【とうらぶ】短編小説
○ツイの「フォロワーさんの絵から小説を書かせていただく」タグ
○当時仲良くさせていただいていた方の漫画を元に書かせていただいたのですが、もう繋がっていないのでお名前を出して良いか分からないので控えます。
○いちみか
○鶴丸視点寄り三人称文
○見る人によってはいち←つるに見えなくもないかもしれない。(書いてる人にはその意図はない
○ジェットコースター展開注意
*********************************************************
一期一振には本人も首を傾げる妙な癖がある。
御物として同じ蔵に置かれていた時にそれに気が付いた鶴丸がそれは何かの癖かと聞くと、一期は己の手を見つめていて固まっていたから無意識だったのだろうということは手に取るように分かった。
一期は面と向かって話す相手の側頭部を撫でる癖がある。初めてそれをされた時は驚いてしまったものだが、本人は無意識らしいので始末に負えない。女の形をした神なんて一期の癖を受けて自分に気があるのではと思い込んでしまうこともあった。一期の見目は良いし、紳士的であるためそれも仕方のない話ではあるが。
しかし、鶴丸からすれば気になる点はそこではない。側頭部を撫でた後、一期はほんの一瞬ではあるが、暗い顔をするのだ。これではない、この感触ではないと言わんばかりに撫でていた相手への興味を失うのだ。
そしてこの癖は刀剣男士になり、歴史修正主義者たちとの戦いうために本丸に顕現してからも続いた。
「ねー鶴丸さんってさ一期さんと仲良いんでしょ?」
「ん?まあ、長い付き合いだからなぁ」
「あの癖何とかならないの?」
加州の言葉に鶴丸は何で俺に言うと叫びたくなる気持ちを必至で抑えた。その場に居た刀剣男士の眼差しが全て鶴丸に集中して、鶴丸はその視線の所為で穴が開いてしまいそうだと思った。この見て来る視線の数だけ一期の癖の被害者なのだろう。
(俺が言った程度で治るものなら治っているだろうな)
鶴丸だけでなく、彼の弟の平野も治した方が良いと散々言っていたのだが、そう簡単に治るものが癖と呼べるはずがない。鶴丸は「まあ、気を付けるように言っておく」とお茶を濁すことしか出来なかった。
事態が急変したのは中々顕現しないという一振りが本丸にやって来たことが切っ掛けだった。三日月宗近、鶴丸の刀工の師匠の作品であり、天下五剣として名高い刀だ。鶴丸が付喪神として目覚めて間もない頃に会ったことがあるが、刀剣男士として顕在した彼の美しさは鶴丸の記憶に会った頃よりも増しているようだと鶴丸は思う。
三日月と挨拶をした時にまず違和感を感じたのが一期が三日月の髪の毛に触れるのを戸惑ったということだった。兎に角初対面の者に対して確認を取るように触れるはずだが、一期は三日月の髪の毛に触れるか触れないかのところでその手を引っ込めた。
「三日月殿、お初にお目にかかる…」
「…うむ、そうだな。よろしく頼む」
中々素気ない挨拶を終えて、三日月は去って行った。三日月があんなに素気のない態度を取るのは初めて見たと鶴丸は感想を抱いた。それにも驚いたが、一期の方も動揺を隠せない様子で狼狽えているのが鶴丸にとっては驚きだった。
「どうしたんだ一期。君が髪に触れないだなんて」
一瞬癖が治ったのかと思ったが、一期が三日月の側頭部に手を伸ばしていたのは鶴丸も見ていたためそれはないと断言出来た。それならば、触れる直前に一期が自らの意思で触れられなかったということになる。
「……三日月殿の御髪の長さに違和感を感じまして…」
不思議そうに手を見つめる一期はまるで夢の中にいるような声音だった。鶴丸が心配になって一期と名を呼びかける前に、一期が何やら決意した顔付きで三日月が去った方向を見やった。
「三日月殿は私が触れる直前に目線を逸らしたのです…。それにあの悲しそうな瞳…もしかして…」
そう呟くなり、一期は三日月を追いかけて駆け出した。置いて行かれた鶴丸は状況を飲み込めずに、一期の名前を叫びながら蒼い影を追いかけるしかなかった。
鶴丸がやっとの思いで追いつくと一期が三日月に詰め寄っている場面だった。もしかして言い争うに発展するのかと焦った鶴丸はふたりの間に割って入ろうと近付くが、一期が三日月の少し長い一房を優しい手付きでとかすのを見て足を止めた。
「三日月…」
聞いたことのない一期の低い声に何故か鶴丸が緊張してしまうが、それを目の前で受け取った三日月の動揺もまた一入だ。一期は三日月の動揺している姿に目もくれずに言葉を続ける。
「…もしかして、以前は御髪が長かったのではありませんか?」
三日月の目が見開かれた。その様子を見ただけで肯定しているようなものだと断定出来る。
「私はこうして、髪を撫でていたような、」
三日月の長い一房を玩びながら、一期は遠い過去を懐かしむように目を細める。ゆっくりした動作で、三日月の髪を愛でるように丁寧な手付きだった。
「どうなされたのですか…?私は貴方の髪の毛に触れるのが好きだった、はずなんです」
「……」
一期の言葉に三日月は言葉を詰まらせた。一度息を吸って、吐いて、それを繰り返して心を落ち着かせようとしている。一期は三日月が落ち着くまで何も言わず、ただ待っている。一期の瞳はどこまでも優しい色をしていた。
「お前、様…に、もう触れてもらえないと思って、切ってしまった…。その後も、お前様のことを思い出すのが辛くて、この短いままで…」
三日月が自分の髪の毛に触れて、三日月の瞳からほろりと涙が一粒落ちた。それはとても美しい涙で、こんなに美しいものを鶴丸は見た事が無かった。
涙を溢れさせる三日月のを一期は恐る恐る抱きしめた。徐々に力を込めて三日月を抱きしめると、自分の肩口に三日月の頭を乗せた。三日月の涙で肩を濡らしても一期は全く気にした様子は無かった。
「すみません三日月、貴方にこんな辛い思いをさせていたなんて」
「うむ、…うむ…」
抱きしめ合うふたりを見て、鶴丸はふたりの傍からそっと離れた。思い出すのは誰彼かまわず髪を撫でては曇る顔をする一期だ。そんな一期がどうやら探していた髪の持ち主と再会出来たらしい。それが三日月だったことに鶴丸は驚いてしまったが。
(よく分からないが良かったな一期…)
それから一期は誰彼構わずに髪の毛を撫でるようなことをしなくなった。それもそのはずだ。本来その癖を受け入れていた者が見つかったのだから。
本日も仲睦まじく寄り添い会う二振りの後ろ姿を見かけて鶴丸は微笑ましい気持ちになった。
○当時仲良くさせていただいていた方の漫画を元に書かせていただいたのですが、もう繋がっていないのでお名前を出して良いか分からないので控えます。
○いちみか
○鶴丸視点寄り三人称文
○見る人によってはいち←つるに見えなくもないかもしれない。(書いてる人にはその意図はない
○ジェットコースター展開注意
*********************************************************
一期一振には本人も首を傾げる妙な癖がある。
御物として同じ蔵に置かれていた時にそれに気が付いた鶴丸がそれは何かの癖かと聞くと、一期は己の手を見つめていて固まっていたから無意識だったのだろうということは手に取るように分かった。
一期は面と向かって話す相手の側頭部を撫でる癖がある。初めてそれをされた時は驚いてしまったものだが、本人は無意識らしいので始末に負えない。女の形をした神なんて一期の癖を受けて自分に気があるのではと思い込んでしまうこともあった。一期の見目は良いし、紳士的であるためそれも仕方のない話ではあるが。
しかし、鶴丸からすれば気になる点はそこではない。側頭部を撫でた後、一期はほんの一瞬ではあるが、暗い顔をするのだ。これではない、この感触ではないと言わんばかりに撫でていた相手への興味を失うのだ。
そしてこの癖は刀剣男士になり、歴史修正主義者たちとの戦いうために本丸に顕現してからも続いた。
「ねー鶴丸さんってさ一期さんと仲良いんでしょ?」
「ん?まあ、長い付き合いだからなぁ」
「あの癖何とかならないの?」
加州の言葉に鶴丸は何で俺に言うと叫びたくなる気持ちを必至で抑えた。その場に居た刀剣男士の眼差しが全て鶴丸に集中して、鶴丸はその視線の所為で穴が開いてしまいそうだと思った。この見て来る視線の数だけ一期の癖の被害者なのだろう。
(俺が言った程度で治るものなら治っているだろうな)
鶴丸だけでなく、彼の弟の平野も治した方が良いと散々言っていたのだが、そう簡単に治るものが癖と呼べるはずがない。鶴丸は「まあ、気を付けるように言っておく」とお茶を濁すことしか出来なかった。
事態が急変したのは中々顕現しないという一振りが本丸にやって来たことが切っ掛けだった。三日月宗近、鶴丸の刀工の師匠の作品であり、天下五剣として名高い刀だ。鶴丸が付喪神として目覚めて間もない頃に会ったことがあるが、刀剣男士として顕在した彼の美しさは鶴丸の記憶に会った頃よりも増しているようだと鶴丸は思う。
三日月と挨拶をした時にまず違和感を感じたのが一期が三日月の髪の毛に触れるのを戸惑ったということだった。兎に角初対面の者に対して確認を取るように触れるはずだが、一期は三日月の髪の毛に触れるか触れないかのところでその手を引っ込めた。
「三日月殿、お初にお目にかかる…」
「…うむ、そうだな。よろしく頼む」
中々素気ない挨拶を終えて、三日月は去って行った。三日月があんなに素気のない態度を取るのは初めて見たと鶴丸は感想を抱いた。それにも驚いたが、一期の方も動揺を隠せない様子で狼狽えているのが鶴丸にとっては驚きだった。
「どうしたんだ一期。君が髪に触れないだなんて」
一瞬癖が治ったのかと思ったが、一期が三日月の側頭部に手を伸ばしていたのは鶴丸も見ていたためそれはないと断言出来た。それならば、触れる直前に一期が自らの意思で触れられなかったということになる。
「……三日月殿の御髪の長さに違和感を感じまして…」
不思議そうに手を見つめる一期はまるで夢の中にいるような声音だった。鶴丸が心配になって一期と名を呼びかける前に、一期が何やら決意した顔付きで三日月が去った方向を見やった。
「三日月殿は私が触れる直前に目線を逸らしたのです…。それにあの悲しそうな瞳…もしかして…」
そう呟くなり、一期は三日月を追いかけて駆け出した。置いて行かれた鶴丸は状況を飲み込めずに、一期の名前を叫びながら蒼い影を追いかけるしかなかった。
鶴丸がやっとの思いで追いつくと一期が三日月に詰め寄っている場面だった。もしかして言い争うに発展するのかと焦った鶴丸はふたりの間に割って入ろうと近付くが、一期が三日月の少し長い一房を優しい手付きでとかすのを見て足を止めた。
「三日月…」
聞いたことのない一期の低い声に何故か鶴丸が緊張してしまうが、それを目の前で受け取った三日月の動揺もまた一入だ。一期は三日月の動揺している姿に目もくれずに言葉を続ける。
「…もしかして、以前は御髪が長かったのではありませんか?」
三日月の目が見開かれた。その様子を見ただけで肯定しているようなものだと断定出来る。
「私はこうして、髪を撫でていたような、」
三日月の長い一房を玩びながら、一期は遠い過去を懐かしむように目を細める。ゆっくりした動作で、三日月の髪を愛でるように丁寧な手付きだった。
「どうなされたのですか…?私は貴方の髪の毛に触れるのが好きだった、はずなんです」
「……」
一期の言葉に三日月は言葉を詰まらせた。一度息を吸って、吐いて、それを繰り返して心を落ち着かせようとしている。一期は三日月が落ち着くまで何も言わず、ただ待っている。一期の瞳はどこまでも優しい色をしていた。
「お前、様…に、もう触れてもらえないと思って、切ってしまった…。その後も、お前様のことを思い出すのが辛くて、この短いままで…」
三日月が自分の髪の毛に触れて、三日月の瞳からほろりと涙が一粒落ちた。それはとても美しい涙で、こんなに美しいものを鶴丸は見た事が無かった。
涙を溢れさせる三日月のを一期は恐る恐る抱きしめた。徐々に力を込めて三日月を抱きしめると、自分の肩口に三日月の頭を乗せた。三日月の涙で肩を濡らしても一期は全く気にした様子は無かった。
「すみません三日月、貴方にこんな辛い思いをさせていたなんて」
「うむ、…うむ…」
抱きしめ合うふたりを見て、鶴丸はふたりの傍からそっと離れた。思い出すのは誰彼かまわず髪を撫でては曇る顔をする一期だ。そんな一期がどうやら探していた髪の持ち主と再会出来たらしい。それが三日月だったことに鶴丸は驚いてしまったが。
(よく分からないが良かったな一期…)
それから一期は誰彼構わずに髪の毛を撫でるようなことをしなくなった。それもそのはずだ。本来その癖を受け入れていた者が見つかったのだから。
本日も仲睦まじく寄り添い会う二振りの後ろ姿を見かけて鶴丸は微笑ましい気持ちになった。
