たくさんの闇が渦巻く大都会。



日々すぎていく毎日。



私はたった1人




取り残されたような気持ちになる時がある。






「えぇ…クライアントにはそう伝えてください。警察には私がむかいます」


淡々と内容を伝えて私は携帯を耳から離すと待たせていた人物を振り返る。



「すみません。お待たせしました」



そこには大きなソファーに深く腰掛けた男が2人。

1人はメガネをかけた茶髪でストライプのスーツを着た男。

名前を稀咲鉄太という。


そしてもう1人は金髪のオールバックに黒いスーツを着た男。首筋にはドラゴンの刺繍が入っている。
かなり整った顔をしているが、その瞳はまるで闇。
鋭い視線は相手をゾクリとさせる…


彼は佐野万次郎。


私の



雇用主だ。


「弁護士先生はお忙しそうだ。」


ニヤニヤと笑う稀咲に私の眉がピクリと動く。


「…誰のせいで忙しいんですかね」


「さぁ」



「私、言いましたよね？今は警察の動きが読めないから下手なマネはするな、と」


結果がこれだ。


さいさん、私は今は派手な動きをすれば警察に介入される。危険だと話した。
それなのにこの男、稀咲はそんな事おかまいなし。


やりたい放題だ。


そして結果、組員の1人が逮捕。


うまく保釈するのがお前の仕事、だと。


「そこを補ってくれるのが、あんただろ？
なぁ？大弁護士先生さん？」


ほらね。


尻拭いは全て私にくる。


普通の会社なら、パワハラだ！なんて言って退職願を叩きつけるところだ。


が、私にはそれができない。


彼らの言う通りに…忠犬のように働く道しかないのだ。



あの日



父にそう命じられた日から