『俺を…捨てたの？』



『……めんどくさ』



『え……』



『あんたは…私の子じゃないの。


あんたは…前の旦那がフィリピンの女と作った連れ子。

どうしようもねぇ男だったよ。


結局、チンピラに刺されて死んじまった。



わかる？あんたは……よその子。



血が繋がってないんだよ』





それって……つまり…



エマとも…マイキーや真一郎お兄ちゃんとも……血の繋がりが…ない…という事？





「…俺は……最初から…1人だった。

孤独だったんだ……」



「！イザナ……」


私の知らなかった…


イザナの過去。



「バカだよな。ずっと……俺は知らずに…いつか来てくれるって、迎えに来てくれるって…

1人…信じてたんだから。

家族なんだから…当たり前だって。


でも…家族ですら…なかったんだから」



「っ…」




苦しげに眉を寄せたイザナの表情に…胸が…張り裂けそうに苦しくなった。



母親だと、家族だと信じていた人から伝えられた真実……



それはあまりにも……



悲しい真実…




「真一郎は…最初から知ってたみたいだった。」



「え？」



「知っていて…黙ってた。血の繋がりなんて関係ねぇだろって、俺とお前の関係は変わんねぇって……」



イザナがぎゅっ…と拳を握る。




「変わんねぇ、わけ…ねぇだろうが！」


「！」


「ずっと信じてたもんがこわれて…空っぽになった気持ちが…最初から真一郎に出会わなかったら…こんっなに…苦しまずにすんだのに……」



震えたイザナの声に…私は何も言えない。




「真一郎が会いに来てくれて、沢山の事を教えてくれた…喧嘩の仕方も、バイクの乗り方も…楽しくて…こんな人が俺の兄貴なんだ、って……誇りに思ったし、嬉しかったんだ。

だから……真一郎が大切にしていたブラックドラゴンを、俺が継ぎたかった。

守りたかった。


でも……」







『いつか…お前にって思ってた。

ありがとう、イザナ。


兄弟で繋いで行くのが夢だった。


ブラックドラゴンは……お前…



それから……



万次郎に継がせたいから』






「真一郎は……俺だけの兄貴になってくれなかった」


「！」



そ、それって……もしかして…




「マイキーがいるから……あいつのせいで……俺は苦しんだ。」


「っ！それは違う！イザナ！」



マイキーは何も知らない！




「違わねぇよ！！真一郎、ブラックドラゴン……全部あいつが奪っていく。


でも……1番………何より許せなかったのは………



六花を…俺から奪った事」