だろうなぁ」
「…本当にそう思うの?」
「んん…、そこまで言われるとなぁ…。正直に言ってしまえば、耐えられるかは分からんなぁ。今までは忘れられているから仕方ないと言い聞かせてきたものだからな。もう一度離れることを強要されたら…」

そこまで言って三日月さんは言葉を切った。そして、願いを書かれた短冊を僕に渡して来た。

「書いたぞ。これで良いのだろう?」

笑顔の三日月さんはこれ以上聞いてくれるな、僕にはそう言っているように思えた。短冊に書かれた文字は「皆の願いが叶いますように」と一言そう書かれていた。
三日月さんに悪いことを聞いちゃったなと反省しながら廊下を歩いていると、短冊を書いていない最後の一人であるいち兄とバッタリ会えた。いち兄にも七夕のことを教えて短冊を書いてもらうことにした。

「…いち兄これから三日月さんのところに行くの?」
「そうだよ」
「そう…じゃあ、いち兄から三日月さんに謝っておいて欲しいんだ。僕も後でちゃんと謝るから」

僕の言葉にいち兄は何があったのか尋ねて来たから、正直に全て答えた。

「…三日月さんを不安な気持ちにさせちゃったかもしれない。本当はすぐに謝りたかったんだけど…」
「三日月は怒っているわけじゃないから大丈夫だよ」

いち兄が落ち込む僕の頭を撫でてくれる。それだけでいち兄の言葉が信じられるのだから不思議なものだ。願い事が書き終わったいち兄に短冊を渡された僕は三日月さんの部屋へと急ぐいち兄に同じことを質問してみた。

「いち兄だったら、1年に1度しか三日月さんと会うことが許されなかったらどうする?」

いち兄の歩む足が止まった。でもいち兄は振り返らなかった。

「…そうだね。それを決めた者に直談判に行くかな。それでも駄目だというのなら…」

常にはない低い声に僕の体は思わず固まった。いち兄はまだ振り返らないからどんな顔をしているのか分からない。

「…いや、何でもないよ。三日月の元へ私は急ぐよ乱。もう用はないかな?」
「う、うん…。変なこと聞いてごめんなさい」
「良いよ」

ようやく振り返ったいち兄の顔はいつも通りの優しい笑顔だったのに、それが逆に何故か恐ろしかった。僕が握りしめていたいち兄の願い事が書いてある短冊は少し皺が寄ってしまっていたから、慌てて皺を取るように紙を伸ばす。そこには三日月さんと同じく「皆の願いが叶いますように」と書かれていた。


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もっとポップでキュートな話にする予定だったのに手が滑った所為で、乱ちゃんにはすまないことをしたとは思っている。
願っても何も変わらないのだから仕方ない系三日月さんと願いとは自分で勝ち取るもの系いち兄をテーマに書き出したはずのものでした…。
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