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(リリアの物語)
「初めまして、私ティアと申します。王女様、どうぞよろしくお願い申し上げます。」
テオドールの授業が終わったと同時に声をかけてくる少女・ティア。
『王女様だなんて、堅いわね。リリアでいいわよ』
「いえ、滅相もございません。それではリリア様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ。よろしくね、ティア」
そう微笑めば、ティアはリリアの横にいるカイトに目を向けた。
「これは失礼致しました!カイト様!挨拶が遅れてしまいました」
「いや、大丈夫だ。気にしないでいい。もっと気楽に接してくれ」
そう優しく微笑むカイトに、ティアは頬を染めた。
(はぁ。カイトったらまたそうやって、女の子をたぶらかして……)
どんなときでも優しいカイトは、知らず知らずのうちに女の子を魅了している。だが本人に全く自覚はない。
そんなティアを見つめ、カイトは言った。
「すごく綺麗な瞳だな。まるで瞳の中で薔薇が咲いてるみたいだ」
カイトがそう言って微笑めば、ティアは驚いた顔をして涙を流した。
『え!?カイト!何泣かせてるのよ』
「え?俺は褒めたつもりだったんだけど……」
(これだから天然たらしは……)
「リリア様、違うのです。あまりにも嬉しくて……。泣いてしまいすみません。」
そう涙を溢しながら微笑む姿は、同じ女性のリリアから見てもとても美しかった。
それからと言うものティアは、事あるごとにカイトにくっついて回るようになった。
当然いつも一緒にいるリリアやバロン、リアムとも一緒に行動をするようになりーー……
次の剣術の授業に向け、中庭を歩いていたいつもの4人。だが気づけばカイトの隣にティアが入り込み、いつのまにか2人は先に行ってしまった。リリア、バロン、リアムは何故か取り残され、後ろをとぼとぼと歩いていた。
リアムは前を歩くカイトとティアを指さし、コソッと話しかける。
「ねぇ、あれ何?」
『あー……、なんか最近仲良さそうだよね』
「仲良いっていうか、付きまとわれてるの間違いじゃない?」
『あのね〜、そうゆうことばっか言ってるから、リアムには浮いた話上がってこないんだよ?』
「……別に、そんなこと求めてないし」
少し拗ねたように目線を逸らすリアムの頬を
『素直じゃないんだから〜』
とツンツンと指で突き、からかうリリア。
「あー!リリアとリアムがイチャイチャしてるーー!!」
それを見てバロンが騒ぎ出した。
「はぁ?イチャイチャとかしてないから!」
『そうよ!』
するとーー
「リアムって……、リリアのこと、好きなの……?」
突然悲しそうな顔をして真面目なトーンで聞くバロン。
『え!?』
「え!?」
その瞬間、リアムとリリアの声が揃い、お互いに顔を見合わせた。
「そんなわけないでしょ」
視線を逸らし、1人スタスタと歩き出すリアムを見て、バロンはどこか悲しそうな顔をした。
「リリアは……、リアムが好き?」
『え?わたしは……』
そういうと、リリアは真っ白の頬をほんのりピンク色に染めた。
(私はバロンが好き……)
そう言えたなら良いものの、その言葉はいくら待っても喉でつっかえて出て来なかった。
「僕は、リリアのことーー…」
何かを伝えようとしたバロンの声は
「キャーーー!!」
という大きな叫び声でかき消されてしまう。
『え、何!?』
すぐに叫び声をあげた主のもとに駆けつける3人。
「どうしたの!?」
叫び声をあげたティアのほうに辿り着けば、ティアは地面に倒れ込んでいた。
『大丈夫!?』
見ればティアの周りを白いサルたちが囲んでいる。助けようとするカイトの周りにも複数のサルたちが……。
「リリアは危ないから下がってて」
バロンはリアムにリリアを預けると、ティアを助けるため走り出した。
地面に落ちていた石を投げてサルの注意をひき、サル達の間をさらっと抜け、いとも簡単にティアの元に辿り着いたバロン。
(わぁ……。さすがバロン!)
リリアは遠目からバロンを眺め、その勇姿に心をときめかせた。
バロンはティアの元に着くと、ティアの手を引き、軽々とティアを抱き上げた。そして先ほどのようにサルの間をぬい、中から抜け出した。
『あ……』
バロンに抱き抱えられるティアを眺め、リリアは思った。
(まるでお姫様みたい……。なんか……見たくないわ……)
リリアの心の中でどんよりとしたものが渦を巻く。
そんな悲しそうに瞳を伏せるリリアを見つめ、リアムは言った。
「ねぇ、見て。カイト、取り残されてる」
リアムはそう言って、いまだにサルに囲まれているカイトを指さした。
『え?本当だ。』
「可哀想〜」
と言いながらも少し楽しそうなリアムは、リリアに向けて優しく微笑んだ。その姿は今まで見たこともないくらい優しい表情で、リリアは一瞬、ほんの一瞬だけ見惚れてしまった。
(……え?今一瞬、リアムのことかっこいいって……。いや、ないないない!私が好きなのはバロンだもん……!)
一方バロンは、ティアを安全な場所に降ろすとすぐさまリリアを探した。
「バロン様、ありがとうございます!」
そういうティアに
「え?ああ、大丈夫?」
と気遣いながらも、リリアの方を見つめる姿に、ティアはクスクスと笑う。
「バロン様は、リリア様のことが大好きなのですね」
「まぁね〜。でも本当は僕だけのリリアでいてほしいんだけどな〜」
そう見つめる先には、笑い合うリリアとリアムの姿。
「バロン様は……とても素敵でいらっしゃいます」
そう頬を染め、微笑むティア。
「ありがとう」
そんなティアに笑顔を返し、バロンはリリアのところへ向かった。
「リリア〜!見てた〜?僕の活躍〜〜」
こちらに走りながら、大きな声で言うバロンに
『見てたわよ。かっこよかったわ』
とリリアが褒める。
「そうでしょ〜!僕、リリアのことを守るために強くないといけないからね!」
『ふふ、ありがとう』
「ところでバロン、君の守るべきもう1人の人は、取り残されてるけどいいの?」
リアムがそう言えば、バロンは
「やば!忘れてた!!」
と急いでカイトの元に向かった。
『もう、あんな感じで本当に1番騎士になれるのかしら……』
呆れながらも、そんなバロンを愛おしそうに見つめるリリアに
「君の1番騎士にはなれるんじゃない?」
リアムはクスクスと笑った。リリアはその言葉を聞き、わかりやすく顔を染めた。
一方取り残されたカイトーー
「カイト〜!!」
バロンがカイトの元に着いた頃には、カイトはしゃがみこみ、先ほどのサル達と戯れていた。
「え?大丈夫だった?」
「あぁ。悪戯な子たちだけど、遊んであげれば、ほら。」
いつのまにかサルの頭を撫でられるほど仲良くなっているカイト。バロンはそれに驚いた。
「え、すご〜い!僕も撫でたい」
そう手を伸ばせば、思い切り手をひっぱたかれてしまう。
「だめだよ、バロン。いきなり手を出したら、サルたちだってびっくりするだろ」
「え〜」
バロンはひっかかれた手を見つめ
「あ!」
……と嬉しそうに微笑み、またすぐにリリアの方に向かった。
リリアの元についたと思えばすぐに
「リリア〜。怪我しちゃった〜」
と少し大袈裟に痛そうな素振りをするバロン。心配したリリアが、傷ついた手を優しく撫でる。
『大丈夫??』
「うん。でも痛いから、いつもの魔法やって??」
「魔法?」
首を傾げるリアム。
『はいはい、痛いの痛いの飛んでけ〜』
そう言って、痛みを飛ばす動作をすれば、隣では目を見開き、完全に引いているリアムの姿。
「ありがとう〜」
ニッコリと嬉しそうに笑うバロンは、少年だったあの頃とまるで変わらない。だが今は隣に、そんな様子を呆れた顔で眺めるリアムの姿がある。
リアムはこれでもかと冷めた瞳で見つめ
「え。何それ。やってて恥ずかしくないわけ?」
とリリアとバロンに聞いた。だが、バロンがそんなことを気にするはずもない。あっけらかんとした顔で
「え?もしかしてリアムもやってもらいたいの?あ、でもだめ!やっぱり、リリアの魔法は僕だけ!」
そうリリアを後ろから抱きしめ、リアムに宣戦布告する。
そんなバロンに、まるで赤い薔薇のように真っ赤に顔を染めるリリア。
「……いや、僕、全然やってほしいとか言ってないんだけど」
そう呆れるリアムだった……。
(リリアの物語)
「初めまして、私ティアと申します。王女様、どうぞよろしくお願い申し上げます。」
テオドールの授業が終わったと同時に声をかけてくる少女・ティア。
『王女様だなんて、堅いわね。リリアでいいわよ』
「いえ、滅相もございません。それではリリア様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ。よろしくね、ティア」
そう微笑めば、ティアはリリアの横にいるカイトに目を向けた。
「これは失礼致しました!カイト様!挨拶が遅れてしまいました」
「いや、大丈夫だ。気にしないでいい。もっと気楽に接してくれ」
そう優しく微笑むカイトに、ティアは頬を染めた。
(はぁ。カイトったらまたそうやって、女の子をたぶらかして……)
どんなときでも優しいカイトは、知らず知らずのうちに女の子を魅了している。だが本人に全く自覚はない。
そんなティアを見つめ、カイトは言った。
「すごく綺麗な瞳だな。まるで瞳の中で薔薇が咲いてるみたいだ」
カイトがそう言って微笑めば、ティアは驚いた顔をして涙を流した。
『え!?カイト!何泣かせてるのよ』
「え?俺は褒めたつもりだったんだけど……」
(これだから天然たらしは……)
「リリア様、違うのです。あまりにも嬉しくて……。泣いてしまいすみません。」
そう涙を溢しながら微笑む姿は、同じ女性のリリアから見てもとても美しかった。
それからと言うものティアは、事あるごとにカイトにくっついて回るようになった。
当然いつも一緒にいるリリアやバロン、リアムとも一緒に行動をするようになりーー……
次の剣術の授業に向け、中庭を歩いていたいつもの4人。だが気づけばカイトの隣にティアが入り込み、いつのまにか2人は先に行ってしまった。リリア、バロン、リアムは何故か取り残され、後ろをとぼとぼと歩いていた。
リアムは前を歩くカイトとティアを指さし、コソッと話しかける。
「ねぇ、あれ何?」
『あー……、なんか最近仲良さそうだよね』
「仲良いっていうか、付きまとわれてるの間違いじゃない?」
『あのね〜、そうゆうことばっか言ってるから、リアムには浮いた話上がってこないんだよ?』
「……別に、そんなこと求めてないし」
少し拗ねたように目線を逸らすリアムの頬を
『素直じゃないんだから〜』
とツンツンと指で突き、からかうリリア。
「あー!リリアとリアムがイチャイチャしてるーー!!」
それを見てバロンが騒ぎ出した。
「はぁ?イチャイチャとかしてないから!」
『そうよ!』
するとーー
「リアムって……、リリアのこと、好きなの……?」
突然悲しそうな顔をして真面目なトーンで聞くバロン。
『え!?』
「え!?」
その瞬間、リアムとリリアの声が揃い、お互いに顔を見合わせた。
「そんなわけないでしょ」
視線を逸らし、1人スタスタと歩き出すリアムを見て、バロンはどこか悲しそうな顔をした。
「リリアは……、リアムが好き?」
『え?わたしは……』
そういうと、リリアは真っ白の頬をほんのりピンク色に染めた。
(私はバロンが好き……)
そう言えたなら良いものの、その言葉はいくら待っても喉でつっかえて出て来なかった。
「僕は、リリアのことーー…」
何かを伝えようとしたバロンの声は
「キャーーー!!」
という大きな叫び声でかき消されてしまう。
『え、何!?』
すぐに叫び声をあげた主のもとに駆けつける3人。
「どうしたの!?」
叫び声をあげたティアのほうに辿り着けば、ティアは地面に倒れ込んでいた。
『大丈夫!?』
見ればティアの周りを白いサルたちが囲んでいる。助けようとするカイトの周りにも複数のサルたちが……。
「リリアは危ないから下がってて」
バロンはリアムにリリアを預けると、ティアを助けるため走り出した。
地面に落ちていた石を投げてサルの注意をひき、サル達の間をさらっと抜け、いとも簡単にティアの元に辿り着いたバロン。
(わぁ……。さすがバロン!)
リリアは遠目からバロンを眺め、その勇姿に心をときめかせた。
バロンはティアの元に着くと、ティアの手を引き、軽々とティアを抱き上げた。そして先ほどのようにサルの間をぬい、中から抜け出した。
『あ……』
バロンに抱き抱えられるティアを眺め、リリアは思った。
(まるでお姫様みたい……。なんか……見たくないわ……)
リリアの心の中でどんよりとしたものが渦を巻く。
そんな悲しそうに瞳を伏せるリリアを見つめ、リアムは言った。
「ねぇ、見て。カイト、取り残されてる」
リアムはそう言って、いまだにサルに囲まれているカイトを指さした。
『え?本当だ。』
「可哀想〜」
と言いながらも少し楽しそうなリアムは、リリアに向けて優しく微笑んだ。その姿は今まで見たこともないくらい優しい表情で、リリアは一瞬、ほんの一瞬だけ見惚れてしまった。
(……え?今一瞬、リアムのことかっこいいって……。いや、ないないない!私が好きなのはバロンだもん……!)
一方バロンは、ティアを安全な場所に降ろすとすぐさまリリアを探した。
「バロン様、ありがとうございます!」
そういうティアに
「え?ああ、大丈夫?」
と気遣いながらも、リリアの方を見つめる姿に、ティアはクスクスと笑う。
「バロン様は、リリア様のことが大好きなのですね」
「まぁね〜。でも本当は僕だけのリリアでいてほしいんだけどな〜」
そう見つめる先には、笑い合うリリアとリアムの姿。
「バロン様は……とても素敵でいらっしゃいます」
そう頬を染め、微笑むティア。
「ありがとう」
そんなティアに笑顔を返し、バロンはリリアのところへ向かった。
「リリア〜!見てた〜?僕の活躍〜〜」
こちらに走りながら、大きな声で言うバロンに
『見てたわよ。かっこよかったわ』
とリリアが褒める。
「そうでしょ〜!僕、リリアのことを守るために強くないといけないからね!」
『ふふ、ありがとう』
「ところでバロン、君の守るべきもう1人の人は、取り残されてるけどいいの?」
リアムがそう言えば、バロンは
「やば!忘れてた!!」
と急いでカイトの元に向かった。
『もう、あんな感じで本当に1番騎士になれるのかしら……』
呆れながらも、そんなバロンを愛おしそうに見つめるリリアに
「君の1番騎士にはなれるんじゃない?」
リアムはクスクスと笑った。リリアはその言葉を聞き、わかりやすく顔を染めた。
一方取り残されたカイトーー
「カイト〜!!」
バロンがカイトの元に着いた頃には、カイトはしゃがみこみ、先ほどのサル達と戯れていた。
「え?大丈夫だった?」
「あぁ。悪戯な子たちだけど、遊んであげれば、ほら。」
いつのまにかサルの頭を撫でられるほど仲良くなっているカイト。バロンはそれに驚いた。
「え、すご〜い!僕も撫でたい」
そう手を伸ばせば、思い切り手をひっぱたかれてしまう。
「だめだよ、バロン。いきなり手を出したら、サルたちだってびっくりするだろ」
「え〜」
バロンはひっかかれた手を見つめ
「あ!」
……と嬉しそうに微笑み、またすぐにリリアの方に向かった。
リリアの元についたと思えばすぐに
「リリア〜。怪我しちゃった〜」
と少し大袈裟に痛そうな素振りをするバロン。心配したリリアが、傷ついた手を優しく撫でる。
『大丈夫??』
「うん。でも痛いから、いつもの魔法やって??」
「魔法?」
首を傾げるリアム。
『はいはい、痛いの痛いの飛んでけ〜』
そう言って、痛みを飛ばす動作をすれば、隣では目を見開き、完全に引いているリアムの姿。
「ありがとう〜」
ニッコリと嬉しそうに笑うバロンは、少年だったあの頃とまるで変わらない。だが今は隣に、そんな様子を呆れた顔で眺めるリアムの姿がある。
リアムはこれでもかと冷めた瞳で見つめ
「え。何それ。やってて恥ずかしくないわけ?」
とリリアとバロンに聞いた。だが、バロンがそんなことを気にするはずもない。あっけらかんとした顔で
「え?もしかしてリアムもやってもらいたいの?あ、でもだめ!やっぱり、リリアの魔法は僕だけ!」
そうリリアを後ろから抱きしめ、リアムに宣戦布告する。
そんなバロンに、まるで赤い薔薇のように真っ赤に顔を染めるリリア。
「……いや、僕、全然やってほしいとか言ってないんだけど」
そう呆れるリアムだった……。