「……帰ったか」



空になった部屋に俺はコツンと扉に頭を預ける。



これでいい……



これで



よかったんだ。





これ以上…もう……



俺の傍に六花を近づける訳にはいかない。




俺の闇が




あいつを飲み込む前に…





これでいい




そう思ってるのに




分かってるのに……






胸が





苦しかった。





もう何もかも捨ててきた




全て




こんな感情も……




でも






『マイキー』





抑えられなかった




気持ちが溢れ出して






苦しくて





苦しくて……





どうしようもなく





愛しくて……





どうしようもなく





六花を愛してる自分が





止まらなかった。







「ボス」




背後から掛かった声に振り返ると、九井がいた。




「…道成寺六花は、帰りました」




「……ああ」




「これ」




九井が俺に差し出してきた物に瞳を開いた。





見覚えのあるシルバーのチェーンにつけられた細いリング…






『こんなの……もういらねぇ。意味ねぇから』





これは……あの日…



六花や仲間と決別した日に投げつけた……俺達にとって大切な物。







『マイキー…いつか…大人になったら…

私と結婚してください。


私が……全力でマイキーを守ってあげる』








いつか誓いあった約束……




当たり前にそうなると




信じていた。






「まだ…持ってたのか……」





手のひらに乗せた指輪をぎゅっと握りしめて、泣きそうになった。




六花はずっと……



俺を救うために、守るために…




たった一人で……



「……またお前を……傷つけちまったな」




でも



もうこれが本当に最後だ。




「……あいつ…諦めてないって、顔してたぜ」



「え？」



「まだ諦めてない…俺にはそう見えた」




「………」




「ボス…あの女はあんたが思うより、ずっともっと強い」



「……分かってる。俺なんかより六花はずっと強い。強くて真っ直ぐだ。


だからこそ………


傍にいたらもっともっと傷ついちまう。


傷つけちまう。



苦しめちまう。



六花には





幸せでいてほしい。」




ただ




笑っていてくれたら……



俺は……