たけみっちがキヨマサに拳を向けた…


その時…



「あ…」



ぐしゃ、っと嫌な音がなった。



見ると、たけみっちの左手を貫通している…刃物。

さっきけんちゃんを刺したそれだ。



「！たけみっち！」


「武道君！！」


「ぐ、あああああ！」



ボタボタ…と流れる血。



「んだよ、殺したと思ったのに意外と反応いいな」



「うっ、ぐっ…」



痛みに顔を歪めるたけみっち。


「タイマンなんてする気ねえよ。ただの処刑だろ？」


「キヨマサ最高！」


「…殺してやるよ…花垣」



そう言ったキヨマサにたけみっちは肩で息をしながら刺さった刃物を掴む。



「うっ…あああ！！」


「！」


そして、一気に引き抜くと、刃物を投げ捨てた。


「うああああ！！！」



拳を握り、キヨマサに向かっていく。



それを簡単に避けると、キヨマサの蹴りがたけみっちのお腹に当たり、吹き飛ばされる。



それでもたけみっちは立ち上がると、手から流れる血をそのままにキヨマサに向かっていく。



「どうした？花垣！まだ一発ももらってねーぞ！」


ゲラゲラ笑うキヨマサ達。


「殴り殺してやる」



「うらああああ！」



たけみっちがキヨマサのお腹に突進する。



「っう！」


そのままキヨマサの拳がたけみっちの腹部を殴る。



「がはっ！」



「武道君！」



手を握りしめ、涙を流すひなちゃん。


助けてあげたい。


でも


喧嘩でキヨマサを倒せる力は私にはないのだ。


ただ、祈るしかできない…



「花垣！女が幻滅してんぞ！ハエみてぇに弱えってよ！」


「しがみつくしかできねぇのか？ダセェ野郎だな！」



バカにしたような男達にぐっ、と手を握る。


たけみっちはキヨマサの腕を掴むと、噛みついた。



「っぐぁ！ってぇ！」



「噛みつきやがった！」


「みっともねえまねしてんじゃねえぞ！ザコミチ！」


「小学生か！」



「みっともないのはどっちよ！！！」



私は叫んだ。



「みっともないのはあんた達でしょ！！
たけみっちは手を怪我しても、ちゃんと素手でタイマンはってる！！

あんた達みたいに卑怯なマネしてない！」



「あ？黙って聞いてりゃこの女…」



「っお前の相手は俺だろう！」


「ぐっ！」


たけみっちを投げ飛ばしてこちらに来ようとしたキヨマサの背にたけみっちが乗っかると首を腕で締めた。



「マイキー君になれなくったっていい！俺は！花垣武道だーーっ！！！」


たけみっち！



メキメキ、と音がして、キヨマサが焦り出す。



「放せ！ゴラァー！！」



「ぜってぇ放すな！！たけみっち！」


けんちゃんが叫ぶ。



「テメー！」



「うらああああーっ！！」


たけみっちが叫んだのと同時…


キヨマサの体がガクッと地面に倒れ込んだ。



その場にいた全員が…息を呑む。



「はぁ、はぁ……か、勝った」



たけみっちは仰向けに地面に寝転ぶ。



「リベンジ……成功」



「武道君！」


「来るな！ヒナ！」


「！」


「はぁ、はぁ…」



まだ……終わってない。


キヨマサは倒れたけど、まだ男達がいる。



「気ぃ済んだ？」


男の手には刃物が光る。



「キヨマサ、ださ！」


「いい冥土の土産ができたじゃん」.



笑う男達…


もうたけみっちに、彼らと戦う力は残っていない…



「六花ちゃん……ヒナとエマちゃん連れて…逃げて」


「！そ、そんな事！できるわけない！」


「武道君…」



たけみっちは振り返ると、ニッと私達に笑って見せた。


大丈夫、そう言うように…



「……ヒナちゃん…エマ、行こう」


私はエマとヒナちゃんの手をとる。


泣きじゃくる二人をつれて私は雨の中を走った。