「この部屋か？」


「はい」


「？誰か来た？」


通路から聞こえた声に皆が扉の方を見る。



ガラッと扉が開いて、私は息を飲んだ。



そこには……



「っお父さん！」



怖い顔をしたお父さんと、秘書の男性。



な、なんで…



「あ、アメリカだったんじゃ…」



「…この病院から連絡があった。ここはうちが顧問で入っている病院だからな。」



「…そ、そう…あの…」



「このバカ娘が！！！」



「っ！」




バチンっと音がして、頬に痛みが走る。



…いや…私…怪我人なんですが？と言いたくなるが…


言い返すことはできない。



「……マイキー…」



お父さんの後ろで皆が驚いていて、マイキーが今にもお父さんに掴みかかりそうで…


なんとかけんちゃんと三ツ谷君が止めてくれてる。



「何を考えてる！！道成寺グループの娘が不良の喧嘩に巻き込まれただと！？
道成寺家の名前に傷をつけるつもりか！お前は！！」



口を開けばいつもそうだ。

道成寺グループ、道成寺家…


怪我をした娘に、大丈夫か？の一言すらない…


まぁ…すでにそんな優しさ、期待してはいないが…



黙り込む私に、お父さんはちらっ、とマイキー達を見た。




「……こんっなくだらん奴らと付き合いおって……！
こんなクズ共と付き合ってるからそんな事になるんだろう！！！」



「！！」




「付き合う人間は選べとあれほど言っただろうが！！！」



「いい加減にして！！！！」



私は手を握りしめるとお父さんに声をあげた。



1週目の人生で…父に声を荒らげた事などなかった。


これが人生初。


それ程までに…今の発言が許せなかったからだ。



「な、なんだと…」



「私は……お父さんの操り人形じゃない…」



ずっと……言いたかった。



「私には…ちゃんと意思があって、心がある…お父さんの言われた通りに…ずっと私は従って生きてきた。
でも、それは…お母さんが悲しまないためにして来た事…
私ができなかったら…お父さんはお母さんを責めるから。

だから…っ…必死に勉強も習い事も、お父さんの言うとうりにやってきた！


でももう…私はお父さんの言いなりにはならない！！
私の人生は、私のものだから！

だから……


お父さんが望む弁護士にはならない！！」



「な、なんだと！！生意気をっ！」



「っ！叩きたかったら何度でも叩けばいい！
でも私は負けないから！！絶対に！！」



手を振りあげたお父さんは私の瞳にぐっと拳を握る…



「それから……私の大切な人達を傷つけるのはやめて！！
ここにいる皆は…私のかけがえない大切な人達なの！！
皆を侮辱するのは絶対に許さないから！！！」



「くっ……」