「エ、エマは…し〜らない、と！」


殴られた武道君にエマは慌ててヒナちゃんの方に走っていく。


やれやれ…


「おーい、武道君…生きてる？」


「な、なんとか…」


キヨマサ君に殴られた時より重症にみえるのは何故だろう…


私はチラッとけんちゃんと話してるマイキーを見てからそっと武道君の横にしゃがむ。



「ねぇ…今の武道君は、12年後の武道君？」


「へ？」


「ああ、よかった…いつ帰ってくるんだろうって心配してたんだ。
昨日たまたま武道君に会ったんだけどさ…

なんか様子がおかしかったから、あ、違う武道君なんだって思ってさ…」


昨日の武道君はThe中学生って感じで、話しててもずーっとヘラヘラしてるだけだった。

でも今の武道君は目を見れば分かる。

大人の武道君だ。



「何か収穫あった？」


「う、うん…報告したい事もあるんだけど、先に相談、かな。
やっぱり六花ちゃんが言う通り、優先順位はドラケン君の死の回避だと思う。」


「うん。けんちゃんが生きていてくれれば、未来のマイキーにはならないはず」




『大事なものは…すぐに手から滑り落ちていく。ケンチン…今の俺を見たら、なんて言うんだろうな』




あんなに悲しげなマイキーは


もう見たくない。



「8月3日…それをどう回避するか…」


「うん」


「何コソコソしてんの？」


「へ？…うわっ！ま、マイキー！」



私と武道君の頭にふと影がさして、見上げるとそこにはマイキーの姿。


「こ、コソコソなんかしてないよ！け、怪我、大丈夫かな〜って」


「…ふ〜ん…」


うっ…


「おい、マイキー！全員集まったぞ！」


けんちゃんの声にマイキーはちらっと私を見てから特攻服を揺らすとそのままいってしまう。


それにホッとしたが…


武道君と話す時は気をつけないとだな。



「武道君、これ」


私は1枚の紙を武道君に渡す。


そこには私の携帯番号とメールアドレスが書かれている。


「六花ちゃん！こ、これは受け取れないよ！」


「え？」


「お、俺にはヒナという彼女が！」


「…何言ってんの。そんな変な意味じゃないってば。」


苦笑いする私に武道君はだよね…と笑う。


「マイキーが近くにいる時は私、なかなか話せないから…怪しまれちゃうし…
何かあれば連絡してほしい。」


「うん、わかった」


「あと…」


「ん？」



首を傾げた武道君に私は笑うと…



「私も、たけみっちって、呼んでいい？」