「ん〜…まっ！うまい！…あ、お、美味しい」


思わずでた言葉にハッと口を抑える。



そんな私を見てフッと目の前の彼は笑う。



彼専用、のレストランは朝から夕方まで彼が来るか分からないがシェフが食材を揃えて毎日スタンバイしてるらしい。


ど、どんだけ…


にしても美味い。


昨日はオレンジジュースすら喉を通らなかったのに、この2日で大分成長した。

彼が目の前にいても美味しいと感じるようになった。

それに


どこか彼の表情も少し柔らかくなったように感じる。



自惚れだろうか…




朝食を一緒にし、そして一緒に今、オフィスのエレベーターの中にいる。



な、なんか…


職場恋愛した新婚夫婦みたい、じゃない？



そんな事を考えていたら顔が熱くなってきた。



「ん？」


「い、いや、なんでも！.わわっ！」


見下ろされて慌てて赤い顔を隠そうと後ろに下がったらヒールでグキっと足を挫いて倒れそうになった。


それをバッと反応よく背中に手を回して支えてくれた彼。


「す、すみませ…あ」


近くで絡まった視線に、ドキッと胸が鳴る。


私は一体どうしてしまったんだろうか。



「気をつけろ」


「は、はい…」


今私、耳まで真っ赤にちがいない。


「六花…」


「は、はい…」


彼が何か言おうとして、丁度チンと音がしてエレベーターの扉が開いた、


私は慌てて彼から距離をとる。


そして扉の前にいた人物にサーッと血の気がひいた。


相手はクイッとメガネをあげると、エレベーターに乗り込んだ。


「お、おはようございます」


赤い顔を見られないように私は彼、稀咲から視線を離す。


「ああ…珍しいな。2人が一緒なんて」


ジロジロ見られて居心地が悪い。


「それに…昨日と同じスーツ、だな」


「うっ....！こ、これは、その…洗濯し忘れて、です、ね…」


しどろもどろになる私はますます何か隠してます、とばかりに怪しい。



「六花に、書類の作成を深夜に頼んだ」


それで帰れなかったらしい。と説明した彼。


「書類？俺は聞いてないぞ」


「伝えるまでの内容じゃなかったからな」


2人の間に微妙な空気が流れる。



早く最上階についてくれ、と願っていた。