「なんか女の子が家にいるって、いいね〜華やかでさ」


そう言ってニコニコ笑った圭介君のお母さん…涼子さん(そう呼ぶよう言われた)



「ウチは圭介一人っ子だからさぁ〜むさっ苦しくてしゃーないわけ。
来るのも千冬とかだし」



「す、すんません…」



千冬君、そんなによく場地家に来てるんだな…



「でも、ホントありがとね。今まで圭介が2桁の点数なんてとったことなんてなかったからさ…バカで引いたでしょ〜」



あっははは！と笑う涼子さん。




「い、いえ…圭介君、飲み込みは早いし、素直だからちゃんと私が言ったこと理解してくれてるし、とても優秀な生徒でしたよ」



そう言った私に涼子さんはキョトンとする。


「素直？………へぇ………」



ニヤ…と笑った涼子さんに圭介君が気まづそうに視線をそらす。



「それは六花ちゃんに、だからだよねぇ…」


「はい？」


「うほんっ！！」


咳払いした圭介君がどこか恥ずかしそうにしていて、それをまた涼子さんが面白そうに見てる。


「六花ちゃんって本当ちゃんとしてて偉いね。礼儀もしっかりしててさ、きっとお母さんの教育の賜物だね」



「ありがとうございます。」



「今日ここに来るのはちゃんと言ってきた？」



「あ…えっと…」



「おふくろ」



どう答えるべきか悩んでいたら、圭介君が涼子さんの言葉を止める。




「…六花のおふくろさんはもうなくなってんだよ」



「え…」


圭介君の言葉に涼子さんが私を見る。


「あ…ごめんね。知らなくて…余計なこと聞いちゃったね」


「い、いえ！亡くなったのは小学生の時なので」


「そう…」


「でも、涼子さんにそう言ってもらえて、母もきっと天国で喜んでます」



そう言って笑った私に、涼子さんは眉を下げて微笑む。



「しっかりしてるね。…あ、もし私で力になれる事があるなら頼っといでよ。
お父さんには話しにくい事もあるだろうし…恋の相談でもいいよ」


ね？と笑った涼子さんに、胸が熱くなる。


「はい！ありがとうございます」



圭介君のお母さんは…とても暖かい人だった。