「…あかん…寂しすぎて死にそうや。


助けて、小此木ちゃん…」



「いや…今見送ってきたばっかりですよね！？」



モニター室のデスクでへばってる僕に小此木ちゃんが呆れたようにため息。



花音が2日もおらんとか……



無理…



あの笑顔が僕のエネルギー源やのに…




「もう、早く仕事してください！書類の山ですよ！」



「………はぁ…」











「花音ちゃん、お久しぶりね」



「先生、ご無沙汰してます」



シスターの格好をした老女に私は頭を下げる。



先生は、私が5歳で預けられてからずっとお世話をし、育ててくださった方だ。


今はこの孤児院の園長先生をされている。




「今年もお願いしますね、南野先生」



「先生に先生って呼ばれると、なんだかむず痒いですね」



「ふふふ」



先生について部屋に入ると、ふと図書室の中に誰かいる事に気づく。


6.7歳ぐらいだろうか？


男の子が本を1人で読んでいた。




ふと外を見ると、ほかの子は外で遊んでいる……



何故か少し気になって彼を見つめていると、先生が私に声をかけた。



「わたるくん、ね」



「わたるくん？」



「先月うちに入った子なんだけど…なかなか皆と打ち解けられなくて、いつもあそこで本を読んでるのよ」



「そう、ですか…」



そのどこか寂しげな姿が……昔の自分とかぶってみえた。



「花音ちゃんもよくここにいたわよね」



「はい…ここで、医学に興味を持ちました」



「立派なお医者様になられて…本当に凄いわ」



「いえ…まだまだです」



寂しかったあの頃……


この世界でたった1人だと…孤独だった時間。


どんなに先生が優しくても、親切にしてくれても……


何故か寂しかったのを覚えている。



まだ



お母さんが迎えに来てくれると信じていたあの日々……