「おごってもらって、ありがとう」


圭介君とお店を出る頃には夜空に月が出ていた。


「礼言うのはこっち。とりあえず来週のテストはなんとかなりそうだ。」



「お役にたててよかったよ」




「なぁ六花」



「ん？」




「あの紙の事だけどよ…やっぱりマイキーには話したほうがいいんじゃねぇか？」




「…あ、ああ…う〜ん…」




「お前の相談ならあいつは喜んで聞くぜ、絶対」




マイキーは優しいからきっと圭介君が言う通り、きっと話を聞いてくれると思う。



でも



「でも、これは私の問題だし。なんとかしてみるよ。みんなやマイキーをこんな事に巻き込みたくないんだ…」



そう言った私に圭介君は軽くため息をつく。



「人を頼らない。」



「え？」



「そういうとこも…やっぱあんま変わんねぇのな」



「そ、そう？」



「いつも1人でなんとかしようとするよな、昔から。もっと頼ってもいんだぜ。…ダチをさ」



圭介君の言葉に、少し心が暖かくなる。



私は心配してくれたみんなを忘れてしまっていたのに…


私をまだちゃんと友達だと思っていてくれた事が、嬉しかった。




「ありがとう。どうにもならなかったら、頼らせてもらうよ」



「どうにもならなくなる前に言え」



「ははは！そうする」



笑った私に圭介君もフッと笑うとポンッと私の頭に手をおくと、くしゃくしゃっと撫でられた。



「わわわ！髪ぐちゃぐちゃなるよ〜！」



「いいだろ、帰るだけなんだか……？」



「も〜…ん？どうしたの？」



急に圭介君が後ろを振り返る。




「……いや…なんでもねぇ。六花送ってく」



「え？もうすぐそこだしいいよ！圭介君逆方向でしょ？」



「いいから、行くぞ」



「？？う、うん」




私の横を通り過ぎて先を歩く圭介君。



どうしたんだろ？



圭介君が見ていた方向を私も見る。


でも何もなくて…ただ夜道に街頭がてらされているだけだ。






「送ってくれてありがとう。」


「おお」



マンションの前まで送ってもらった。



「六花…お前、気をつけろよ」



「え？」



気をつけろ？



圭介君の言葉に私は、？と首を傾げた。



「どういう意味？」



「…いや、とりあえず、注意しろよって話だ」



そう言うと圭介君はチラッと自分の背後に視線をおくる。




「わ、わかった？」



「夜もあんまり1人で出歩くんじゃねーぞ。

じゃ、俺集会あるから行くわ」




「？？ま、またね！」




「おお」




ヒラッと手を上げて歩いていく圭介君の背中を見つめる。




「…へんな圭介君…」