「………」



救急車の中で静かに眠るけんちゃんの顔を見つめる。



「…エマ…けんちゃんの事…お願いね」



そう言って、ツ…と涙が頬を伝う。




「マイキー……けんちゃん……死んじゃったよ……けんちゃん……いなくなっちゃったよ……っなんでっ……」



次から次に溢れ出す涙に顔を覆う。




ここにいてくれないの…っ…



マイキーっ…





「マイキーっ！！」




そう叫んだのと同時……




少し遠くから、こちらに近づく排気音に私はハッとする。



この音を………




私はよく知っている。






『ほら、乗れよ』





マイキーの………バブの…音……




まさか…




私は救急車から降りると、遊園地の方へ走り出した。










「！な、なに…これ…」




遊園地の駐車場に集まる大勢の人間。



バイクの激しい排気音…




千咒率いる梵…



黒い特服の…あれは寺野サウス率いる六破羅単代。



そして……



バサりと揺れた白い旗に書かれた関東卍會の文字。


その先頭にいた人物に私は瞳を開いた。





マイキー………






『二度と……お前には会わない。


だから…二度と……


俺の前に現れんな。


もう……思い出すな。


俺を……』





あなたを忘れた日なんて




あの日から




一度もなかった。



忘れる事なんて




できるはずがない。




会いたくて



会いたくて…




私が貴方を忘れていた間




マイキーも



こんな気持ちだったの…？





「三天戦争おっぱじめんぞ！！！」


「全員ぶっ殺せ！！！」





男達は叫ぶと一気にぶつかり合う。



なんでこんな時に…！



「六花！」



「千咒！」



男達の間から千咒が私の元に来る。



「千咒！マイキーが！」



「分かってる！でも今は危険すぎる！この場から離れてろ！」



「でも…」



マイキーがすぐ傍にいるのに…




「六花の気持ちはわかる！でもこれは…もうガキの喧嘩じゃない！
…死人がまた出るかもしれない…」



「！」



千咒の言葉に、私はマイキーを振り返る。



マイキー……痩せてる…



顔色もよくない。



目の前でおこっている喧嘩をただ傍観している、虚ろな瞳………


この数年の間、マイキーが見てきたこと、やってきたこと…それが映し出されているようだった。




「マイキーは必ず引きずり出す。」



「千咒…」



「だから、大人しく安全な場所で待ってろ」



ここにいても…


千咒達の迷惑になる…



「…分かった…気をつけてね」