「あ、あの…」



「はい」



テントから出ていく少年を見送り、園長先生が僕を振り返る。




「あなたは…その……花音ちゃんの……」



「はい、恋人…ってやつです」



「ま、まぁまぁ…そうでしたか。あの小さかった花音ちゃんがこんな素敵な方と…」


まるで自分の子の事のように嬉しそうな園長先生。



「花音ちゃんから聞いているかもしれませんが……

あの子はずっと…寂しい世界で育ってきました。
親に拒否されて、愛を知らず、愛を求めて…ずっと…」




「…はい。彼女から少しだけ」




「あの子…泣かないでしょう？


…泣いちゃいけないって…思ってるんです。


泣いたら…


弱くなるから。


自分は


強くいなきゃいけない。



きっとそれが



彼女が彼女自身を守る術だったから」





寂しさと戦う



術…





『っ私は……私は泣いたり…しない…』




花音の笑った笑顔の裏にある…



苦しみ…



「でも、少しだけ…安心しました。」



「安心？」



「今日…貴方に救われてきた時…あの子の心底ほっとしたような、安心したような顔を見て…思ったんです。

ああ…やっと……心を開かせてくれる人と出会えたんだなって。



保科さん…」




「はい」



「どうか…あの子の鎧を…取り払ってあげてください。


あの子が、あの子らしく…


笑っていられるように」





私は1人で大丈夫





1人でだって




生きていける




誰かに頼らなくても




強く



強く……




でも貴方と出会って




貴方に惹かれて



私は……






弱い自分がいる事に気づいた





気づいてしまった…