.
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リリアと別れ、カイトとティアは化学室に向かった。
『カイト様は、リリア様ととても仲良しなのですね』
「まぁ、年も同じ兄妹だからな。ティアは兄妹はいないのか?」
『はい。私はずっと1人で生活しておりましたので……』
「どう言うことだ?〇〇家の者ではないのか?」
『はい。元々私は身寄りがなく、〇〇家のメイドとして仕えていたのですが、子供に恵まれなかった奥様と旦那様が、私を気に入ってくださり養子として迎え入れてくださったのです』
「そうだったのか……。じゃあ、随分と大変だったであろう」
『……そう、ですね。ですが今はこのように素敵な学園に入学させていただくこともできたので、毎日とても楽しいですわ』
「そうか。それは良かったな」
そう言って優しく微笑むカイトに、ティアは目を奪われた。
「それにしても、ティアは聖女なのだろう?この国に聖女はいないと聞いていたが、いつ能力が現れたんだ?」
『それは、つい最近ですわ。3ヶ月ほど前に、いつも通り村を歩いていたら、湖で子供達が遊んでいたのです。危ないと注意しに行く途中、1人の子供が湖に落ちてしまい……、救わなければと思ったと同時に光が私を包み、いつのまにか子供は元の場所へと戻っておりました』
「へぇ……。じゃあ、無意識のうちに能力を発揮したと言うことか……」
『……そう言うことなのでしょうか。ちょうどその子のお父様がこの学園の理事でして、強い要望をいただき、この学園に入れることになったのです』
「そうか。ティアの功績のおかげだな」
『いえ、むしろそのおかげでこのような素敵な学園に入ることが出来たんです。私こそ、少年に感謝しなくてはなりませんわ』
「だが、不安ではなかったのか?〇〇家と言えば、〇〇地域の外れだろ?家を離れ、見ず知らず地に来るのは、やはり不安だろ?」
『そうですね……。ですが、ワクワクの方が大きかったです!この学園には素敵な王子様がいらっしゃると聞いておりましたので』
「素敵な王子?」
『はい!カルティアの未来を守っていく心優しき王子。カイト様のことは、〇〇地域にいた時から存じ上げておりました。会えるのをとても楽しみにしていたんです」
ティアのキラキラとした瞳を見つめ、カイトは少し照れたように微笑んだ。
「大袈裟だな」
「いえ!大袈裟などではございません。カイト様はこの国の希望なのです」
「……希望か。ちなみにリリアのことも知ってたのか?」
「はい、もちろんですわ!リリア様は、とても美しく知的な王女様だと伺っております」
「そうか。実際に会ってみてどう思う?」
「そうですね……。リリア様は、美しいのはもちろんとても優しくて親しみやすい方でした。まるで神から全てを与えていただいたかのように、素晴らしいお方でした。なんだか嫉妬してしまいますわ」
そう言って微笑むティアの瞳は、どこか少し寂しげだ。
「まぁ、まだ会ったばかりだからわからないだろうが、リリアはそんなに優れた人間ではないな。」
そう笑うカイトの瞳は、優しい瞳をしていた。
「いえ、リリア様は完璧ですわ」
「完璧だなんて……、ティアにも普段のリリアを見てもらいたいものだな」
「普段の、リリア様ですか……?」
「あぁ。いつもはあんなにすました顔をしてるが、普段はもっと一喜一憂を繰り返す、ごく普通の少女だと思うぞ?」
「そう、なのですか?」
「あぁ。ティアも仲良くなればそのうちわかるさ」
「そうだと良いのですが……」
そう話しながら廊下を歩いていれば、2人はあっという間に化学室まで辿り着いていた。
だが化学室の前にやってくると、なぜか辺りは騒がしい。どうしたのだろうと教室の中を覗けば、教室の中にはそこには1匹のデビルモンキーの姿があった。
デビルモンキーはまだ小さな子供で、少し怯えた様子で近くにいる生徒を威嚇していた。
「デビルモンキー……、何故ここに……」
ティアは少し怪訝な顔でデビルモンキーを眺めた。
いまだに生徒に威嚇を続けるデビルモンキーに、バロンは箒の柄をデビルモンキーに向け、今にも飛びかかりそうだ。
「バロン!デビルモンキーはこちらから襲いかからなければ襲ってくることはないはず。今はただ、怯えているだけだ」
カイトはそう言い、バロンを呼び止める。
「え?そうなの?」
バロンはデビルモンキーに柄を向けながらも、一歩後ずさる。カイトはデビルモンキーの方にゆっくりと近づいた。
「お腹に酷い怪我をしている……!可哀想に、痛かっただろう」
そう呟くと、カイトはデビルモンキーにゆっくりと手を伸ばした。
「大丈夫だよ。おいで」
すると不思議なことにあれだけ威嚇をしていたデビルモンキーが、カイトにすり寄り、カイトの手に自分の顔をなすりつけたのだ。
「カイト様……、凄いですわ。」
そんな様子を近くで見ていたティアは、驚きの声を上げた。ティアもゆっくりとデビルモンキーに近づく。
そしてデビルモンキーの前に両手を向け、祈りを始めるとデビルモンキーを白い光が包んだ。
「え……?」
「大丈夫ですわ。今治療をしているのです」
暫くして光がおさまると、デビルモンキーの腹部にあった傷は跡形もなく消え去っていた。
「すごいな。これが聖女の力か……」
「いえ、大したことではありません」
ティアはカイトに褒められ、顔を少し赤らめた。
「それにしても、良かったな。もう怪我するなよ」
カイトはデビルモンキーの顎を撫でると、窓を開けてデビルモンキーを外に逃してやった。
「カイト様はお優しいのですね」
「いや、あの子が助かったのはティアのおかげだよ。ありがとな」
カイトはとても優しい顔で微笑んだ。その様子に、ティアはポッと顔を染めた。
「あれ?どうかしたの?みんな」
そこに少し遅れて、不思議そうな顔をしたリリアがやってきた。
「ああ。怪我をしたデビルモンキーがいたんだが、ティアが治してくれたんだ」
「そうなのね。すごいじゃない、ティア」
「いえ、カイト様のおかげですわ」
ティアは少しはにかみながらも、うっとりとした瞳でカイトを見つめた。