【いちみか】壁ドンから再開する恋模様【完結】
一期と三日月の部屋に炬燵がやって来た。
一期は炬燵を始めて認識したが、三日月は恋い焦がれていたかのように高い声を上げて喜んでいた。早速電源を付けた三日月は炬燵布団の中に足を入れて顔の筋肉を緩めた。
「温いなー」
一期も三日月に倣って足を恐る恐る布団の中へと入れてみた。
(…なるほど。暖かい)
現在の本丸は審神者の力で雪が降り積もっている。一期自信も初めての雪とそれが降る外の温度に寒さを覚えて辛いものだった。
寒さが苦手だと公言する三日月が炬燵を気に入っていることは仕方ない話だなと一期は思った。
しかし、だ。
「…三日月」
「何だ?」
「堕落し過ぎではないか?」
炬燵が部屋に来たのは昼頃だが、既に日が落ちようとしているというのに三日月がそこから動く気配はない。炬燵から渋々出るのはせいぜい廁に行く時くらいだ。
「炬燵が俺を開放してくれないのが悪い…」
しれっと言い放つ三日月は内番服の上に青い半纏を羽織っている。顎を炬燵の机に乗せて体を丸め、手まで布団の中に入れている構図は何ともだらしないとしか言えない姿だ。
一期はそんな姿を見ても全く持って幻滅はしないが、このままでは夫婦の営みも満足に出来なそうだと思い三日月を炬燵から引きずり出そうと彼の脇の下に手を差し込んだ。
「ほら、三日月」
「嫌だ」
「三日月」
「お前様の手が冷たい嫌だ」
三日月の拒否の言葉は炬燵から出ることではなく、一期の手の冷たさに対する拒否らしい。
自分が拒否されたことを怒った一期は三日月のインナーの中に手を突っ込み薄い腹筋を弄る。
「ぅひゃっ!?冷たい…!!」
三日月が情けない声を上げようとも一期は容赦しなかった。
「腹が冷える、冷える…!」
「知っていましたか?蜜柑は体を冷やす食べ物らしいですよ。つまり、三日月の腹が冷たいのは私のせいではなく蜜柑のせいです」
「そういう意味では…っ、ぁっ、う、くすぐるな…」
炬燵と共に支給されたみかんのせいにしてゆっくりと脇腹を撫でる。三日月が息を詰めた。
「三日月」
恐る恐る振り返った三日月は口元だけ笑っている一期と目が合う。一期は極めて優しい声音で宣言した。
「夫を蔑ろにしたお仕置きだ」
「あはははは!や、やめっ、そこ弱…っく、ふふ…っぅ、うう~っ!!」
一期がお仕置きと称して三日月の腹を擽ると、三日月は引き攣った笑い声を上げる。時間にしておそよ一分程擽られた三日月は机に身を預けて肩で息をする程に追い詰められた。
「…お前様なんか嫌いだ」
「まだお仕置きが足りないかな?」
「嫌いなんて嘘だ、お前様愛してるぞ」
これ程軽い愛の告白があるだろうか。しかし、お仕置きの擽りを受けたくない三日月は必至だ。
罰が悪くなったらしい三日月は一期から視線を逸らして悪態を吐く。
「…お前様離れてくれ。暑い」
「我儘だな三日月は」
後ろから腹に手を回している一期は三日月を背後から抱きしめているかのような恰好だ。
「…まぁ、こうしてだらけるのも悪くないですな」
後ろから妻の様子を眺める一期は、三日月の顔は見えずともその耳が赤く染まっていることは認識している。
ふむ、と考え込む仕草をした後一期は抱きしめる腕の力を強めた。
「お前様暑いから反対側から暖を取ってくれ…」
「それじゃあ意味がない」
「これにどんな意味があるんだ…」
分からないならそれでも良いですよと三日月の赤い耳に囁く一期の声音は優しいものだった。
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