「笑い事じゃないから！」



目の前でゲラゲラ笑うけんちゃんを私は睨む。



「あ〜笑った。いてて、傷がまた広がりそうだわ」



「弁解するの大変だったんだから！」



あの後、次々とありもしない話を出されて私は驚愕して病院にやって来た。



「いや…冗談話がそこまで膨れ上がってるとは俺も驚いたよ」



「…勘弁してよ…。ま、でもエマじゃなくて私に頼んだ理由はなんとなく分かったよ」



エマがあんな綺麗なお姉さん達に囲まれてけんちゃんが生活してるのを目の当たりにしたら……



…うん、もう想像つくよね…



「…まぁ、それもあるけど…六花に頼んだのはそれだけじゃねぇよ」



「ん？」



「お前って、人を偏見の目でみたりしねぇだろ。
なんつーか…どんな奴にも平等に接するし。

ああいう仕事してたら、少なからず偏見の目で見るやつもいる。
俺ら不良だってそうだ。

でも、お前はそういった目で人を見ない。」



「へ、偏見だなんて！どんな仕事でも、一生懸命やるかどうかでしょ？

一生懸命やってる人を笑うやつの方がどうかしてる…」



私の言葉にけんちゃんは「ほらな」と笑う。


「私のお父さんはさ…知ってると思うけど…
偏見の目を持つ天才なの」


「ぶはっ…た、たしかにな…」


「でも、お母さんはいつも言ってた。
この世界に産まれてきただけで…

人は平等なんだ、って。

だから…私にはその人を見てくれだけで判断するのはダメだって教わったの。」



「…いいお袋さんだな」



「うん」



お母さんは…私に大切な事を沢山教えてくれた。


だから


大切な仲間や、大切な人に出会う事ができた。


そう思う。




「ねぇ、けんちゃん」


「ん？」



「救急車の中で、けんちゃん言ってくれたでしょ？

マイキーの心は…最初から私だったって」


「ああ」


「私ね…皆の事も、マイキーの事も忘れていたのに…今更…

マイキーの心が自分だなんて、そんな勝手な事…考えられなかった。

でも…

もし

許されるなら…


私はマイキーの心の支えになりたい。


どんな時もどんなマイキーでも

私は彼の味方で、彼の支えになりたい」


けんちゃんにはまだまだ負けるけどね…と笑った私に、彼は私の頭をポンポン、と優しく叩いた。



「お前はもう十分…マイキーの心になってる。」



「けんちゃん…」



フッ、と笑ったけんちゃんに私も微笑む。



「ありがとう。けんちゃん」