「あ〜…疲れた」


倒れ込むようにスーツのままダイブする。


今日は忙しかった。


警察、裁判所にも行って、山のような書類作成。


いつも思うがこの組織の大きさで弁護士が私一人って、おかしくないか？

この仕事量、拘束時間、ブラック企業だ！と労働基準局に行ったら聞き入れてくれるだろうか？

否…まずそもそもブラック通り越して真っ黒けの組織だ。
労働基準法もあったもんじゃない。



「あ〜足が痛い。汚れたスーツ洗わなきゃ〜…」


ゴロリと仰向けになってふと自分の口元に触れる。




【⠀ガキかよ…】



触れた場所が…まだ熱を持っているようだ。



「って！何思い出してんだろ！」


やめやめ！と起き上がる。


どんなに優しい1面を見せても、彼はあの極悪組織のトップにあるのは変わらない。


彼らに苦しめられた人を弁護した身としては一緒に働いていても、決して仲間だ、なんて言いたくない。


でも…


世間から見たら私も一員でしか、ないよね。



はぁ、とため息ついたのと同時、カバンにあった携帯が音を鳴らす。


時計を見上げれば時刻は11時。


ディスプレイを見るとその名前に瞳を開く。



ボス。



さすがに警察にも出入りする事もあり万が一を考えて、フルネームで名前を入れる事はしていなかった。


で、考えたのがボス、だ。


まぁ間違っちゃいないよね。
一応私からしたらボスな訳だし。


「こんな時間に何？」


もう仕事は勘弁してほしい。

が、彼から電話がくるのは珍しい。

いつもは組員の誰かだったり、幹部でも稀咲であることが多い。

彼からかかってくるって事は、急用なのだろう？


私はすぐに電話にでた。