突然名前を呼ばれて私は驚く。


な、なんで私の名前…


「そ、そう…だけど…」


「！だよね！道成寺六花だよね！」


「う、うん…」


戸惑いがちに頷く私に女の子の顔がパァと明るくなったかと思ったら急にガバッ！と抱きつかれた。


「やっぱり六花だぁぁ！！」


わわわわわ！む、胸っ！


柔らかいビックなお胸に男でもないのに私の顔が赤くなる。


だ、誰！？


この子！


私の記憶にはない子だ。


こんな可愛い子、忘れるわけがないし。


でも向こうは私を知っている。



「あ、あの…」


「あ！ごめんね！六花に会えたのが嬉しすぎてつい！」


ニコニコ笑う女の子。


彼女は一体…



「覚えてない？エマだよ！佐野エマ！」



エ、マ…？



佐野



エマ…


あれ？



この名前…



どこかで…





【エマは…俺の妹だ】



嘘



でしょ？


なんで？


どうして？


エマ、なんて珍しい名前はそうそうない。


しかも佐野。



彼女は



マイキーの妹？


で、でもどうして私の事。



私は彼女とも、もちろんマイキーとも面識ない、はず…



戸惑う私の顔にエマは少し悲しげに眉を下げる。



「本当、だったんだ。記憶、無くしたって」


「え…？」



記憶を、なくした？



「ちょ、ちょっと待って！記憶無くしたって、私が！？」



「うん、皆から…マイキーからもそう聞いたよ」


「なっ！！ま、マイキー！？」


全然意味が分からない。

何がどうなってるの？


「あ、マイキーの事はさすがに覚えてる？」


「あ、いや…」


マイキーは知ってる。


だけど中学生の私は知らないはず。


頭が混乱している。


難しい顔をし始めた私にエマが手を握ってきた。


「ねぇ、六花！今日時間ある？」



「え？あ…うん、まぁ」


「お茶しようよ」