恋のクロスロード
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「海……………」
「おい、鳴子。それは海じゃない、水たまりだ」
夏休みは想像していたよりも遥かに厳しい毎日だった。
部活は休みなくあるし、朝から晩までぎっちりの練習メニューだ。
夏のインターハイが近いので当然といえばそうなのだが、無惨にも『夏休みの計画』は亡き物となった。
だが、何だかんだ言って自転車バカの俺たちは、そんな日々も楽しく過ごしていた。
「一年、集まれ」
部室の前で休憩をとっていた俺たちに、二年の筋肉先輩…もとい泉田先輩が声をかけた。
「なんすかー?マツ毛先輩」
「新開さんからの伝言で『一、二年の誰かがこのプリントを顧問に提出しておくように』とのことだ」
「えぇぇ…」
鳴子があからさまに嫌そうな顔をする。
「ボクが行ってもいいんだが…ここは公平に『じゃんけんぽん』で決めようと思う」
「いいですよ〜。俺、じゃんけん得意です」
真波は楽しそうに目を爛々と輝かせた。
じゃんけんに得意不得意があるのか?面倒ごとが嫌いな真波が乗ってくるということは余程自信があるのだろう。
「ぼ、僕はあまり得意じゃないけど…。
よし、がんばるぞ…!」
「しゃーないなぁ、ほなさっさとやりまっせ〜。
はい、じゃーんけーん…」
「アンディ、フランク…ボクは何を出すべきだと思う?」
鳴子の掛け声をかき消すように泉田さんが何かを呟いた。
アン…フラ…?その姿は自らの胸筋に語りかけているように見えなくもない。
「え、マツ毛先輩…ちょっと…」
「そうか…やはり君たちを美しく魅せるためにも、ここは一番力の入るグーを」
「泉田さん、じゃんけんしますよー?」
「はっ!すまない!
…では、じゃーんけーん」
「「「ぽんっ」」」
いつから俺は運の無いキャラになったのだろうか。
一人パーを出して見事一発で負けを獲得した俺は、プリントを握り締めて廊下を歩いていた。
いや、なによりあの筋肉先輩がチョキを出したことに驚きを隠せない。
「うぉっ…!おぉっとっとっと…」
俺が先程のじゃんけんの反省点を模索していると、何やら廊下の先から資料の山がフラフラとこちらに近づいてきた。
「あっあっ…!おわあああああああああ」
そしてちょうど俺の目の前までくると、その山は一瞬にして崩れ去った。
「いったたたたた…」
「…大丈夫か?」
俺は廊下の真ん中で尻餅をついている女子生徒に、仕方なく手を差し出した。
「はっ!?何この少女漫画的展開…!私の高校生活もまだ捨てたもんじゃないわね!」
「はぁ?」
相手は俺の顔を見るなり、よくわからないことを口にした。
「あっごめんごめん!気にしないで!
ありがと、今泉クン!」
ん……?
「どうして俺の名前を知っている」
「えー?今泉クン、女子の間では有名人だよー?
それに、ウチの優香とも仲いいみたいだし?
ウ、チ、の、優香とね!あっ!?べ、別に入学以来ずっとぼっちだった私に出来た初めての友達だから強調してるわけじゃないよ??そこ、深読みしないでよね!」
こいつ、よく口が回るやつだな。
「…ぼっち、だったのか」
「ど、同情の視線はやめて!」
俺の知っている『優香』と言うと、鈴谷のことか?
なるほど、彼女ならぼっちのやつに声をかけるぐらいのことはしそうだ。
「仲良くって…アイツが俺の事、お前に話したのか?」
「え?話したっていうか、この前あの子がアンタに…...
って!ああああああああ!この資料早く持っていかないと、またカレにお仕置きされちゃう!今泉クン、またね!」
「あっおい!」
廊下は嵐が去った後のように静まり返った。あんなによく話せるなら、どうしてあいつはぼっちだったんだ?
というか、話の途中でいなくなるなよ!
この前?鈴谷が俺に、何だ?何のことだ?
「くっそ…気になる……」
すっかり俺の中で薄れてきたと思っていた鈴谷の存在は、この瞬間、さらに色濃く塗り直されたのであった。
「おい、鳴子。それは海じゃない、水たまりだ」
夏休みは想像していたよりも遥かに厳しい毎日だった。
部活は休みなくあるし、朝から晩までぎっちりの練習メニューだ。
夏のインターハイが近いので当然といえばそうなのだが、無惨にも『夏休みの計画』は亡き物となった。
だが、何だかんだ言って自転車バカの俺たちは、そんな日々も楽しく過ごしていた。
「一年、集まれ」
部室の前で休憩をとっていた俺たちに、二年の筋肉先輩…もとい泉田先輩が声をかけた。
「なんすかー?マツ毛先輩」
「新開さんからの伝言で『一、二年の誰かがこのプリントを顧問に提出しておくように』とのことだ」
「えぇぇ…」
鳴子があからさまに嫌そうな顔をする。
「ボクが行ってもいいんだが…ここは公平に『じゃんけんぽん』で決めようと思う」
「いいですよ〜。俺、じゃんけん得意です」
真波は楽しそうに目を爛々と輝かせた。
じゃんけんに得意不得意があるのか?面倒ごとが嫌いな真波が乗ってくるということは余程自信があるのだろう。
「ぼ、僕はあまり得意じゃないけど…。
よし、がんばるぞ…!」
「しゃーないなぁ、ほなさっさとやりまっせ〜。
はい、じゃーんけーん…」
「アンディ、フランク…ボクは何を出すべきだと思う?」
鳴子の掛け声をかき消すように泉田さんが何かを呟いた。
アン…フラ…?その姿は自らの胸筋に語りかけているように見えなくもない。
「え、マツ毛先輩…ちょっと…」
「そうか…やはり君たちを美しく魅せるためにも、ここは一番力の入るグーを」
「泉田さん、じゃんけんしますよー?」
「はっ!すまない!
…では、じゃーんけーん」
「「「ぽんっ」」」
いつから俺は運の無いキャラになったのだろうか。
一人パーを出して見事一発で負けを獲得した俺は、プリントを握り締めて廊下を歩いていた。
いや、なによりあの筋肉先輩がチョキを出したことに驚きを隠せない。
「うぉっ…!おぉっとっとっと…」
俺が先程のじゃんけんの反省点を模索していると、何やら廊下の先から資料の山がフラフラとこちらに近づいてきた。
「あっあっ…!おわあああああああああ」
そしてちょうど俺の目の前までくると、その山は一瞬にして崩れ去った。
「いったたたたた…」
「…大丈夫か?」
俺は廊下の真ん中で尻餅をついている女子生徒に、仕方なく手を差し出した。
「はっ!?何この少女漫画的展開…!私の高校生活もまだ捨てたもんじゃないわね!」
「はぁ?」
相手は俺の顔を見るなり、よくわからないことを口にした。
「あっごめんごめん!気にしないで!
ありがと、今泉クン!」
ん……?
「どうして俺の名前を知っている」
「えー?今泉クン、女子の間では有名人だよー?
それに、ウチの優香とも仲いいみたいだし?
ウ、チ、の、優香とね!あっ!?べ、別に入学以来ずっとぼっちだった私に出来た初めての友達だから強調してるわけじゃないよ??そこ、深読みしないでよね!」
こいつ、よく口が回るやつだな。
「…ぼっち、だったのか」
「ど、同情の視線はやめて!」
俺の知っている『優香』と言うと、鈴谷のことか?
なるほど、彼女ならぼっちのやつに声をかけるぐらいのことはしそうだ。
「仲良くって…アイツが俺の事、お前に話したのか?」
「え?話したっていうか、この前あの子がアンタに…...
って!ああああああああ!この資料早く持っていかないと、またカレにお仕置きされちゃう!今泉クン、またね!」
「あっおい!」
廊下は嵐が去った後のように静まり返った。あんなによく話せるなら、どうしてあいつはぼっちだったんだ?
というか、話の途中でいなくなるなよ!
この前?鈴谷が俺に、何だ?何のことだ?
「くっそ…気になる……」
すっかり俺の中で薄れてきたと思っていた鈴谷の存在は、この瞬間、さらに色濃く塗り直されたのであった。