【いちみか】壁ドンから再開する恋模様【完結】


前半薬研を中心に粟田口派登場あり

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 今日から三日間この本丸は休日だからな!出陣も遠征も無し!そう高らかに宣言したのは審神者だった。あまりの勢いに一期は「はぁ…?」と空返事をすることしか出来なかった。
 一週間毎に交代する近侍の仕事が一期に回ってきた。一期は来週の予定について打ち合わせのために審神者の部屋を訪れて早々にその宣言を聞かされたのだ。
「明日クリスマスだからな…流石にミサに参加しないと…神父様泣いてしまう…」
 審神者は教会の孤児院出身のためクリスマスは教会に顔を出し、ミサの手伝いをしたいらしい。クリスマスやミサが何のことか分かっていない一期には呪文のようにしか聞こえなかった。
 兎に角休みにしたい審神者の希望は理解したため、笑顔でそれを了承する。急いで消化しなくてはならない任務もない。三日くらい構わないだろう。
「承知しました。現世でゆっくりと休んで下さい」

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 審神者を送り出した後刀剣男士たちに三日の休暇を言い渡した一期は一度弟たちが暮らす部屋へと訪れた。クリスマスについて教えてもらうためだった。
 一期よりも早くに顕現した三日月に尋ねても教えてもらえるだろうが、それは一期の高い自尊心が邪魔をして初めから選択肢から外した。
 だからといって他の刀たちに尋ねるというのも憚れるため、弟たちに頼ることにしたのだ。しかし、弟たちに格好悪い姿を見せたいわけでもないため、さり気なく知識を得る。一期が目指したのはそれだった。
 残念ながらその目論見は苦笑いをしている薬研の顔を見て見破られているなと一期は残念に思うのだった。薬研は兄の自尊心に踏み入らずにクリスマスについて説明してくれる。
「大事な人と過ごす日…?」
「元々は日本国以外の文化らしいぜ。家族とかと過ごすみたいだな。日本だと恋人と過ごす日ってことになっているらしい」
 しかし、一期の脳裏には育ててくれた孤児院に顔を出すという審神者を見ている一期にとって、クリスマスという日は家族で過ごす日という認識を持っている。
 元々は家族で過ごす日ならばと弟たちと嫁である三日月と過ごすのも悪くないはずだ。
「じゃあ兄弟でクリスマスパーティーとやらを…」
「しないぞ」
 一期の提案は弟たちの一言で一蹴された。
「いち兄は三日月さんと聖なるあま~い夜を過ごしてよね!」
「どうせ三日月もパーティーに呼ぶつもりだったんだろうけど、三条が煩そうだしな…」
「我々も三日月と兄弟だぞ、家族で過ごすってなっちゃいそうだよね」
「三日月が取られるのは嫌だろ?だったら夫婦で過ごせばいいんじゃねーか?」
 確かに三条がそう言い出す可能性はある。しかし、それならば粟田口と三条でパーティーという手もあるではないか。
 一期がそう主張すると脇差のふたりが溜息を吐いた。
「あと途中でふたりで盛り上がってしまうのは目に見えている。教育に良くない」
「弟たちが幼いのは見た目だけだけど、濃厚なラブシーンを見せちゃうのはちょっと考えちゃうよねー」
 ふたりの言葉に薬研や厚が頷いたのを見て、一期は大人しく口を閉ざすことしか出来なかった。

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「クリスマスパーティーしたかったぞ」
 弟たちに振られ、意気消沈して一期に投げられた言葉がこれである。
 三日月は口をへの字にして一期が持っていたお土産を眺めている。それは一期が燭台切から受け取った夕食だった。
 一期たち以外はクリスマスパーティーをするようで、三日月とふたりで過ごすと伝えたところパーティーのおかずの一部を分けてくれた。
「聞いているのかお前様」
 一期と弟たちが勝手に決めたことではあるのだが、自分とふたりきりで過ごすことを拒否しているかのように聞こえる三日月の発言に一期の米神に血管が浮き上がった。
「三日月」
 一期は三日月の手から食べ物を取り上げて机の上に置いて、三日月の手首を掴んだ。その顔は爽やかな笑顔が浮かんでいる。
 それを見た三日月は口元を引き攣らせた。一期はその三日月の顔色を気にせずに寝室へと歩き出した。
「ぇ、待て、話はまだ終わってないぞ…!」
 三日月はそのまま寝室へと引きずり込まれ、彼が寝室から出ることが許されたのは次の日の昼頃だった。一晩掛けて体力を使い果たした三日月は髪の毛すら整えずに、昨日の夕食になるはずだった冷えた食事を一期と共に食べていた。
「七面鳥食べたかった…」
「何ですかそれは」
 深い溜息を吐く三日月が漏らした単語に一期は目を瞬かせた。
「クリスマスの時のみ食べることを許された鶏肉だ。あれはクリスマスパーティーでなければ食べれない…」
 三日月が今食べている物も鶏肉なのだが、それとは別物なのだろうか。一期の疑問は尽きないため後で薬研に聞こうと決意した。
「……じゃあ、来年はふたりでクリスマスパーティーとやらをしましょう」
「ふたりでか?せめて鶴丸あたりを呼んで盛り上げた方がパーティーらしくなるぞ?」
 三日月は今までクリスマスは本丸でパーティーをすることが普通になっている。それが分かった一期は今日一番の輝く笑顔で牽制する。
「ふたりきりで、です」
 クリスマスは大切な人と過ごす日らしいのだから、家族以外がそこに入り込むのは言語道断ではないか。一期はそんな過激なことを考えていたのだが、それを全く感じさせない笑顔だった。
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