「あ、そうだ。千冬君…最近マリナとはどう？」



2人で傘をさしながら並んで歩く…



ふと私は思い出したように千冬君に聞いてみた。


色々ありすぎてすっかり忘れていたが、2人の恋の行方は一体どうなったんだろう…



「え！？ど、どうってなんすか！どどどどどうもなってないっすよ！」



「千冬君、動揺しすぎ…」



「あ…いや…なんていうか…凄くいい子なのは、分かってるんすけど……

あまりにもガンガンこられ過ぎて…」



「あ〜…ははは…なんとなく分かる…千冬君に夢中なんだねぇ」



「はぁ……」




「まぁ1回くらいデートしてみたらどう？なんならたけみっち達誘って皆で………あれ？」




「？」




私はふと足を止める。




「……あれって…たけみっち？」



「え？……あ…」




そこには、雨の中公園で傘もささずに一心不乱にタイヤを殴りつけているたけみっちの姿。




…たけみっち？




「あ、六花さん！」




私が公園に入ると後ろから千冬君もついてくる。



やっぱりたけみっちだ…



でも一体何を……



「たけみっち？」



「！」




声を掛けるとたけみっちがビクリと肩をあげた。




「何やってんの？お前…」



千冬君がそう聞いたがたけみっちは振り返らない。



たけみっち……？




何かあったのだろうか？



私は彼の肩に触れようとしたが、急にたけみっちが振り返る。




え…



たけみっち……泣いてる？



雨か涙が分からないものがたけみっちの頬を流れていて…



「たけ、っうわっ！！」



急にたけみっちに抱きしめられて私は驚きに瞳を開く。



「た、たけみっち！？」


「…………」


え、えっと……



前にもなんだかこんな事が……



ぎゅっ…と背中に回った手が強まって、私は視線を泳がせる。


たけみっちの表情は見えない…



でも、かすかに震えたたけみっちの肩に、私は瞳を開く。



これは寒さからじゃない……



そこで、私はハッとした。



もしかして彼は……



「お、おい！たけみっち！お前何して、っ」



千冬君が1歩こちらに来たが、私はそれを手を上げて制する。


待って…という意味をこめて。



「たけみっち…」



たけみっちは…意味無くこんな事はしない。



私はたけみっちの背にソッと手を回すと、トントン、と優しく背を叩く。



「…大丈夫…大丈夫だよ…たけみっち」



「っ……」




たけみっちは私を離すと真っ直ぐ私を見つめる。



「……ごめん…」



謝ったたけみっちに私は首を横に振る。




「…帰って…きたの？たけみっち」




そう聞くと、彼は頷く。




「え！？お前12年後のたけみっち！？」




驚く千冬君。




「みんな……皆死んでた…」



「え…」



たけみっちがぐっ、と手を握りしめる。




「東卍の皆も…千冬も…六花ちゃんも…………っマイキー君も！！！
皆死んだ！」



「！！」



叫ぶようにそう言ったたけみっちに、私は瞳を開く。



皆……死んだ？私も……


マイキー、も…？




「ちょ、ちょっと待てよ！たけみっち！意味分かんねぇ！」



「俺だって分かんねぇよ！でもっ…！未来で見てきたんだ！マイキー君が皆を殺した！」



「っ…」




マイキーが……皆を殺した…？



「皆って……じゃあ…」



千冬君が私を見る。



何も答えないたけみっち…でもそれが答えだ。




私はぎゅっと傘を持つ手に力を込める。




未来は……いい方向にはいってはいなかった。




「たけみっち……未来のマイキーに会ったの？」



「………うん」



「マイキーは…どんな風だった？」


「え？……あ…えっと…ちょっと今のマイキー君とは違う、かな…黒髪短髪だったし…」



「！」



「あ…でも……瞳は全然変わってなかった…」






『ごめん……六花』





そうか……



あれはやっぱり…未来のマイキーだったんだ。




皆をその手にかけるほどに……




苦しくて、どうしようもない事が…




マイキーにおきたにちがいない…



彼の闇を……



覆い尽くした…



何か……