第2章

夢小説設定

この小説の夢小説設定
ヒロインの名前
ヒロインの苗字

「ほらよ」


「あ、ありがとう!」


本屋を出て近くの公園のベンチに圭介君と座ると、自販機で買ってきてくれたりんごジュースを手渡してくれた。


「びっくりしたよ。全然誰だかわかんなかった」


私の言葉に圭介君は笑う。


「だろうな。よく言われる。まぁでも…もうだぶれねーからな」


「だぶる?」


「俺、だぶってて、中2もっかいやってんだよ」


「…………え、中学って義務教育、じゃ」


だぶるとかない、よね?


「さすがにお袋に泣かれたわ。中学ダブるなんて聞いた事ねぇよ、って。

だから、もう次はねぇんだわ」



「圭介君、お母さん思いなんだね〜」



「誰がマザコンだよ!」



「いや、言ってないし…」



ふと彼が本屋から買ってきたであろう物を見つめる。


「ちょっとみてもいい?」


「ん?おお」


許可を得て、紙袋の中身を出す。


小学生問題集総集編…



「…圭介君…買い間違ってる?」


「あ?間違ってねぇーよ、担任からまずはこれやれって言われてんだから」


「そ、そっか…」


なるほど…これは相当やばそうだな。


「それよりお前、獣医になりたかったんだな」


「え?あ…う、うん。まぁ。夢だけど…昔から動物が好きで」



「一緒だな」


「へ?」


圭介君はふと公園を散歩していた犬を見つめる。



「俺も動物が好きで…だから将来はペットショップで働きてぇ」


圭介君の夢、の話に私は瞳を開く。



圭介君には…夢があるんだね…



「きっと、なれるよ。」


お母さんを悲しませたくなくて、必死に頑張る彼なら…きっと夢を叶えられる。


そんな気がした。


「笑わねぇんだな」


「どうして笑うの?」


「いや…俺みたいな不良がさ、頭もわりぃし、そんな夢、語ったらだせぇ、って言うやつもいる」


「夢をバカにする奴のほうが、ずっとダサいと私は思うけど」


そう言った私に圭介君は少し驚いたように瞳を開くとフッと笑う。



六花は、変わんねぇな。そういう真っ直ぐなとこ…」



「え?そ、そうかな…」


私は全然真っ直ぐなんかじゃないよ…

現に父に逆らえなくて、自分の夢を諦めた人間だ…


「叶えようぜ。俺も、お前も」


ニカッと笑った圭介君。


「…圭介君、よかったら、なんだけど…

勉強、私が教え、ようか?」


私も勉強という勉強は大学依頼だから、正直偉そうには言えないけど…

小中学生の勉強ぐらいならなんとかなる。



「いや…そりゃあ、お前、有難い、けど…
小学生の時もよく教えてもらってて、すっげぇ分かりやすかったしな…」


いや、でも…とブツブツ言う圭介君。


「何か役にたてたら嬉しい。…私、勉強ぐらいしか出来ることないし」


「…だな。空手も超絶下手だったしな」


「そ、それはもう言わないで…」


恥ずかしいから…



「んじゃ、ま…お願い、するか」



ポリッと頭をかいた圭介君に、私は笑う。


よかった。



「場地さん!」


「?」


「おお、千冬」


公園の外から圭介君を呼ぶ声がして、振り返るとそこには東卍の特攻服を着て、バイクに跨る金髪の青年の姿。


千冬、と呼ばれた彼はバイクを止めるとこちらにやって来る。


「探しましたよ!もうすぐ集会っすから特攻服、持ってきました」


「おお、気がきくじゃねぇか千冬」


「あざっす!…って…場地さん…もしかしてデート中、でした?」


チラッと千冬君が圭介君の肩越しに私を見た。


「あ?ちげぇよ。…千冬、間違ってもマイキーの前で同じこと言うなよ」


「え?総長っすか?」


圭介君は結んでいた髪をといて、くしゃりと七三分けをくずすと特攻服に腕を通す。


六花送ってくか?」


「ううん!集会なんだよね?私もマイキーに呼ばれてて、後からエマと行くね」


「そうか。じゃあ例の話はまた今度な」


「うん」


「気をつけて行けよ」


「ありがとう、また後でね」


私は圭介君に手をふると、千冬君がペコっと私に頭を下げてから彼を追いかける。



仲良しなんだなぁ…







「場地さん、あの人誰っすか?」


「あ?」


バイクの背に場地を乗せて走りながら千冬が問う。



「総長の事、マイキーって呼んでたんで。
美人でしたね」


「…千冬、お前それマイキーの前で言うなよ」


「場地さんの彼女かと思いましたよ」


「ばあか、ちげぇよ。あいつは……そうだな。」


場地は少し黙ると遠い目をした。



「俺の…初恋の相手、ってやつだな」


「え?なんすか?」


「なんでもねーよ!前見て走れ」


「は、はい!」



たとえ届かぬ想いでも



君が幸せなら



僕は幸せだ。



だって



君が誰より




好きだから


21/65ページ
スキ