また



全て忘れてしまえば




楽になるのかな？




でも





忘れたくないんだよ…




この苦しくなる気持ちすらも…




私は




忘れたくない。






「またここにいたのか」




降り始めた雨…



圭介君のお墓の前に佇んでいた私にすっ、と傘がかけられた。



「風邪ひくぞ」



「…ありがとう、千咒」



自分も濡れるのは嫌いなのに…



私は彼女から傘を受け取ると千咒が濡れないようにピッタリくっついて傘を傾けた。



「相合傘だね」



「相合傘？」




「うん。大好きな人と一緒の傘に入る事、かな」



ちょっと違うか…




私は苦笑いしたが、千咒は何故か凄く嬉しそうに瞳をキラキラさせている。




「それは、ジブンと六花が大好きな仲って事か！？」



「え！？あ…う、うん。そうだね。
千咒の事大好きだし」



「ジブンも！六花ー！」



千咒が私にぴょんと跳ねて抱きつく。




「わわわ！濡れちゃうよ〜」



「六花となら濡れてもいいや！」



「ふふ、何それ。…そういえば、私に何か用事だった？」



「ん？ああ…忘れてた」



千咒は思い出したように手を叩く。




「花垣武道が六花に会いたいらしい」



「え？」




たけみっち？




首を傾げた私に千咒がさっきあった出来事を話してくれた。




けんちゃんの店に来ていたたけみっちは、六破羅単代の総長と出くわして争い事に巻き込まれたらしい。
そこに梵も加わり抗争になりかけたが、警察が駆けつけ回避できたとの事。





「そうだったんだ…たけみっちは大丈夫だったのかな」




「あいつは無傷。武臣が梵に勧誘したいって言ってたけど、どっちのチームにも興味ないらしい。」



「え？」







『俺は！関東卍會、佐野万次郎をぶっ飛ばしたい！！』






「…だってさ」




「！たけみっちが、そう言ったの？」




私の問に千咒は頷く。




まさか………



たけみっち…





「ま…ぶっ飛ばすはおいといてさ、あいつ六花と一緒で佐野万次郎に会いたいみたいだな」



「………」