「私は…もう貴方には負けない！

私を撃てるなら…撃てばいい！

稀咲鉄太！」



「っ…」




真っ直ぐな……瞳……



俺が嫌いな……




その瞳……










『ねぇ知ってる？この前の全国模試で1位とった子』



『え？稀咲君じゃないの？』




道成寺六花を初めて知ったのは…



今まで1度だって負けた事がなかった全国模試で、俺が2位になった時の事だ。



ずっと1位を貫いてきた俺の……



初めての敗北。



でも、悔しい、とは思っていなかった。



思ったのは…



ああ、こいつも多分…



俺みたいに異端で、周りから浮いた存在なんだろう。


孤独で……



いつも一人で……




『あ、あの子あの子。特進クラスの道成寺六花ちゃん！』


ふとクラスの女子が通路の方を指さした。


その視線の先を追う…



え…………



そこには…



『道成寺さん！1位おめでとう！』



『さすがだよ！！』



『A小の星！』



沢山の人に囲まれて…恥ずかしそうに微笑む女…



なんだ…あれ…



『道成寺さんって凄いよね〜あの道成寺グループの一人娘で、頭もよくて性格も凄くいいって評判だよね。
まさに才色兼備？』




『へ〜！…はは、稀咲君とは大違いだね』



『しっ…聞こえるよ〜』




何かが…



ぐらりと崩れ落ちた。



俺の中の……



何か…



この気持ちは…なんだ？





嫉妬？



いや違う……



嫌悪感だ…





『稀咲、鉄太君？』



あの女は…いつでも笑ってた。



何不自由なく…




大事に大事にされて




悪いことなんて考えてもいません、って顔で…





『毎年1位とってる子が同じ塾だってさっき聞いたんだ』



『………』




『また来年も一緒に頑張ろうね』





吐き気がする。



なんだその笑顔は



なんだその生暖かい空気は……





無性に…




壊してやりたくなる。




その笑顔を……



中学にあがって、道成寺六花がマイキーの女なのだと知った時…


またか、と思ったのと同時に、チャンスだと思った。



あいつが大事にしているマイキーを壊したら…



マイキーに裏切られたあの女を近くで見ることが出来たなら…



俺の野望とは別に…


目標のようなものができた。



ボロボロに傷つけばいい。



そう思っていたのに……






『けんちゃんは私達がなんとかする！だからマイキーは、』




それなのに…




この女は…何度も…




『マイキーを人殺しになんてさせない！！！

絶対に！！！！』




何度も……





『稀咲鉄太…


お前を…クビにする。』




何度も何度も何度も…




『声が震えてる。怖いの？』



何度傷つけても、また這い上がってくる。



ただの弱い女だと思っていたのに…



何度も俺の心を……



かき乱す。