【とうらぶ】短編小説
○ツイの「フォロワーさんの絵から小説を書かせていただく」タグ
○当時仲良くさせていただいていた方の漫画を元に書かせていただいたのですが、もう繋がっていないのでお名前を出して良いか分からないので控えます。
○人間に転生したいちみか現代パロ
○一期だけ記憶有り(若干思考が歪んでる
○三日月が明るい性格ではない
○ジェットコースター展開
**************************************************
「…三日月……?」
すれ違った影に思わず振り返った。たくさんの人影の中、後ろ姿だけでも美しいその姿形を私が見間違うはずがなかった。しかし、彼は私を振り返ることはなかった。すれ違う時に私と目が合ったと思ったが、何の反応も無かった。
(…貴方には記憶がないのでしょうか…)
私たちが元は刀の付喪神であり、互いに夫婦として慕い合っていたことを。歩き去って行く彼の姿を見つめていると後から肩を叩かれる。
「わっ、驚いたか?」
「…鶴丸殿」
何時もならば驚いた振りでもして付き合うところだが、今日はそんな気分にはなれなかった。私の機嫌あまりよろしくないことを気付いたらしい鶴丸殿は、笑顔を収めて何かあったのかと尋ねて来た。
鶴丸殿との付き合いは大学からになるが、彼は私の古めかしい口調に驚いたと話しかけて来た。それからよくつるむようになったわけなのだが、彼にも刀だったころの記憶はないらしいことはすぐに分かった。弟たちもそうなのだが、記憶がなくとも性格は変わらないものだからややこしいことこの上ない。だから、三日月の記憶がないことも想定内ではあったわけだが…。
(…忘れられるというのがこんなに寂しいものだったとは…)
私は心配してくる鶴丸殿に何でもないと返してからもう一度振り返った。もうそこには三日月の姿は見当たらなかった。
そんな殊勝な想いを抱いた数日後、鶴丸がサークルに連れて来た人物に運命を感じずにはいられなかった。
「俺の従兄弟で今年からこの春、この大学に進学して来た三日月だ」
三日月と紹介された青年は頭を深く下げた後に堂々と名前を名乗った。
「三条三日月。よろしくお願いします」
鶴丸曰く、若干コミュ障の気がある弟のような存在の三日月を放っておけなかったそうだ。同じ大学に通う兄の小狐丸は留学をしているらしく、彼に弟の世話を頼まれたというのも理由のひとつらしい。
コミュ障…?あの三日月が?と鶴丸の言葉を疑ったものだったが、コミュ障というよりは人に警戒しているらしいことは分かる。何度か話し掛けようとしたところで距離を取られながら応対された記憶は新しい。
「許してやってくれよ。三日月はさ、あの美貌だろ」
何度か三日月に突撃していた私を見て、鶴丸殿が三日月にフォローを入れたことがあった。
「え?ああ、はい」
「綺麗すぎて学校では遠巻きに見られることが多かったみたいでなぁ…普段は兄の小狐丸によくくっついて行動していたらしいんだが、学校では友人が居なかったらしくてな…」
それが重なって人間不信に近いものになってしまったのだろうか。前世と比べるべきではないのかもしれないが、三日月の性格が異なるのに違和感を感じるのも仕方ないことだった。
それでも三日月と話せないかと何度も話し掛けることを続けていたら、それが本人の気に障ったのかある日三日月から私に話があると接触して来てくれた。三日月は空き教室に私を呼び出したのだ。恐る恐る警戒心を持って私と相対する彼に、前世では抱かなかった加護欲のようなものを感じる。前世の彼は良くも悪くも私より年上で余裕がある刀だったから、この感覚は新鮮だった。
「…粟田口先輩」
「私には兄弟が多いので、一期で構いませんよ」
「…では、一期先輩」
「呼び捨てで。それに敬語もいりません」
私の言葉の度に三日月は何故か苦い顔をしたが、私はそれを見なかったことにして何の話か聞く態勢を取る。三日月はまだ眉を顰めていたが、私は三日月の機嫌を取るように笑いかけた。この青い反応が今の彼が私より年下であり、前世の記憶がない三日月なのだなと実感する寂しさは拭いきれないが。
笑い掛けられた三日月はムッとした顔をした後に、一端私から目線を外した。それから、言いづらそうに本題を切り出す。
「一期は俺を通して誰を見ているんだ」
心臓を掴まれた思いとはこのことか。
衝動のままに記憶のない彼には言うまいと思っていた言葉が気付いたら漏れていた。
「……前世の貴方、と言ったら笑いますか?」
「前世…?」
今世で初めて私の目を真っ直ぐ見つめる彼の瞳には、やはり名前を連想させる三日月が見えた。今の彼は刀ではないというのに、何故打ち除けがあるのかと疑問を抱く。
一歩前に踏み出しても三日月が身を引かないからそのまま目の前に立った。
「やはりそうだ。瞳の中の三日月はそのままだ」
「は、ぇ…、何で知って」
三日月の頬を両手で挟んで瞳を覗きこむ。前世と違い私の方が背が高いから、いつも俯き気味な彼の顔を覗きこまないとこの瞳を見ることが今まで叶わなかった。
「もっとよく見せて下さい。私はその瞳が好きなんです」
「ちょ、待っ…」
三日月が私の両腕を払い退ける。そして困惑の色を携えた顔のままに口を開いた。
「お、お前様はいつもそうだ…肝心な時俺の話を聞いてくれない…!」
私が思わず呆けた顔をすると三日月も自分の言った言葉に更に困惑して顔を紅潮させた。「え?お前様…?」と目を白黒させて口元を押さえている。
「…三日月、今お前様って…」
「!!!ち、違う!!勝手に口に出ていただけで…!」
首をブンブンと振って強く否定した彼はその勢いのまま教室から出て行ってしまった。よほど動揺していたのか、荷物すら忘れて行ってしまっている。私もしばしの間放心してしまったが、それから湧き上がる期待感に心を躍らせる。
「…これは、可能性があるのか…?」
愛しい妻の記憶が戻る、その可能性が。
三日月は私の記憶が戻らずとも良いと言って微笑んで見守ってくれたけれど、やはり私は三日月に思い出して欲しい。そう思う自分のエゴに思わず苦笑するしかなかった。自分は妻のように大らかにはなれない、今も昔も三日月は私の妻だと主張したい。
(取り敢えず手初めに機嫌を損ねた妻のご機嫌取りをしなくては)
それから少しずつ、私に慣れてもらおう。そう考えて彼の荷物を持って三日月の後を追った。
○当時仲良くさせていただいていた方の漫画を元に書かせていただいたのですが、もう繋がっていないのでお名前を出して良いか分からないので控えます。
○人間に転生したいちみか現代パロ
○一期だけ記憶有り(若干思考が歪んでる
○三日月が明るい性格ではない
○ジェットコースター展開
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「…三日月……?」
すれ違った影に思わず振り返った。たくさんの人影の中、後ろ姿だけでも美しいその姿形を私が見間違うはずがなかった。しかし、彼は私を振り返ることはなかった。すれ違う時に私と目が合ったと思ったが、何の反応も無かった。
(…貴方には記憶がないのでしょうか…)
私たちが元は刀の付喪神であり、互いに夫婦として慕い合っていたことを。歩き去って行く彼の姿を見つめていると後から肩を叩かれる。
「わっ、驚いたか?」
「…鶴丸殿」
何時もならば驚いた振りでもして付き合うところだが、今日はそんな気分にはなれなかった。私の機嫌あまりよろしくないことを気付いたらしい鶴丸殿は、笑顔を収めて何かあったのかと尋ねて来た。
鶴丸殿との付き合いは大学からになるが、彼は私の古めかしい口調に驚いたと話しかけて来た。それからよくつるむようになったわけなのだが、彼にも刀だったころの記憶はないらしいことはすぐに分かった。弟たちもそうなのだが、記憶がなくとも性格は変わらないものだからややこしいことこの上ない。だから、三日月の記憶がないことも想定内ではあったわけだが…。
(…忘れられるというのがこんなに寂しいものだったとは…)
私は心配してくる鶴丸殿に何でもないと返してからもう一度振り返った。もうそこには三日月の姿は見当たらなかった。
そんな殊勝な想いを抱いた数日後、鶴丸がサークルに連れて来た人物に運命を感じずにはいられなかった。
「俺の従兄弟で今年からこの春、この大学に進学して来た三日月だ」
三日月と紹介された青年は頭を深く下げた後に堂々と名前を名乗った。
「三条三日月。よろしくお願いします」
鶴丸曰く、若干コミュ障の気がある弟のような存在の三日月を放っておけなかったそうだ。同じ大学に通う兄の小狐丸は留学をしているらしく、彼に弟の世話を頼まれたというのも理由のひとつらしい。
コミュ障…?あの三日月が?と鶴丸の言葉を疑ったものだったが、コミュ障というよりは人に警戒しているらしいことは分かる。何度か話し掛けようとしたところで距離を取られながら応対された記憶は新しい。
「許してやってくれよ。三日月はさ、あの美貌だろ」
何度か三日月に突撃していた私を見て、鶴丸殿が三日月にフォローを入れたことがあった。
「え?ああ、はい」
「綺麗すぎて学校では遠巻きに見られることが多かったみたいでなぁ…普段は兄の小狐丸によくくっついて行動していたらしいんだが、学校では友人が居なかったらしくてな…」
それが重なって人間不信に近いものになってしまったのだろうか。前世と比べるべきではないのかもしれないが、三日月の性格が異なるのに違和感を感じるのも仕方ないことだった。
それでも三日月と話せないかと何度も話し掛けることを続けていたら、それが本人の気に障ったのかある日三日月から私に話があると接触して来てくれた。三日月は空き教室に私を呼び出したのだ。恐る恐る警戒心を持って私と相対する彼に、前世では抱かなかった加護欲のようなものを感じる。前世の彼は良くも悪くも私より年上で余裕がある刀だったから、この感覚は新鮮だった。
「…粟田口先輩」
「私には兄弟が多いので、一期で構いませんよ」
「…では、一期先輩」
「呼び捨てで。それに敬語もいりません」
私の言葉の度に三日月は何故か苦い顔をしたが、私はそれを見なかったことにして何の話か聞く態勢を取る。三日月はまだ眉を顰めていたが、私は三日月の機嫌を取るように笑いかけた。この青い反応が今の彼が私より年下であり、前世の記憶がない三日月なのだなと実感する寂しさは拭いきれないが。
笑い掛けられた三日月はムッとした顔をした後に、一端私から目線を外した。それから、言いづらそうに本題を切り出す。
「一期は俺を通して誰を見ているんだ」
心臓を掴まれた思いとはこのことか。
衝動のままに記憶のない彼には言うまいと思っていた言葉が気付いたら漏れていた。
「……前世の貴方、と言ったら笑いますか?」
「前世…?」
今世で初めて私の目を真っ直ぐ見つめる彼の瞳には、やはり名前を連想させる三日月が見えた。今の彼は刀ではないというのに、何故打ち除けがあるのかと疑問を抱く。
一歩前に踏み出しても三日月が身を引かないからそのまま目の前に立った。
「やはりそうだ。瞳の中の三日月はそのままだ」
「は、ぇ…、何で知って」
三日月の頬を両手で挟んで瞳を覗きこむ。前世と違い私の方が背が高いから、いつも俯き気味な彼の顔を覗きこまないとこの瞳を見ることが今まで叶わなかった。
「もっとよく見せて下さい。私はその瞳が好きなんです」
「ちょ、待っ…」
三日月が私の両腕を払い退ける。そして困惑の色を携えた顔のままに口を開いた。
「お、お前様はいつもそうだ…肝心な時俺の話を聞いてくれない…!」
私が思わず呆けた顔をすると三日月も自分の言った言葉に更に困惑して顔を紅潮させた。「え?お前様…?」と目を白黒させて口元を押さえている。
「…三日月、今お前様って…」
「!!!ち、違う!!勝手に口に出ていただけで…!」
首をブンブンと振って強く否定した彼はその勢いのまま教室から出て行ってしまった。よほど動揺していたのか、荷物すら忘れて行ってしまっている。私もしばしの間放心してしまったが、それから湧き上がる期待感に心を躍らせる。
「…これは、可能性があるのか…?」
愛しい妻の記憶が戻る、その可能性が。
三日月は私の記憶が戻らずとも良いと言って微笑んで見守ってくれたけれど、やはり私は三日月に思い出して欲しい。そう思う自分のエゴに思わず苦笑するしかなかった。自分は妻のように大らかにはなれない、今も昔も三日月は私の妻だと主張したい。
(取り敢えず手初めに機嫌を損ねた妻のご機嫌取りをしなくては)
それから少しずつ、私に慣れてもらおう。そう考えて彼の荷物を持って三日月の後を追った。
