「わぁ…中広いんだね」


「おじいちゃんの道場があるからね。」


そう言ってエマが指差した先には佐野道場と書かれた看板が掲げられた道場。



「六花もよく来てたんだけどね〜何か思い出しそう？」



「ん〜…」



不思議と…懐かしい感じはするけど…


記憶の欠片は出てはこない。




「あれ？あそこって…」




ふと家の横にたてられたプレハブ小屋が目に入る。



「ああ、あそこはマイキーの部屋だよ。元々は真兄の部屋だったんだけど、今はマイキーがそのまま使ってるんだよね。」



「そうなんだ…」



「マイキーまだ寝てるから後で起きてくると思うよ」



そう言って玄関の扉を開けてエマは思い出したように振り返った。



「あ！そうだ！もし、マイキーに部屋に誘われても絶対入っちゃダメだからね！！」


「へ？」


瞳を丸くした私にエマはずいっと顔を近づける。



「妊娠、させられちゃうからね！」




「はい！？」



突然何を言い出すかと思えば…




「とにかく！入っちゃダメだよ！」



「…わ、わかった？」



頭に？マークが浮かんだがとりあえず気にしないでおく事にした。




「おじぃちゃん！六花きたよ！」



「お邪魔します」



エマについてリビングのある部屋に通された。


そこにはいかにも空手の師範、といったようなお爺さん。



じっ、と怖い顔で見つめられ少し緊張したがお爺さんはすぐにその顔を笑顔に変える。




「久しぶりじゃの、六花」



「あ…ご、ご無沙汰しております」



私はペコリと頭を下げた。