『六花ちゃんにも沢山幸せになってほしい。苦しんだ分…

笑ってほしい』




たけみっち…




ぱしゃ、と音をたてて浴衣に水が飛んで、私は立ち止まる。



「六花？」


「六花ちゃん？」



エマとヒナちゃんが私を振り返った。



「…ごめん、やっぱり私は戻る」


「え！」


「でも！そんなの危ないよ！」



「…ごめん、二人は先に行って救急車と警察を誘導してきてほしい。
私は…」


二人を放ってはおけない…



「お願いね！」



「六花ちゃん！」


「六花！」



二人の呼び止める声を背に、私は来た道を走り出した。



「…った…」



初めて履いた下駄…


指の間が真っ赤に染まっていた。



私は下駄を脱ぐと裸足になって雨の中を再び走り出す。


たけみっち！けんちゃん！



どうか無事でいて！








「カスどもが群れたからってよー」



「ぐあ！」



「何ができんの？」



「！」


あれは…！



「たけみっち！けんちゃん！」



「！六花ちゃん！？な、なんで戻ってきたの！」



「はぁ、はぁ…二人を、置いていくなんてやっぱりできなくて…それに、マイキーにけんちゃんを頼むって言われたのに、自分だけ逃げるなんてできない！」


「六花ちゃん…」


「そ、それよりこれは…」


さっきの男達と殴り合ってるのはたけみっちとけんちゃんではない。


完全にボロボロにされているが、男達と喧嘩してるのはあの溝中の４人だ。



「ヒナが連絡してくれたみたいで…」



「無駄な事、してんじゃねぇぞ！」


「うっ…くっ…」



淳君がふらつきながら立ち上がる。



「無駄な、事？たとえ…無駄でもよ…それでも！引けねぇ時があんだよ！！！」






『引けねぇんだよ！！！引けねぇ理由が！！！あんだよ！！！！』




それはいつか広場で聞いた、たけみっちの言葉。



「なぁ！武道！」


「あ…」



殴られて、傷だらけになっても、４人の瞳には光がある。


まだまだだ。そういうように…



「ぜってぇ負けねぇ！！」



４人の瞳に、男達が一歩引き下がる。



その時…



パトカーと救急車のサイレンが聞こえてきた。



「…たけみっちの仲間も…凄いね」



「え？」



「仲間の為に駆けつけて…殴られたって、引けないものの為に立ち向かう。」


マイキーの周りにいる仲間がそうであるのと同じように…



「かっこいいよ、皆」