あちこちから聞こえる怒声とバキ、メキッといった痛そうな音…


耳を塞ぎたくなるが、怖がってる暇はない。


私は這いつくばりながら車から車の間を移動していく。


けんちゃんは背が高いから目立つはず。



少し立ち上がって、ちらっ、と様子を伺った。




「！いた！」



見えた長身の背中。



よかった！まだ何もなってない！



そう思ってホッとしていると、ふと横から歩いてきた人物に私は気づいた。



あれは……



「キヨマサ！」



見覚えのある横顔…その瞳は完全におかしくて…


彼の手にキラリと光るものが見えた。



キヨマサは真っ直ぐ喧嘩しているけんちゃんに向かっている。



まずい！！



私はざっ、と下駄で足を踏み込むと人混みに突っ込んだ。




「死ね！ドラケン！！！」



「けんちゃん！！」



「！！」



叫んで走ってきたキヨマサと重なった私の声…



私はけんちゃんの服を力のかぎり引っ張った。



「っ！」


「っあっ…！」



どさっ！と地面に倒れ込む私とけんちゃん。



私の浴衣の袖が切れていて…それにけんちゃんはハッとする。



「六花！大丈夫か！？」



「わ、私は平気…」



転んで膝小僧は擦りむいたが切られてはいない。




「キヨマサ、てめぇ…なんのつもりだ！そんなもん持ち出しやがって！」



「…てめぇのせいで俺は全部失っちまった！！ぶっ殺してやる！！」



「っ…」



キヨマサは刃物を振り上げるとけんちゃんに突っ込んでくる。



それをけんちゃんは交わす。



しかし、すぐ後ろでメビウスのメンバーがバットを持って襲いかかってきた。



「！」



けんちゃんは振り下ろされたバットを手で受け止める。



それと同時…キヨマサが再び走り出した。




「！けんちゃん！！！」




その瞬間が…スローモーションのように感じた…



バットで襲ってきた相手を蹴り飛ばしたの同時…キヨマサの刃物が…


けんちゃんの脇腹を刺した。



「！！！」



ゆっくり前のめりに倒れていくけんちゃんの体…



キヨマサが二マリと笑った。





「けんちゃん！！！！！！」