シュウウウウ…


ガッ！


先輩たちと距離が離れすぎないように目視で確認できる巨人たちを倒していく。


「(なんてやつだ…こいつはまだ訓練兵だぞ？！それなのに巨人と対峙しても冷静でいられるなんて…)」


後ろから先輩たちがついてくる。
いまの考えることはガスの調整だ、スピードを落とさないでいかに仕留めるか。


『奇行種に気をつけてしっかり巨人の動きを見切る、あとは…』


「名前訓練兵！！右前方からくるぞ！！」


巨人のうなじを切り刻みながら呟いていると先輩の声が聞こえた。


ハッとして右前方を見ると


『(あの動き…奇行種か…)』


1体の巨人がいて、そいつはわたしの方を見ると一瞬だけ動きが止まった…と思ったら全速力で壁の方へ向かってしまった。


「まずい！まずいぞ！！あっちは避難住民が集まっている！！」


ハッとして先を見る。


遥か先、壁際のところには大勢の住民がいた。


『させない』


ガスを噴出させながらアンカーを建物に刺していく。周りに巨人はいない。なら目的はあの巨人に絞って…もっとスピードを上げなきゃ…


ガスをもう少し蒸かしてあいつに追いつく。


「クソ…俺たち精鋭班でも追いつくどころか距離をあけられる一方なのにあいつは何故あそこまで動ける！」


「首席だからって巨人と対峙するのは初めてなはずなのに！あんなに動けるなんて…」


『捉えた！』


ワイヤーを伸ばせば届くところまで詰めた。


先ずは巨人の速度を落とすために足を…いや、このままの速度で突っ込んだら住民まで被害がいく。それならやる事はひとつ、


ーうなじを狙うー


ズバッッッ


うなじを削ぎ落とした勢いでそのまま一緒に倒れる。


『ハァ…ハァ…』


さすがにガスを蒸かしすぎたか…？ガスの残りを確認しそろそろ補給しなきゃと思っていたら駐屯兵精鋭班が追いついてきた。


「名前訓練兵！！なんでそんなに速く動けるの！！」


「よくやった！」


先輩たちは頭をガシガシと撫でてくる。


カンカンカンカン


撤退の鐘だ。


「撤退だ！ガスを補給しろ！カベを登るぞ！」


『先輩！前衛の撤退を支援してきます！』


「あっ！おい！」


先輩たちの言葉を無視し前衛に向かう。


エレン、ミカサ、アルミン、みんな無事だよね…？


ガスを補給したからか立体機動装置も調子がいい。急いで見晴らしのいい高い建物にうつるとみんなは屋根の上でオロオロしてるばかりだ。


『なんでみんな動かないの…？』


本部の方を見ると巨人が群がっているのが見えた。


『まさか…籠城してるってこと？！！？』


みんなの顔は絶望の色で染まりきっていた。


ふと遠くに見覚えのある顔が見えた。


『あれは…アルミンと…ミカサ…？エレンがいない…』


「僕たち…訓練兵…34班……エレン・イェーガー以上5名は自分の使命を全うし、壮絶な戦死を遂げました……」


アルミンの悲痛な声が届く。


『このままじゃミカサが暴走しかねない…』


わたしはミカサが動く前に行動を起こす。


ガスを補給しといてよかった…このまま本部へ向かおう。


誰かひとりが先導をきらないと不安とストレスで誰がどう動いてもおかしくない。


シュゥゥゥ…とガスを蒸かしアンカーを交互に打っていく。


本部に近付けば近付くほど巨人が群がっているのがわかる。


「やめて！！お願い、離して！！！！」


目の前で巨人が大きな口を開け兵士を喰らおうとしていた。


『させないよ』


巨人の腕を狙い刃を振り下ろす。


そしてそのまま巨人の手の中にいる兵士を担ぎ本部まで移動する。


「ありがとう！！貴方は…」


『いいから中にいて！』


兵士の背中を足で押し込みそのまま外に出る。みんなが近くにいても逆に動きづらくなってしまう。


それに腕を落としただけで巨人はまだ仕留めてはいない。


こいつらはうなじを削ぎ落とすまで何度でも食らいついてくる。


巨人の目と同じ高さにつく。


『そんなに人間っておいしいの？わたしには理解できないけどな…』


目の前の巨人は大きな口をあけてわたしを食べようとしてくる。


『知能がないっていうのは残念だね、勝てる相手と勝てない相手の区別がつかないんだから…』


巨人のおでこに向かってアンカーを放つ。
ワイヤーを巻取りながら両目を潰し、勢いで巨人の頭に乗る。


周りを見ると本部に群がっていた巨人がわたしに狙いを定めたのか近寄ってくるのがわかった。


『あなたは早く仕留めてあげなきゃね』


そう言い、うなじに向かって刃を振り下ろす。