【いちみか】壁ドンから再開する恋模様【完結】


前半鶴丸の登場あり

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 三日月が風邪を引いてしまい、高熱に魘されているのは正直自分のせいだろうと一期は珍しく反省した。
 もうひとつ反省するとすれば、それを馬鹿正直に三条の面々の前で言ってしまったのが悪かったのだろう。一期は三日月の看病の役から降ろされてしまったのだ。
「三条の方々は私が三日月と夫婦であることを快く思っていませんでしたから仕方ありませんな」
 一期は落ち着いた声音で、笑顔でそう言った。その手の中にある湯呑がみしみしと音を立てているのを目の前で見た鶴丸は思わず湯呑に同情した。無機物に同情する日が来るとは…驚いたぜ。鶴丸は思わず息を飲む。
「…因みに三日月が熱を出したのが何故君の所為だと言い切れるんだ?」
「昨晩、風呂上りの三日月を髪も乾かさぬまま押し倒してしまい長時間放置した所為ですからね」
 うん。それは看病役から外されるだろう。看病しようとして熱に浮かされる三日月に欲情して襲ってしまい、悪化させかねないと鶴丸は一期から目線を逸らしながらそう思った。視界の隅で湯呑に更にひびが入ったように見えたのはきっと気のせいだ、鶴丸はそう自分に言い聞かせる。
 三日月が風邪を引いた原因の一端は確実に一期だったのだろうが、ここ数日三日月は再び出現したらしい大阪城の地下の攻略に駆り出されていたため、その連日の疲れが出たのだろう。
 一期も疲れている三日月を襲った反省をしているようだし、何より三日月を心配しているようなので鶴丸は自分の看病の番を一期に交代してやろうかと持ち掛けた。
 これを三条知られたら小言を言われてしまうが、先程様子を見に行った時に三日月が一期に会いたいとうわ言を漏らしていたのを見てしまった。それを見たら一期に傍にいさせてやらなくてはと思うし、三日月の願いなら仕方ないとあの弟想い過ぎる兄弟たちも納得するだろう。
「…本当ですか鶴丸殿」
「ああ、本当だぜ。三日月も君に会いたいようだったからな」
「ありがとうございます…。鶴丸殿は意外と気が利きますな」
「あのな、君、一言余計だぞ…」
 代わってやるなんていわなければ良かっただろうかと鶴丸は顔を歪めた。

 *

 鶴丸の代わりに一期が三日月が寝ている三条の部屋へ訪れると、三日月は静かに眠りについていた。寝息を立てる三日月の額からずり落ちたらしいタオルを手に取り、氷水に浸す。そっと汗で髪が張り付いた額に己の額をくっ付けてみると熱も大分下がったようで、今朝熱に倒れた時よりも安静にしている三日月に一期はそった安堵の息を吐いた。
「ん…お前様…」
 三日月の額に冷えたタオルを乗せると、熱に浮かされてた瞳が開かれた。薄い膜に覆われた打ち除けがゆらゆらと揺れる。
「起こしてしまいましたか」
「…お前様、手を」
 そっと差し出される手を取って一期は「私はここに居ますよ」と微笑む。その優しい笑みに三日月も薄く微笑み返した。
「そうか。お前様が居なくなってしまう夢を見てな」
「それはただの夢です。何も心配することはない」
「そうだな…お前様は俺を覚えていてくれた…何も、俺は失くしてないのだな…」
 そう言って三日月は静かに瞼を閉じる。そのままもう一度眠りにつくのだろうか、一期は汗で湿っている髪を撫でる。
 額に張り付く髪といい、全身に伝う汗といいまるで情事の最中の時のようだなと一期が考えていると、三日月が小さく笑い声を上げた。
「くくく…、流石のお前様も病気の者は襲わんか」
「当然でしょう?悪化したのですか」
「……こうやってまたお前様が看病してくれるのなら、俺は構わんのだがな」
 からかいの意を含んだその言葉に一期は望み通り襲ってやろうかと眉を顰めたが、流石にそれは三日月の負担になるだけだと、馬鹿なことを言う嫁の頭を小突くだけでその場はやり過ごすことにした。
「ははは痛いな」
「いいから寝なさい。早く治したら先の言葉通りにしてあげます」
「それは…治らん方が良さそうだなぁ…」
 怖い怖いと呟きながら三日月はまた眠りに付いた。一期の手を握りしめたままだったため、一期はその場から立ち上がることも出来ずに仕方なく三日月の寝顔を眺めることにした。
 そこへ小狐丸が三日月の様子を見にやって来たわけだが、夢の中に入り込んでいる三日月にはその時の修羅場を知ることは無かった。
 ただ風邪が治った直後に宣言通り一期には襲われるわ、小狐丸に一期と縁を切れと真面目に説得されるわ、終いには鶴丸に泣きながら一期と兄弟の間をもっと取り持ってくれと懇願されて何かあったのだろうなと察したものの、何時も通り曖昧な笑顔を浮かべて流すのだった。
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