「…落ちついた？」


「うん、ありがとう」


濡らしたハンカチをひなちゃんに渡す。


神社で大号泣してしまったひなちゃんを連れて、3人で近くのベンチに腰かける。



「ごめんね、急に泣いちゃって」



「ううん、大丈夫」


ひなちゃんが泣いていたのは昨日、イブの夜…


たけみっちに別れ話をされたらしい。


そしてその理由が、自分のお父さんがひなちゃんと別れてほしいと彼に頼んだという事を今日知り…


お父さんと言い争いになって家を飛び出してきたそうだ。


不良ではなく、普通に恋愛をしてほしい、か…



成程……


たけみっちの言ってた話と繋がった。





『未来で、ヒナに言われたんだ…なんでイブの日、振ったんだ、ってさ』





たけみっちは優しいから…きっとひなちゃんのお父さんの思いを知って未来を知っていたけど、別れを切り出したんだろう。



「親が出てきちゃったか…でも、親が出てきたからってさ、たけみっちも別れ切り出す事ないじゃん！」



「それだけたけみっちは優しい人なんだよ」



「え？」



「優しくて…それだけひなちゃんが大切だって事だよ」


そう言って笑った私にひなちゃんが少し頬を赤くする。



「でも…心配するお父さんの気持ちも…分かる。」



娘に傷ついてほしくはない…


「たけみっちがひなちゃんを大切に思うように、お父さんも…ひなちゃんが大切だから。

そんなお父さんの思いも…忘れないであげてね」



「六花ちゃん…」



「でも、私は、2人には幸せになってほしいって思ってる。だから…苦境に負けないでほしい。

きっと2人なら…どんな大変な事も乗り越えていけるよ。


2人の気持ちが揺るがなければ…お父さんにもきっと…伝わる」



そう言った私にひなちゃんはぐっ、と目元を手で拭う。



「六花先生…さすが…言うことが違う！」



感動してるエマに私は苦笑い。


しまった…また年寄りくさく語ってしまった…




「ま、まぁ！たけみっちもひなちゃんのお父さんも素敵だな！って事！
…うちの父親に爪の垢煎じて飲んでほしいぐらいだわ…」



「…それは間違いないね…」



うんうん、と頷くエマ。



「でも…どうしよう…私、武道君の事ボコボコにしちゃったんだよね」



「え！？ぼ、ボコボコにしちゃったの！？」



「や、やるじゃん、ヒナ…」




た、たけみっち…今日大丈夫だったかな…