「じゃ、じゃあ…あの男の獄中死は…組織が、絡んでた？」


「ああ。俺たちは裏の組織のプロだ。それぐらい簡単な事だ。」


その通りだ。
それぐらいに東京卍會という組織は恐ろしいのだ。


東京卍會には弁護士の他にも専属医師、薬剤師などもいる。
つまり…どんな仕事人でも力と金を使えばなんとでもなるのだ。


「でも…どうして私が…優秀な弁護士は父の事務所には沢山いる」


「身内からの方が色々ややこしくもない、それにあの男を恨んでいたやつの方がよかった。だから、娘を出すよう俺が言った」


「…裏切ることのないように…？」


「ああ」


つまり私は…人質のようなもの？

もし私が組織を裏切れば…


父の弁護士事務所ごと、葬り去るぞ、という脅しでもある。
そして、他の弁護士に自分が裏社会に復讐の依頼をしたとは当然、言える訳がない。


だから私が、1番都合がいいのだ。


この話を聞いてしまったら


私はもうこの組織を裏切れない。


彼の策略…



「その肩の火傷のあとは、火の中に入って行ったのか？」


彼の質問に私は頷く。


「母を助けようと…炎に飛び込みました。
結果、助けるどころか…自分が助け出された」


時々まだ痛む火傷の痕


自らした事に後悔はない。


でも


この傷をみた時の相手の反応が怖くて…


そういう関係になりそうになったら、自分から別れを告げていたのだ。


「あなたの言う通りです。この肩の傷を…誰かに見せるのが怖かった。だから…」


ぎゅっと手を握りしめる。


「悪かった」


「え？」


「あんな言い方して」




【初心な女子高生じゃあるまいし…動揺しすぎだろ】



彼の謝罪に、私はフルフルと首を横にふる。



「今日はここに泊まれ。俺は違う部屋にいるから心配する事ねぇよ」


「あ…」



そう言うと彼は静かに違う部屋に入っていった。


初めて知った事実と


初めて見る彼の新しい顔。



頭が混乱して



今日はもう眠れそうになかった。